経産省が落雷対策で緊急要請、自動停止閾値の再設定と停止点検を求める
2026/09/29
経済産業省は9月28日、全国の風車設置者に対し、落雷対策と保安管理の徹底を求める緊急要請を行った。今年4月に秋田県男鹿市で発生したブレード破損事故の最終報告を受け、自動停止閾値の再設定や風車を停止させた状態での高精度な点検など、保安規程の見直しを求めている。
事故の1ヶ月前の
落雷が原因とみられる

秋田県男鹿市の風の王国・男鹿風力発電所でブレードが破損(2026年4月)
2026年4月12日、秋田県男鹿市にある「風の王国・男鹿風力発電所」の2号機において、稼働中の風車ブレードが根元近くから折れて破損し、部材の一部が周囲に飛散・落下する事故が発生した。事故発生当時の風速は毎秒9.7m(1分平均)、最大瞬間風速は毎秒12.2mで設計基準の範囲内であった。発電事業者である株式会社風の王国・男鹿は、外部有識者を含む事故調査委員会を設置して原因究明を進めてきた。5月28日の中間報告において被雷による破壊の可能性が示されたのち、9月25日に開催された第26回電気設備自然災害等対策ワーキンググループにて、事故調査委員会による最終報告書が公表された。
最終報告書では、ブレード破損を引き起こした直接的な原因は、事故の約1ヶ月前である3月20日午後7時24分に発生した落雷であると推定されると結論付けている。この落雷は、本来雷を誘導すべき受雷部であるレセプター以外の箇所へ着雷する異常着雷であり、雷電流がブレードのシェルを貫通して内部に侵入した。内部放電に伴う熱エネルギーによって空気や水分が急速に膨張し内圧が上昇した結果、接合部や先端部に局所的な構造損傷が生じてブレードの強度および剛性が著しく低下した。
しかし、事業者が設定していた落雷検出装置の自動停止閾値が「±100kAまたは300C」であったため、3月20日の落雷(18.3kA、129C)では風車が自動停止せず、詳細な点検が行われないまま運転が継続された。さらに4月4日の月例巡視において、風車を回転させた状態のまま地上からの肉眼目視で点検を行ったためブレード表面に残された貫通痕を検出できず、4月12日の運転再開時に作用した風荷重により最終的な構造破断と部材飛散に至ったとしている。
全国の風車設置者に
閾値再設定と停止点検を緊急要請

秋田県男鹿市の風の王国・男鹿風力発電所でブレードが破損(2026年4月)
事故調査委員会の最終報告とワーキンググループでの審議を踏まえ、経産省は9月28日、全国の風車設置者に対し「発電用風力設備における落雷対策及び保安管理の徹底について」の緊急要請を行った。この要請は、電気事業法第106条第1項の規定に基づき、同様の事故再発を未然に防止することを目的として保安管理の徹底を求めたものである。
要請の具体的な内容として、第一に設置者自らが定める保安規程の再検討と改訂が挙げられる。落雷検出装置を設置している風車においては、自動停止の閾値を越えない規模の雷撃であってもブレードに損傷を生じさせる可能性があることを考慮し、風車を自動停止させる雷撃の閾値を適切な水準に再設定することを求めている。自動停止機能を持たない風車については、気象情報を活用した雷接近時の事前停止措置などの代替策を保安規程に規定することを求めた。
第二に、落雷を検出して自動停止した後は必ず異常の有無を確認する点検手順を確立すること、第三に、日常的な巡視点検においては原則として風車を停止させたうえで望遠鏡やドローンなどを用いて高精度に異常を確認し、その記録を保存することを要請している。あわせて、定期自主検査等の機会を捉えた避雷設備の機能確認や、過去の未把握雷撃の確認の徹底も求めている。
風車の安全確保と
事業継続性の両立が課題
経産省は、9月28日に実施した緊急要請に基づき、全国の風車設置者における保安規程の見直しや点検体制の改善状況について、産業保安監督部を通じて継続的にフォローアップを行っていく方針だ。また、設置者から提出される報告内容の確認や現地の立ち入りなどを通じて、要請内容が現場の保守管理実務に正しく反映されているかを検証し、不備が認められる場合には指導を強化する。
今後の課題は、高度化された保安管理の確実な履行と、風力発電事業の継続性・稼働率の維持という2つの側面を高い次元で両立させることである。自動停止閾値の大幅な引き下げや風車を停止させて行うドローンなどの精密点検は、見落としによる重大事故を防ぐうえで不可欠な措置である一方、稼働停止に伴う売電機会の変動や点検作業の集中に伴う人手不足といった影響を現場にもたらす。
過酷な冬季雷環境に対応するためには、AIを活用した画像解析やリモートモニタリングなど高度なデジタル点検技術の社会実装を進め、作業負担を軽減しつつ客観的な健全性を担保できる環境を整えることが急務である。自治体の再エネ担当者や風力発電事業者は、今回の緊急要請の意図を正確に捉え、実効性のある保安体制の構築に取り組むことが求められる。
DATA
取材・文/ウインドジャーナル編集部











