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山形県酒田市沖でセントラル方式の海底地盤調査が本格化 事業者の負担軽減へ

山形県酒田市沖で、今年5月からセントラル方式による海底地盤調査が本格化している。政府は、セントラル方式のサイト調査を今年度から基本化する方針を打ち出していて、事業者の負担軽減と案件形成の加速化が期待されている。

<目次>
1.セントラル方式が2025年度から基本化
2.2024年度は3海域を調査対象区域に
3.浮体式の2海域でも現地調査を開始

 

セントラル方式が
2025年度から基本化

基礎調査のイメージ
サイト調査を行う海域のイメージ(出典 JOGMEC)

「このやぐらを沖合の2ヶ所に設置し、海底をドリルで掘り下げ地下約100メートルの深さまでボーリング調査を実施する予定です」と話すのは、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)洋上風力事業部の福田真人調査課長。JOGMECは、国からセントラル方式による風況・海底地盤・気象海象のサイト調査を委託されている。取材に訪れた6月5日には酒田港の岸壁で、大型クレーンを使って鋼鉄製やぐらの組み立てが行われていた。

政府は今年1月、一般海域における占用公募制度の運用指針を改訂し、今年度からセントラル方式のサイト調査を基本化する方針を正式に打ち出した。セントラル方式は、環境影響評価の一部を国が代行して行う制度で、欧州では広く採用されている。公募に参加する事業者の調査が重複する現行方式のムダを解消し、公募の公平性や事業リスクの低減を図るのが目的だ。これまでの制度では、公募に参加するすべての事業者が対象海域の風速や地質を事前に調べる必要があった。政府は、国内の地域特性に合わせた「日本版」としてセントラル方式を導入し、事業者の負担軽減につなげる考えだ。

 

 

2024年度は
3海域を調査対象区域に

風況タワー

酒田市に設置された風況タワー

24年度は、山形県酒田市沖(着床)、北海道岩宇・南後志地区沖(浮体)、北海道島牧沖(浮体)の計3海域が調査対象区域に選定され、このうち酒田市沖では24年11月から風況調査を開始している。風況調査では、高さ約60メートルの鉄塔に風速計や風向計を複数設置して上空の風を直接観測する。さらにスキャニングライダーによって、洋上に向かって光を照射し、陸上から洋上の風速、風向などを観測している。

陸上から洋上の風況を観測するスキャニングライダー

陸上から洋上の風況を観測するスキャニングライダー

酒田市沖では今年5月から海底地盤調査が本格化している。同市沖は23年10月に再エネ海域利用法に基づく「有望な区域」に整理された。洋上風車の設置想定区域は、遊佐町沖の促進海域と北側が接続し、南側は酒田と鶴岡の市境までの南北約22キロ、沖合は水深40~49メートルまでの4~5キロのエリアだ。

山形県酒田市沖

セントラル方式の基礎調査が実施されている山形県酒田市沖

今年5月から調査船を使って海底に不発弾などの危険物がないかを調べる磁気探査と、海底のごく小さな振動を測定して地下の構造を調べる海底微動アレイ探査の2種類の探査を実施している。6月からは高さ約34メートルの鋼鉄製やぐらを2ヶ所に設置し、海底をドリルで掘り下げて地下の構造を調べるボーリング調査を実施する。ボーリング調査は地下約100メートルまで掘り進みながら、土壌や岩盤のサンプルを採取し、地盤の状況や強さを調べる。

8月からはドリルタワーを搭載した地質調査船を使って、地下約150メートルの深さまでボーリング調査を実施する予定だ。JOGMECの福田課長は、「さまざまな漁が実施されているエリアということで、いろいろなタイプの漁具を使用して、いろいろな時期に漁が行われています。そうした漁業の状況をヒアリングなどで把握し、漁が盛んな時期や漁具が多い地点を避けるなど、調査の実施についての調整を丁寧に行って、漁業への影響を最小限に抑えるように努めています」と説明する。

浮体式の2海域でも
現地調査を開始

案件形成プロセスのイメージ

案件形成プロセスのイメージ(出典 JOGMEC)

セントラル方式の対象は、「一定の準備段階に進んでいる区域」、もしくはどの区域にも整理されていない区域である。セントラル方式の要件として国は、都道府県として地元関係者などとの調整に主体的に関与すること、海域の自然的条件や風力発電設備の設置に関する技術的条件その他の条件から判断して、事業者が海域の調査に関する自主的な活動を十分に実施することが困難と認められる地域であること、2つ以上の事業者がそれぞれに調査を実施することなどによって漁業その他の活動に支障を及ぼすおそれがあると認められる地域であることを挙げている。

25年度に調査を希望する都道府県は、5月12日までに国に対して情報提供をするよう求めていた。国は有識者による第三者委員会の意見を踏まえて、調査対象区域の選定を行う方針だ。経済産業省と国土交通省は、調査対象区域の選定が再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定に直ちにつながるものではなく、促進区域の指定などについては、別途、所定の手続に従って対応するとしている。

24年度に調査対象区域に選定された北海道岩宇・南後志地区沖(浮体)、北海道島牧沖(浮体)の2海域でも現地調査が開始されている。岩宇・南後志地区沖(浮体)では5月中旬から、島牧沖(浮体)では6月初めから基礎調査がスタートした。浮体式の想定エリアでは、セントラル方式による初めての調査となる。2つの海域ともに水深約100メートル前後にブイを設置して、風速、風向などを調べる予定だ。

DATA

「一般海域における占用公募制度の運用指針」を改訂しました


取材・文/ウインドジャーナル編集部

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