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政策・制度

北海道石狩市 再エネの「地産地活」で次世代型のサスティナブルな地域づくり

北海道石狩市は、石狩湾新港地域で風力やバイオマス発電などの再生可能エネルギーの大規模な集積が進んでいる。そこに再エネを100%供給する「REゾーン」を整備し、次世代型のサスティナブルな地域づくりを目指している。

約3000haの工業団地
石狩湾新港地域

札幌市の北側に隣接する石狩市

石狩市は、札幌市の北側に隣接し、南北に約 70 ㎞にわたり日本海に面するまちである。漁業や農業といった一次産業を中心としてまちが発展し、昭和 40 年代以降は、札幌圏の都市機能の拡大により人口が増加している。石狩湾新港は、戦後の高度経済成長に伴う札幌圏の港湾需要に基づいて整備された。

港の後背地には、総面積約3000haの工業団地「石狩湾新港地域」が広がる。現在、約760社の企業が立地し、2万人以上が就業する巨大な産業空間となっている。札幌圏の物流を担う拠点として、物流・流通業を中心に開発が進んできたが、近年はスーパー、ホテルなどの商業施設の誘致も進み、多様な業種が集積している。オンデマンド交通や自動配送ロボットの実証実験の舞台にもなっており、「新たな価値観を有する工業団地」に変貌している。

FIT制度の導入以降
大規模な再エネ集積が進む

石狩湾新港沖の洋上風車

石狩湾新港沖の洋上風車

石狩湾新港沖で今年1月1日、道内初となる洋上風車の大規模商業運転がスタートした。出力8000kWの風車を14基設置している。最大出力は11万2000kW。一般家庭約8万3000世帯分の電力を賄うことができる。FITにより36円/kWhで、北海道電力ネットワークに20年間売電する。2023年1月に本格操業を開始した秋田県の秋田・能代港湾区域と比べると、全体の出力は小さいが、単機出力は石狩湾新港沖が2倍近い。

12年に始まったFIT制度の導入以降、石狩湾新港地域の風況の良さや広大な土地などのポテンシャルが評価され、風力や太陽光などの再エネ電源開発が進んだ。18年9月に発生した北海道胆振東部地震による全域停電(ブラックアウト)の経験も、石狩市の取り組みを加速させた。停電によって、石狩湾新港地域の流通機能が麻痺し、スーパーの食料品やガソリンを含む石油製品の流通が停滞したことにより甚大な影響が生じた。この教訓から、非常用電源としての再エネの利活用がより切実な課題となった。

23年 3 月には港に近接した優位性を生かし、海外産の木質ペレットなどを燃料とするバイオマス発電所(発電容量約50MW)が商用運転を開始している。今年1月には石狩湾新港沖の洋上風車が本格稼働した。さらに、26年 1 月の完成を目指し、地域の未利用材などを活用する新たな木質バイオマス発電所の建設が進むほか、洋上風力発電では「石狩市沖」が23年5月に「有望な区域」に整理され、30年代をめどに国内の洋上風力プロジェクトのなかで最大となる100万kW規模の発電所の開発が計画されている。

石狩湾新港地域に
REゾーンを整備

石狩湾新港

大規模な再エネ集積が進む石狩湾新港エリア

石狩市は、石狩湾新港地域への大規模な再エネ集積を推進しながら、再エネ電力を利用する需要家を誘致する「REゾーン」の整備に取り組んでいる。石狩湾新港地域の一部エリア(約100ha)をREゾーンとし、立地施設に対し、地域の再エネを100%供給するという計画だ。石狩市では、REゾーン構想の目的は、立地企業に対するビジネスの付加価値提供だとしている。

政府は20年10月に、温室効果ガスの排出を50年までに実質ゼロにするカーボンニュートラルを宣言し、脱炭素社会の実現を目指す動きが全国で活発化している。これに伴い、民間企業も社会的な責任として脱炭素への歩みを進めており、再エネを活用して事業活動を展開できる産業空間を有することは、企業誘致において最大の武器になると石狩市では考えている。

REゾーンには、再エネの大口需要家となり得る大型商業施設とデータセンターの誘致を目指している。データセンターは、IT産業の発展とともに存在感を増しているほか、近年はチャットGPTに代表される生成AIの台頭により、社会的・経済的な存在意義はさらに高まると予想されている。

REゾーンに
データセンターが相次いで進出

京セラ

今年10月に運用を開始したゼロエミッション・データセンター 石狩(写真提供 京セラコミュニケーションシステム)

REゾーンでは、再エネ100%での運用を目指すデータセンターの進出が相次いでいる。この業界で国内最大手のさくらインターネットが、11年に石狩データセンターを開設したのがはじまりである。REゾーン構想が公表される以前の立地だが、日本海側に面する地理的優位性により、津波などの災害リスクを受けにくいこと、そしてサーバーを冷却するために北海道の冷涼な外気を活用できることを背景に、石狩湾新港地域にデータセンターを開設した。

石狩市は、22年 4 月に環境省の第 1 回脱炭素先行地域に選定された。このなかで石狩市では市役所を中心とした公共施設への再エネ導入促進と、石狩湾新港地域へのREゾーンの整備を進める方針を正式に打ち出した。これをうけて、京セラコミュニケーションシステムが地域の再エネ電力100%で稼働する「ゼロエミッション・データセンター 石狩」の建設に着手し、今年10月1日に運用を開始している。石狩湾新港沖の洋上風力発電所で発電した電気をPPAで調達する。風力発電に加え、新設する自社の1・8MWの太陽光発電と6MWhの大型蓄電池によって供給する。異なる種類の発電所と供給形態を組み合わせることで、安定的な電力供給を目指している。
京セラ

ゼロエミッション・データセンター 石狩の電源構成(写真提供 京セラコミュニケーションシステム)

東急不動産は、再エネ100%で運営するデータセンター「石狩再エネデータセンター第1号」の起工式を9月30日に開催している。敷地内に673kWの太陽光発電設備を設置するとともに、石狩湾新港地域のREゾーンに約2MWのメガソーラーを新設し、自営線を敷設して電力供給する。26年3月に竣工する予定。

データセンターの
地方分散が追い風に

東急不動産

石狩再エネデータセンター第1号の完成イメージ(画像提供 東急不動産)

レジリエンス確保に向け、政府が首都圏などに集中するデータセンターを地方分散させる方針であることも石狩市にとって追い風になっている。22年には、総務省のデータセンター立地に関する補助金に石狩市内のプロジェクトが採択され、東京都内のIT企業であるフラワーコミュニケーションズなどによる再エネ100%データセンターの建設も予定されている。

しかし、データセンターの地方分散を進めるにあたって、地方にデータ通信・ストックに関する需要が少ないことや、IT分野の人材不足が大きな課題となっている。石狩市では、スタートアップ企業や地元企業とともに地域課題をDXで解決し、地域のデータ需要を創出していくことが重要だとしている。データセンターを利用するIT企業が石狩市に注目し、IT企業からの需要が高まれば事業者によるデータセンターの開発が進むという流れを創出していきたいと石狩市では考えている。

12月12日(木)に開催する「第4回WINDビジネスフォーラム」では、北海道石狩市企業連携推進課の新産業創出担当課長 池内直人氏が「再エネと産業の“地産地活”を目指す石狩市の挑戦」について講演します。


WINDビジネスフォーラム

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DATA

ゼロカーボンシティの達成に向けた石狩市の取り組み


取材・文/高橋健一

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