大成建設、東洋建設をTOBで完全子会社化へ 洋上風力事業などを強化
2025/08/12

大成建設は8月8日、海洋土木大手の東洋建設をTOB=株式の公開買い付けなどを通じて買収すると発表した。大成は東洋の技術を生かし、今後成長が見込まれる洋上風力事業などを強化する。
買収が実現すれば
業界2位の大林組に迫る規模に
発表によると、大成建設は、TOB=株式の公開買い付けなどを通じて「東洋建設」のすべての株式を取得し、年内に完全子会社化を目指す。買収総額は1600億円規模になる見込み。東洋建設はTOBに賛同を表明した。人手不足や資材価格の高騰などが続くなか、事業規模の拡大によって収益力を強化する。
TOBは8月12日~9月24日に実施し、買い付け価格は1株当たり1750円とする。全ての手続きは12月末に完了する見通し。買収が実現すれば、売上高は2兆3000億円規模になり、建設業界2位の大林組に迫ることになる。
洋上風力分野で
相乗効果に期待
大成建設は24年9月、東京電力ホールディングス、北海道電力と共同で、NEDOの「浮体式洋上風力発電の導入促進に資する次世代技術の開発」の実証に採択された。このプロジェクトは、24年9月から26年3月まで「フルコンクリート製コンパクトセミサブ型浮体」と「トート係留方式」の技術開発に取り組む。
21年11月には、北海道室蘭市と「包括連携協定」を締結している。この協定は、浮体式洋上風力発電に関する技術開発、地域内サプライチェーン構築、および再生可能エネルギー・水素利用を通じたカーボンニュートラルの実現を目的としている。大成建設は、室蘭港祝津埠頭で浮体構造物を開発・製造する施設の設置を計画している。
東洋建設は、洋上風力分野を「成長ドライバー」と位置づけ、2024年4月に洋上風力事業本部を設置して組織体制を強化している。22年2月に商船三井と作業船協業の覚書を締結し、23年6月には洋上風力発電関連のエンジニアリングや施工を手がける共同出資会社を設立している。また、ケーブル敷設船の建造にも着手し、船舶技術・施工力の強化を進めている。
今年2月にはシンガポールのCyan Renewablesと覚書を締結し、外洋施工に必要な船舶・技術リソースの相互活用へと展開している。また、英国SMD社製ROV(遠隔操作無人潜水機)を導入し、海底ケーブルの埋設技術強化に取り組んでいる。
拡大が見込まれる
脱炭素に向けた取り組みに注力
国内最大級の自航式ケーブル敷設船の建造契約を締結(出典 東洋建設)
大成建設の田中会茂義長は、8日の記者会見で「買収によるシナジー(相乗効果)を速やかに発揮できるようにお互い連携して国内外の事業を進めていきたい。今後、拡大が見込まれる脱炭素に向けた取り組みなどに注力してまいりたい」と話した。東洋建設の吉田真也会長は「事業のシナジーはたいへん大きいと判断した」と期待を込めた。
東洋建設をめぐっては、大株主の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」が買収を目指したものの実現しなかった経緯がある。東洋建設は、この資産運用会社も大成建設に株式を売却する方針だ。
DATA
大成建設株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ
取材・文/高橋健一