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【速報】三菱商事 第1ラウンド3海域からの撤退を正式表明 関係自治体に動揺広がる

洋上風力第1ラウンドの秋田県と千葉県の計3海域について、事業主体の三菱商事は8月27日、コストの大幅な増加などを理由に撤退する方針を正式に明らかにした。港湾の整備などに取り組んだ関係自治体では動揺が広がっている。

メイン画像:基地港湾として整備された能代港(秋田県能代市)

<目次>
1.事業環境の変化を理由に 3海域から撤退を正式表明
2.3つの海域で 事業者を再公募の可能性

 

事業環境の変化を理由に
3海域から撤退を正式表明


秋田県能代市・三種町・男鹿市沖

三菱商事を中心とする企業連合は、2021年12月に洋上風力第1ラウンドで秋田県の「能代市・三種町・男鹿市沖」「由利本荘市沖」と千葉県の「銚子市沖」の3海域をすべて落札した。しかし、今年2月に公募参画当初の想定を上回る事業環境の変化を理由に事業の再評価を実施する考えを明らかにしている。これに対して、秋田県は早期に事業の方向性を示すよう三菱商事に申し入れていた。

三菱商事は8月27日、洋上風力第1ラウンドの秋田県と千葉県の計3海域から撤退する方針を正式に明らかにした。撤退の理由については、「本年2月に公表いたしました通り、公募参画当初の想定を上回る事業環境の変化を受け、事業性の再評価を行いました結果、遺憾ながら3海域の開発を取り止めざるを得ないとの判断に至りました。地元の方々をはじめ、関係する皆様のご期待に応えられない結果となったことを重く受け止めております。2021年12月に当社が本事業の事業者に選定されて以降、新型コロナウイルスの蔓延やウクライナ危機に端を発し、サプライチェーンのひっ迫、インフレ、為替、金利上昇など、洋上風力業界を取り巻く事業環境は世界的に大きく変化し続けてきました。この変化に対応すべく、コスト、スケジュール、収入などあらゆる面において、当社として取り得る様々な手段・可能性を追求しながら事業性の再評価に取り組んで参りましたが、事業パートナー間で協議を行った結果、実行可能な事業計画を立てることは困難であるとの結論に至ったものです」と説明している。

記者会見する三菱商事 中西勝也社長(出典 三菱商事)
記者会見する三菱商事 中西勝也社長(出典 三菱商事)

27日の会見で三菱商事の中西勝也社長は、「プロジェクトを進めることができず断腸の思いだ。期待に添えない結果となり申し訳なく思っている」と述べた。撤退を決断した理由については、「21年に落札して以降、世界的なインフレなどとともに風車メーカーによる値上げなどが重なって、コストが大きく膨らんだ。建設費用は当初見込んだ金額の2倍以上の水準となり、事業期間全体での売電収入よりも保守や運転の費用を含めた支出の方が大きく、事業計画の実現が困難との結論に至った」と説明した。

入札時の売電価格については、「入札時に見通せる事業環境に基づいて、十分な採算を確保したうえで、売電価格を算出した。事業環境の激変が今回の撤退という判断につながった」と話した。三菱商事は、24年度のグループ全体の決算で522億円の損失をすでに計上していて、追加の損失は限定的だとしている。

この計画は、国が再生可能エネルギーの普及に向けた洋上風力ラウンド事業の第一弾として事業者を公募し、三菱商事を中心とする事業体が異例の低価格を提示して3つの海域すべてを落札していた。当初の計画では、秋田県沖の2海域では2026年に着工し、「能代市・三種町・男鹿市沖」は28年12月に運転開始、「由利本荘市沖」は30年12月に運転開始、千葉県の「銚子市沖」は、25年に着工し、28年9月に運転開始する予定だった。

3つの海域で
事業者を再公募の可能性


基地港湾として整備された能代港(秋田県能代市)

三菱商事などの撤退に伴い、経済産業省と国土交通省は事業者を再公募する可能性もある。しかし、秋田県沖では第2ラウンド事業の「八峰町・能代市沖」や「男鹿市・潟上市・秋田市沖」の建設工事との関係で、仮に再公募を実施しても当初の計画どおりに事業を進めることができるのかは不透明な状況だ。

秋田県能代市では、「能代市・三種町・男鹿市沖」の事業に向けて、港湾の大規模な整備が進められてきた。国土交通省は2020年9月、能代港、秋田港(秋田県)、鹿島港(茨城県)、北九州港(福岡県)の4港を全国で初めて洋上風力を整備する際の拠点「基地港湾」に指定している。能代港では、洋上風車の部材の荷さばきや一時保管、組み立てを行うヤードを確保するため、海を埋め立てて10.4ヘクタールの埠頭を拡張した。秋田県は、2022年度から工事に着手し総事業費は60億円。拡張工事では、西側275m、南側377mの外周護岸をL字型に囲むようにして築造し、内側に土砂を投入して埠頭用地として整備した。

三菱商事を中心とするコンソーシアムは、「能代市・三種町・男鹿市沖」の事業の建設の拠点港として能代港を活用する予定だった。この事業との重複を避けるため、第2ラウンドの「八峰町・能代市沖」では、建設の拠点港として北海道の室蘭港を活用する予定になっている。能代港を活用した事業が開始されるのはいつになるのか、関係自治体のあいだに動揺が広がっている。

DATA

国内洋上風力発電事業に係る事業性再評価の結果について

取材・文/高橋健一

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