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【愛媛県】ものづくり企業の “スゴ技” で洋上風力発電市場への参入を目指す 関連企業ガイドブックを発行

愛媛県は昨年5月、「愛媛県洋上風力産業振興コンソーシアム」を設立した。県内のものづくり企業の優れた技術、“スゴ技”を生かして、洋上風力発電市場への参入を目指している。

メイン画像:今治造船(写真提供 今治造船)

 

<目次>
1.海事産業や金属加工業が集積 高度な技術で洋上風力に参入
2.コンソーシアムの各企業がが参入の動きを本格化
3.“スゴ技”のガイドブックを発行 英語版で海外にもアピール
4.海外での認知度アップ目指す WIND EXPOにも出展

 

海事産業や金属加工業が集積
高度な技術で洋上風力に参入

住友重機械プロセス機器(写真提供 住友重機械プロセス機器)

愛媛県の東部に位置する東予地域には、造船や機械加工などの加工組立型産業が立地している。その中でも「日本最大の海事都市」と呼ばれる今治市には、世界でも類を見ない造船・海運・舶用などの海事産業が集積している。舶用とは、船舶に搭載するエンジン、プロペラ、クレーンといった大小さまざまな機械・装置類のことだ。

造船所の周辺に舶用機器メーカーが立ち並び、全体で1万人以上が働く大規模な造船団地を形成している。別子銅山で知られる新居浜市は江戸時代以来、化学や機械、非鉄金属などを取り扱う住友グループの企業城下町として発展してきた。

住友重機械プロセス機器
住友重機械プロセス機器(写真提供 住友重機プロセス機器)

造船や舶用機器製造、大型製缶、機械加工などの高い技術力を有する産業特性を活かして、昨年5月に県と県内企業約30社により、洋上風力発電市場への参入を目指す「愛媛県洋上風力産業振興コンソーシアム」が設立された。コンソーシアムを中心に、官民を挙げて県内企業の優れた技術を国内外へ広く発信し、ビジネスマッチングを図るのが目的だ。

企業PRを担当する愛媛県経済労働部産業政策課の玉井洋行営業課長は「風況が穏やかなため、いまのところ愛媛県沖には洋上風力発電所を建設する計画がありません。しかし、当県には洋上風力発電に求められる高い技術を誇るものづくり企業が数多く立地しています。この強みを生かして、今後、拡大が見込まれる洋上風力発電市場への新規参入を目指したいと考えています」と意気込む。

 

コンソーシアムの各企業が
参入の動きを本格化

今治造船

今治造船(写真提供 今治造船)

コンソーシアムの参画企業の1社である今治造船(今治市)は、新造船建造量において、20年以上にわたって国内第1位、世界第6位(2023年)の実績を誇る。優れた技術力と安定した品質・生産性で評価が高い造船専業メーカーであり、2021年には、大型蓄電池の製造・販売などを手がけるパワーエックスと、船舶用電池と電気運搬船の開発についての資本業務提携を締結した。搭載する蓄電池に洋上風力発電所の電気を貯めて、海底に送電ケーブルの敷設が難しいエリアの需要地に運ぶ電気運搬船「Power Ark」の研究開発を進めている。国の検討会や技術研究開発の取り組みにも参加し、造船所ならではの大型設備を利用した浮体構造物の量産方法や、低コスト化実現に向けた製造方法の検討などにも取り組んでいる。

BEMAC(写真提供 BEMAC)

舶用機器のトップメーカーであるBEMAC(今治市)の自動船位保持システムは、は、石油掘削作業などの支援船(AHTSV)に採用されている。眞鍋造機(今治市)も船舶用のアンカーハンドリング・トーイングウィンチなどを製造しており、同社の技術力は国内外から高い評価を受けている。

眞鍋造機眞鍋造機(写真提供 眞鍋造機)

住友重機械工業は昨年3月、洋上風力発電の基礎構造物や関連する船舶事業の強化を目指す部門として、社内に洋上風力事業推進プロジェクトを新設した。その一環として、住友重機械グループの住友重機械プロセス機器(西条市)は、基礎構造物の製作に向けて大型ベンディングローラーを導入し、極厚鋼板の加工能力を増強した。国内で唯一、全ての製法のマリンチェーンを製造する、製鎖のプロフェッショナルである住友重機機械ハイマテックス(新居浜市)は、卓越した技術力と経験で多様なニーズに応えている。


住友重機械ハイマテックス(写真提供 住友重機械ハイマテックス)

O&Mの分野においても、住重アテックス(西条市)の鉄鋼壁面走行ロボットによる非破壊検査技術や、小笠原工業所(松山市)のメンテナンスドローン、ウシオマテックス(今治市)の熱源設備向け断熱素材など、洋上風力発電の安全で安定的な運用・保守に貢献する高い技術を持った企業が県内に多数存在する。(BEMAC、住重アテックス、ウシオマテックス、小笠原工業所の4社はWIND EXPO【春】に出展、詳細は後述)

住重アテックス住重アテックス(写真提供 住重アテックス)

 

 

“スゴ技”のガイドブックを発行
英語版で海外にもアピール


えひめの洋上風力発電関連企業ガイドブック(写真提供 愛媛県)

愛媛県では、高い技術力や優れた製品を持つ「ものづくり企業」を“スゴ技”企業として情報発信をしており、今年1月、洋上風力発電市場への参入を目指す“スゴ技”を持つ企業を紹介する「えひめの洋上風力発電関連企業ガイドブック」を発行した。風車製造や基礎製造、O&Mといったように、県内企業を技術分野ごとに整理して、協業先を検討している事業者やメーカーの視点に立った構成にしている。日本語版と英語版を作成して、海外へのアピールにも活用する。

同県は、専門家によるマッチングのコーディネートや、県内企業が大型の展示会へ出展する際の情報発信の支援などにも取り組む。こうした支援を通して、県内企業の商談の機会を増やすとともに、洋上風力発電の先進地である欧州などからの視察を積極的に受け入れる方針だ。先進技術を有する欧州企業や、国内の事業者、施工会社、メーカーなどに同県を訪れてもらい、工場視察などを通じて県内企業の技術や強みを深く理解してもらうことにしている。

海外での認知度アップ目指す
WIND EXPOにも出展

中長期的なビジョンでは、設置が進む着床式洋上風力発電市場への参入を早期に実現するとともに、国内外の関連企業との人脈構築やノウハウの蓄積、技術開発を促すことで、30年以降に事業化が見込まれる浮体式市場への参入を目指していく。愛媛県は、25年2月に東京ビッグサイトで開催される「WIND EXPO」に出展し、BEMAC、住重アテックス、ウシオマテックス、小笠原工業所の4社がブースを構える。

営業課長の玉井氏は、「洋上風力発電に関連した技術や製品を持つ愛媛県企業をガイドブックでご確認いただき、もしご興味を持っていただけましたら、愛媛県企業との商談や視察などのアレンジを行いますのでぜひご連絡ください」と話している。

 

問い合わせ


愛媛県えひめ営業本部
産業政策課 スゴ技グループ

愛媛県松山市一番町4丁目4番地2
電話 089-912-2473

愛媛県産業政策課ウェブサイト
洋上風力発電関連企業ガイドブック
洋上風力発電関連企業ガイドブック 英語版


取材・文/山下幸恵(office SOTO)

WIND JOURNAL vol.8(2025年春号)より転載

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