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北九州市響灘沖、国内初のバージ型浮体式洋上風車の商業運転開始

福岡県北九州市響灘沖で今月22日、国内初のバージ型浮体による洋上風力発電所が商業運転を開始した。浮体式洋上風車の商用化は国内で2例目。新エネルギー・産業技術総合開発機構の実証運転の風車を受け継いだ。

メイン画像 北九州市響灘沖の浮体式洋上風力発電所(出典 ひびきフローティングウィンドパワー合同会社)

<目次>
1.実証参画した企業が設備一式を受け継ぐ
2.バージ型浮体で国内初の商業運転

 

実証参画した企業が
設備一式を受け継ぐ

北九州市響灘

発電設備の概要(出典 ひびきフローティングウィンドパワー合同会社)

北九州市響灘沖の洋上風力発電所は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究(バージ型)」として、2019年から実証運転を行っていた。24年3月に実証研究が終了し、実証の参画企業のグローカル(本社 広島県呉市)が設備一式を受け継ぎ、商業運転に向けて準備を進めてきた。

商業運転を開始のは、ドイツのエアロダイン社製の出力3000kWの2枚ブレードを搭載したバージ型浮体1基だ。北九州港沖の約15km、水深54~56mに設置されている。浮体製造はカナデビア(旧日立造船)で、設計はBWイデオルの特許技術「ダンピングプール」を基盤にしている。

同発電所を所有・運用するのは、「ひびきフローティングウィンドパワー合同会社(HFWP)」。SMFLみらいパートナーズ、グローカル、合人社グループ、コトブキ技研工業、中国電力、リニューアブル・ジャパンの6社が出資して設立した。発電した電気はFITを活用して九州電力送配電に全量売電する。

 

 

バージ型浮体で
国内初の商業運転

北九州市響灘

北九州市響灘沖の浮体式洋上風力発電所(出典 ひびきフローティングウィンドパワー合同会社)

バージ型浮体は平底の浮体構造物に風車を搭載し、係留することで固定する。小型で軽量なのが特徴で、水面下への沈み込みが浅いため、水深50m~100m程度の浅い海域でも設置可能である。バージ型浮体のメリットとして、HFWPは、(1)浮体サイズがコンパクトなため、日本の既存ドライドックなどで建造が可能、(2)単純でコンパクトな構造のため、コスト低減と大量生産に適している、(3)船舶の建造に用いられる在来工法(船体ブロック工法)で製造でき、設備投資を要せず国内の既設製造インフラで供給が可能、(4)実証研究が終わり、早期かつ、低コストの社会実装が可能、(5)浮体式の中で最も喫水が浅いため、適用水深の制限が少なく、港湾施設内で組み立て・大規模改修が可能、(6)風車をタワー上に最終組み立てした状態で曳航できる(SEP船不要)と説明している。

実証の段階から関わってきたグローカルは、実証研究を通じて得た知見や本事業における実績などを活かし、今後需要が見込まれる浮体式洋上風力の案件形成や最適化を行い、浮体式洋上風力の低コスト化、早期社会実装を目指すとともに、洋上風力発
電事業を通じた地域課題の解決や脱炭素社会の実現を目指してまいります」とコメントしている。

DATA

浮体式洋上風力発電事業に関する6社共同記者会見


取材・文/高橋健一

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