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北海道の環境配慮基準、5月10日で経過措置が終了「再エネ促進区域から保安林を除外」

北海道庁が昨年11月に策定した「地域脱炭素化促進事業の促進区域の設定に関する環境配慮基準」は5月10日に経過措置を終了した。同基準は、道内の市町村が再生可能エネルギー導入の促進区域を設けるにあたって、除外すべきエリアを示したものだが、発電事業者からは見直しを求める声が上がっている。

<目次>
1.せたな町と江差町が基準の見直しを求める
2.経過措置の期間中に42市町村が申請
3.将来的には見直しの可能性も

 

せたな町と江差町が
基準の見直しを求める

北海道庁は昨年2月、地球温暖化対策推進法に基づき、道内の市町村が再エネ導入の促進区域を設けるにあたって、除外すべきエリアを示した道独自の「環境配慮基準(素案)」を策定した。しかしこれに対して、せたな町などの道内市町村から意見が寄せられたほか、再エネを推進する立場の経済産業省も懸念を示していた。


北海道が制定した環境配慮基準の範囲(出典 せたな町)

道の環境配慮基準(素案)では、市町村が地域脱炭素化促進事業として太陽光や陸上風力の促進区域を設定する場合、保安林や地域森林計画民有林などを「除外すべきエリア」と定めている。北海道内では陸上風力の適地は山林を中心に広がっており、風力発電事業者からは、今後の陸上風力開発の阻害要因になることを懸念する声が出された。


せたな町の促進区域と北海道の環境配慮基準(素案)の比較(せたな町資料)

再エネの導入に積極的に取り組んできたせたな町では、2021~22年度にかけてゾーニングマップを作成し、独自に再エネ促進区域を設定している。ところが町が設定した促進区域には、保安林や地域森林計画民有林などが含まれている。せたな町では、このままでは町が設定した陸上風力促進区域の8割が除外され、町の脱炭素化推進目標の達成も困難になるとして、環境配慮基準(素案)のパブリックコメントに対して、区域設定基準を「適切でない」から「考慮すべき」区域へと見直すよう意見を提出した。江差町も同様の意見を提出している。

せたな町と江差町からの意見を受けて、北海道庁は環境配慮基準(素案)を再検討した。その結果、除外すべきエリアから「市町村が条例やその他の規定などに、再エネ導入推進の観点から施設の設置に係る許認可、届け出、報告聴取などの手続きに関する規定が定められている区域」または、「地方公共団体実行計画協議会において、再エネの導入についての合意形成が行われた区域」を除くという規定を追加した。そして昨年11月に北海道庁は地域の意向を尊重する形で環境配慮基準を公表した。

 

 

経過措置の期間中に
42市町村が申請

北海道庁では、道内の市町村が促進区域設定に向けて検討する期間を確保するため、5月10日を期限とする経過措置を設けた。この間に促進区域を検討するエリアや設定に向けたスケジュールを記した報告書を提出した市町村については、本来なら道の環境配慮基準に基づき除外される保安林や地域森林計画民有林などにも促進区域を設けられることとした。北海道GX推進課によると、この経過措置のあいだに42市町村から促進区域設定の申請や道基準の取り扱いについて検討しているとの報告があったという。

5月10日に
経過措置が終了

北海道の環境配慮基準は5月10日に経過措置が終了し、本格運用がスタートした。今後、42市町村以外の自治体では道の環境配慮基準に従う形となり、特に陸上風力は適地の確保が難しくなることも予想される。その一方で、「経過措置の期間中に手を挙げなかった自治体は、もともと再エネ導入に積極的ではないところが多い」として、今後の新規導入に大きな影響はないとの見方もある。

北海道GX推進課では「この制度は地域と共生する再エネの導入を促進するものだ。引き続き地域の意見を聞きながら、国や市町村と連携して必要な情報提供や助言を行うなど、地域と共生した再エネ導入が図られるように取り組んでいきたい」と説明している。

ただ今後、電力需要の増加やカーボンニュートラルの目標達成に向けて、42市町村以外の自治体などから新たな要望が出てくる可能性もある。「風の宝庫」といわれる北海道の今後の動きを注視していきたい。

DATA

地域脱炭素化促進事業の促進区域の設定に関する環境配慮基準について

せたな町_地域脱炭素化促進事業の促進区域の設定に関する環境配慮基準について


取材・文/宗 敦司

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