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ブレード落下事故からの信頼回復。ゾーニングで地元住民を守る区分けを

地球温暖化の影響で、今後も想定外の風力発電所の事故が起きる可能性がある。人命に関わる事故を未然に防ぐには、再エネ発電所の周辺を一般人が近寄れないように区分けすることも1つの方法だ。

 

<目次>
1.ゾーニングは自然環境保全だけでない
2.一部の県で条例化 再エネを適地に誘導
3.青森県は共生条例と課税条例を同時に制定

 

ゾーニングは
自然環境保全だけでない

風車ブレードの事故防止は、今後も発電事業者のたゆまぬ努力が必須であることは言うまでもない。ただ地球温暖化による気候変動によって、20年前に吹かなかった方向から風が吹いたり、20年前に起きなかった雷が発生したりするなど、想定外の事態は今後も起きる可能性がある。

問題は、不幸にもブレード落下によって死者が出てしまったということ。想定外だったとはいえ、公園内に設置された風車に一般人が近寄ることができたことが、不幸な事故につながった要因の1つに思える。

人命に関わる事故の防止と、風力発電の信頼回復を進めるには、再エネ発電所立地のゾーニング(地域区分)を設定して、立地エリアをはっきりと区分けすることも1つの方法ではないか。ゾーニングとは、自治体や地域が中心となり、自然環境への配慮と地域共生を進めながら、太陽光発電や風力発電などの再エネ発電所の「導入が可能なエリア」「保全すべきエリア」「調整が必要なエリア」などを明確に区分し、地図(ゾーニングマップ)を作成する取り組みだ。これにより、無秩序な開発を抑制し、地域に調和した適切な場所への再エネ導入を誘導する効果が期待される。ゾーニングは自然環境保全だけでなく、地元住民の安全を守る役割もある。導入可能エリアは人の生活圏とは隔たれたエリアとなり、住民を巻き込んだ不慮の事故を防げるはずだ。

 

 

一部の県で条例化
再エネを適地に誘導

一部の県では、地域との共生を目的に再エネ発電所の適地を明確にする条例を制定している。宮城県は脱炭素社会の実現に向けての取り組みを積極的に進めてきたが、森林エリアに再エネ発電所が設置されたケースで、土砂災害や景観、環境への影響を懸念する地域とのあつれきが強まり、建設に反対する動きもみられた。

このため、2022年11月に新たな法制度の検討を開始し、24年4月に条例を施行している。この条例は、大規模な森林開発を伴う風力、太陽光、バイオマスの発電所立地を特定の平地に誘導し、大規模な森林や平地での無秩序な開発を抑制することを目的としたものだ。

宮城県では、24年4月以降に着工した0.5ヘクタールを超える森林開発を伴う太陽光、風力、バイオマス発電施設に課税する。その一方で、地域共生につながる再エネ発電事業として、市町村や県の認定を受けた設備を非課税としている。再エネ発電所の立地抑制・誘導という点でゾーニング的な機能を持つ。

青森県は共生条例と
課税条例を同時に制定

宮城県に次いで条例化を進めたのが、青森県の宮下宗一郎知事だ。宮下知事は23年9月に「自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想」を公表した。特に大都市に拠点を置く陸上風力発電事業者が一本釣りのような乱開発を行うことを懸念し、「自然・地域と再エネとの共生に関する条例」(共生条例)と「自然・地域と再エネとの共生税条例」(税条例)の制定を同時並行で進めた。

前者の共生条例は「再エネ施設立地を禁止するエリアなどのゾーニングと、地域での合意形成を円滑に進めるための、プロセスの制度化」を柱として、今年7月に施行している。後者の税条例も、24年3月に県議会で共生条例と同時に可決された。法定外普通税として、出力500kW以上の陸上風力発電と2000kW以上の太陽光発電が課税対象で、納税義務者は施設所有者。ただし条例施行時に存在する施設や環境影響評価公告手続きに入った事業は適用外とした。

さらに、共生条例でゾーニングされた区域のうち、「共生区域」に設置された施設は非課税としたが、県の認定を受けたものに限る予定だ。再エネ発電所への課税条例は、総務相の同意が必要である。現在、青森県は総務省と協議中で、まだ結論は出ていない。

資源エネルギー庁のある幹部は、直近の風力発電や太陽光発電などの不慮の事故や反対運動について、「これまで大型火力発電や原子力発電がそうであったように、再エネ事業についても地域共生が不可欠という時代に入った。裏返しに言えば、再エネ発電所が一人前の電源として社会に認められた証拠だ。いい意味で成熟してきたということだと思う。今後は地元住民や自然環境との関係強化をさらに進めてほしい」と語る。

 

 

PROFILE

松崎茂雄

エネルギー問題を20年以上にわたって取材。独自の視点で国の政策に斬り込む経済ジャーナリスト。趣味は座禅とランニング。


WIND JOURNAL vol.9(2025年秋号)より転載

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