世界初の海底地盤調査手法と、国内最多保有の鋼製櫓が強み、応用地質
2021/11/05
1957年の創立以来、地質・地盤調査で国内の市場を牽引してきた応用地質。その技術を活かし、新たな海底地盤調査手法の開発や需要が逼迫している調査用足場の増設・供給などを通じて、洋上風力発電業界のニーズに応える。同社の田中武郎氏、橋本晋一氏に取り組みと強みを聞いた。
効率的な地盤調査で
洋上風力発電の拡大に貢献
―主力事業と風力発電事業の取り組みは。
弊社は、地質・地盤調査業を主力とした調査・建設コンサルティングサービスを提供する会社です。
風力発電事業では、陸上・洋上ともに風車建設の前に建設地の地盤調査をする必要があり、陸上について以前からも行っていました。一方、洋上については、市場自体がここ数年で急拡大したもので、過去の実績自体はそれほど多くはありませんでしたが、大規模な海底地盤調査という意味では、橋梁や空港建設などで国内有数の実績があります。
―強みは。
まずは、「新たな海底地質調査手法の開発力」です。
弊社は、地質・地盤調査で国内最大の売上規模を誇る会社であり、また計測機器の開発部門を持つメーカーでもあります。様々な物理探査技術など、効率的な地盤調査手法を自ら開発し、いち早く製品化して市場に投入することが出来ます。海底地震計を用いた『逆PS検層』やグループで開発した小型微動計を用いた新たな『海底微動アレイ探査』などがその例で、低コストかつ効率的な調査技術により市場ニーズにいち早く応えることが出来るのが大きな強みです。
(写真)海底微動計による海底微動アレイ探査法
2つ目は、「海底地盤調査用足場(鋼製櫓)の国内最多の保有数」です。
洋上風力発電では、着床式の風車建設の場合はボーリング調査を海上で行う必要があります。海上での調査では、足場となる櫓(やぐら)が必要になりますが、この足場自体が市場での数が限られています。また波浪などの影響から海上での地質調査は「4月~9月」と時期が集中するため、市場では足場の不足が慢性的な課題となってきました。そこで弊社では、自社で鋼製櫓と呼ばれる足場を建設・保有し、市場での需要に対応しています。現在、国内には鋼製櫓は30基存在しますが、そのうち12基を既に弊社で保有しています。年度内には15基にまで増やしたいと考えています。
(写真)海底地盤調査用足場(鋼製櫓)
3つ目は、「様々な企業とのアライアンス力」です。
弊社は、2021年1月に日本郵船とFugro社との間で、洋上風力発電向け海底地盤調査の国内展開について覚書を締結しました。今後、洋上風力発電の市場拡大とともに、大規模なエリアを効率的に調査することが可能な調査船によるCPT調査のニーズが高まることが予想されます。このため、船舶を多数保有する日本郵船と、欧州でのCPTによる豊富な海底地盤調査の実績を持つFugro社と組むことで、さらなる市場でのプレゼンスを高めることが出来ると考えています。この2社以外にも、洋上風力での環境アセスで日本随一の実績を持つ日本気象協会ともアライアンスを組んでおり、事業のFS段階から設計・建設フェーズまで、様々な顧客ニーズに対しワンストップかつ高品質なサービスを提供できるチーム体制を構築しています。
話を聞いた人
応用地質株式会社
エネルギ―事業部 サービス開発部 部長 田中武郎氏
経営企画本部 広報・IR部 橋本晋一氏
文:前川正一郎