北海道岩宇・南後志地区沖の法定協初会合 6町村、3漁協から発電事業に前向きな意見が相次ぐ
2024/07/29
北海道岩宇・南後志地区沖の第1回法定協議会が今月29日に開催され、6町村、3漁協から洋上風力発電事業に前向きな意見が相次いだ。泊発電所の周辺に、洋上風車を設置しないエリアを設置する案も示された。
6町村の沖合が対象
最大出力は70万5000kW
北海道岩宇・南後志地区沖は、神恵内村、泊村、共和町、岩内町、蘭越町、寿都町の6町村の沖合の海域。北海道岩宇・南後志地区沖の第1回法定協議会は今月29日に共和町の生涯学習センターで開催した。法定協議会のメンバーは、経産省や国交省、北海道のほか、沿岸の6町村と3つの漁業協同組合などで構成される。
経産省によると、北海道岩宇・南後志地区沖は着床式で、最大出力は70万5000kWと想定されている。2023年5月に6町村の沖合の約2~10kmの海域が、再エネ海域利用法に基づく「有望な区域」に整理された。これまでに、岩宇・南後志地区沖で着床式の計画を正式に公表している事業者はない。
泊発電所の周辺に
風車設置除外区域の設定を
北海道岩宇・南後志地区沖の風況(出典 北海道)
29日の法定協議会では、東京大学名誉教授の荒川忠一氏が座長に選任された。会議では、事務局の北海道から泊村の北海道電力泊原子力発電所の周辺に、洋上風車を設置しないエリアを設定する案が示された。具体的なエリアについては、協議会で議論する。
これに関連して北海道電力の金田創太郎原子力部長が、「風力発電施設と泊発電所の共存のための要望事項」について説明した。このなかで金田部長は、「泊発電所は、東日本大震災後の新規制基準の適合審査をうけるため、稼働停止中だが、北海道電力は、津波が来襲した時において泊発電所の安全性を確保するため、津波漂流物として冷却水の取水性や防潮堤の健全性に影響を与え無いように泊発電所の安全確保のために必要となる距離を設定しています。このため、風力発電設備の設置においては、泊発電所の安全確保のために必要となる距離に一定程度の余裕を加えた範囲に発電用風車を設置しないこと、また、一定程度の余裕を加えた範囲外における発電用風車の設置においては、万一、それらが損傷により漂流物化したとしても安全確保のために必要な距離に到達させない実効性のある対策等をお願いします」と要望した。
そのうえで金田部長は、「原子力発電所の継続的な安全性向上を実現するため、新知見などの反映により新規制基準が改正された場合、泊発電所は、その改正内容に適合した状態とする必要があります。今後、泊発電所の安全確保のために必要となる距離を延長するなどの対応を要する場合には、別途その対応について協議をお願いします」と話している。
寿都町の片岡町長
「固定資産税は6町村に均等の配分を」
建設時の補完港、メンテナンス港としての利用が期待される岩内港(北海道岩内町)
寿都町の片岡春雄町長は、「新たな海洋産業ができることに大きな期待を寄せている。発電事業者からの拠出される基金を3つの漁協に均等に配分するとともに、固定資産税についても6町村に均等に配分していただきたい」と要望した。
岩内町の木村清彦町長は、「地域振興策の一環として、岩内港を建設時の補完港、メンテナンス港としての利用をお願いしたい。また、漁船や貨物船、プレジャーボートが航行するため、安全確保に最優先に取り組んでいただきたい」と述べた。
泊村の髙橋鉄徳村長は、「泊発電所は、道内の約4割の電力を供給していて、この周辺はエネルギーへの理解が深いエリアである。洋上風力発電事業が、水産業のさらなる振興、地域振興につながることを期待している」と話した。
古宇郡漁協の池守力組合長は、「サケ、ホッケ、ブリの水揚げが落ち込み、たいへん厳しい状況に陥っている。洋上風力発電事業の地域振興策に期待しているが、漁業にどのような影響が出るのか、これまでの事例を示してほしい。また、漁業への影響調査を長期間実施し、調査に漁業者が関与できるようにしていただくとともに、洋上風力発電事業に漁業者が参画することも検討してほしい」と訴えた。
岩内郡漁協の太田誠組合長は、「海上に設置される監視カメラを、ウニ、アワビなどの密猟の監視に活用することを検討していただきたい。また、漁業影響調査については丁寧な実施をお願いしたい。特にサケについては最新の方法で調査を実施してほしい」と述べた。寿都町漁協の阿部登組合長は、「地元の漁業者や漁船を、建設工事の前後の調査に積極的に活用してほしい」と話した。
北海道岩宇・南後志地区沖の法定協議会では、6町村、3漁協の代表から洋上風力発電事業に前向きな意見が相次いだ。泊原子力発電所の周辺には電力インフラも整備されている。次回の法定協議会では、専門家からの報告のあと、地域振興策や漁業振興策などについて協議する予定だ。
DATA
取材・文/高橋健一