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ナセルの故障を「未然に防ぐ」 進化を続けるナブテスコの状態監視機器

ナセルの制御を担うヨー旋回部の故障は、莫大な修理費の発生だけでなく、発電機会の逸失につながる。それを防ぐのが、ナブテスコが開発した「CMFS」という画期的なソリューションだ。

<目次>
1.ヨー旋回部は風車制御の要 故障を回避しメンテを軽減
2.脱炭素化に資するクラウド移行 企業主体のAI実用化を加速
3.Impulse 機械学習で異常を検知

 

ヨー旋回部は風車制御の要
故障を回避しメンテを軽減

風力発電機において、ナセルを風向きに合わせて追従させる役割を担うのが「ヨー旋回部」だ。近年、風力発電機の大型化に伴い、1基に複数のヨー駆動装置を設けるケースが増えている。そのため、ヨー駆動装置間の負荷が偏り、一部の装置に過大な負荷が発生することがある。負荷が偏ると、ヨー旋回部の旋回ギアがいつ故障してもおかしくない状態になってしまう。旋回ギアの修理時は発電を止めるため、機会損失も膨大となり修繕費と併せた損失は年間の売電収入に匹敵する場合もある。

こうした市場課題に対して、モノを動かし、止めるというモーションコントロール技術で知られるナブテスコが生み出したのが「CMFS(故障回避機能付き状態監視機器)」だ。CMFSは、状態監視によって風力発電機の異常予兆を検知し、故障を回避することで風車の長寿命化に貢献する。ナブテスコは2003年、ナブコと帝人製機が統合され誕生した。同社の事業の核であるモーションコントロール技術は、両社の流体・空圧制御技術や切削・組み立て技術を基盤としている。自動ドアをはじめ、産業用ロボット向け精密減速機や鉄道車両用ブレーキシステムなど、数々の分野で高いシェアを有し、最近では、培った高度な技術を応用し、再生可能エネルギー分野へも活躍の幅を広げている。

CMFSは、ヨー駆動装置に取り付ける高精度のセンサ、信号変換ボックス、通信機能やデータ記録機能をもつCMFSボックス、電源ボックスという4つのモジュールで構成される。同社技術本部ナブテスコR&Dセンターシステム開発部長の野原修氏は「このセンサで収集した負荷や温度などの旋回情報をもとに、ナブテスコ独自の高応答フィードバック制御を行います。これによって、複数のヨー駆動装置の負荷分担を均一化し、数秒スパンで発生する過大な負荷の上昇も抑えることができるのです」と語る。

さらに、取得したデータはクラウドサーバーに蓄積されるため、端末を通じてリアルタイムで確認することも可能だという。風力発電設備に関しては、これまでも発電量を監視・制御するSCADAや主駆動部の異常予兆を検知するCMSなどのシステムがあった。しかし、ヨー旋回部についての異常検知システムは無く、ナブテスコのCMFSが大いに貢献すると期待される。

CMFS(Condition Monitoring System with Fail-Safe)

ナブテスコが開発した故障回避機能付き状態監視機器

<CMFSのシステム構成>

脱炭素化に資するクラウド移行
企業主体のAI実用化を加速

ナブテスコのCMFSを支える重要な機能の1つが、アマゾン ウェブ サービス(AWS)だ。CMFSでは、ヨー旋回部の負荷情報をAWSのクラウドサーバーに集積する。そのため、端末を通じ、離れた風力発電機の状態をリアルタイムでいつでもチェックできるのだ。山頂や洋上など、すぐに到達するのが難しい場所に設置されることの多い風力発電設備には、必須の機能だといえる。

アマゾンは気候変動対策に力を入れていることでも知られる。2019年には「The Climate Predge(気候変動対策に関する誓約)」をGlobal Optimismと共同で設立し、20億ドルの基金によって気候変動対策に取り組むスタートアップなどを支援している。さらに、通信販売の商品のパッケージ重量を低減したり、データセンターに低炭素コンクリートや再生可能エネルギー由来の電気を使用したりするなど、脱炭素経営においても世界をリードしている。AWSでは、ユーザーの事業所内にあるオンプレミスの情報システムをクラウドへ移行するサポートを一貫して行うが、これによって、付随するCO2排出量を78%も削減できるという。

もう1つ、CMFSが提供するサービスの鍵を握るのが、ブレインズテクノロジーが提供する、AIを活用した異常検知ソリューション「Impulse」だ。さまざまな予知保全や品質管理・改善に活用できる。製造業や建設業など多くの企業に導入され、その実績は21000モデルを超えている。機械学習を用いるため、音や画像、動画などからも異常を検知することが可能だ。プログラミングの必要がなく、データ分析サイクルを効率的に回すことができる点に加え、ほかのシステムとの統合も容易に行うことができる点が大きなアドバンテージだといえる。

CMFSでは、状態監視や異常検知にImpulseを用いたため、1年程度という短い開発期間でサービスをローンチすることができたという。こうした最新テクノロジーを用いたナブテスコのCMFSだからこそ、風力発電設備の故障を回避し、発電を止めることなく、長寿命化を実現できる。

AWS クラウド化でCMFSを支える

CMFSでは、データをクラウド上に蓄積することで遠隔・リアルタイムでの見える化が可能になった。風力発電のO&Mにおいては欠かせない機能だ。

<IT トランスフォーメーションパッケージ 2.0>


AWSが提供する「IT トランスフォーメーションパッケージ 2.0」では、クラウドへの移行に必要な評価や準備から移行に至るまでの、すべてのプロセスを一貫してサポートする。

Impulse
機械学習で異常を検知

機械学習により異常検知を行うImpulseは、状態監視には欠かせないAIソフトウェア。風力発電機の長寿命化に貢献する。

<MLOpsでAI実用化を加速>

PROFILE

ナブテスコ株式会社
技術本部 ナブテスコR&Dセンター
システム開発部長

野原修氏

問い合わせ

ナブテスコ株式会社
岐阜県不破郡垂井町宮代1110-1 ナブテスコ岐阜工場内
TEL:0584-22-5353


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

WIND JOURNAL vol.3(2022年夏号)より転載

Sponsored by ナブテスコ株式会社

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