千葉県銚子市沖 約48億円かけてメンテ拠点港を整備
2022/12/30
三菱商事を中心とするコンソーシアム(三菱商事系コンソ)が秋田と千葉の計3海域で進める洋上風力発電の事業の詳細が明らかになった。陸上工事はシーテックが主体となり、送電設備の製造・納入は住友電工と古河電工、変電設備の製造・納入は東芝エネルギーシステムズと三菱電機が担う。千葉県銚子市沖では、メンテナンスの拠点港として千葉県が23年度から約48億円をかけて銚子市の名洗港を整備する方針。
銚子市沖
1キロ間隔で大型風車31基を建設
千葉県銚子市沖 事業概要(出典 千葉銚子オフショアウィンド合同会社)
経済産業省と国土交通省は12月13日、三菱商事系コンソが秋田と千葉の計3海域で進める洋上風力発電の事業計画「公募占用計画」を認定したと発表した。公募占用計画は、国による公募の際に事業者が計画を提出しており、発電規模やスケジュール、地域共生策の内容などを記載している。審査を経て国から選定された事業者は、計画に沿って事業を進める義務がある。
公募占用計画が認定されたのは、「秋田県の能代市・三種町・男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の計3海域。このうち、千葉県銚子市沖では三菱商事と三菱商事洋上風力、中部電力グループのシーテックの3社が出資する「千葉銚子オフショアウィンド合同会社」が洋上風力発電事業を進めている。同市南側の沖合に広がる約3950ヘクタールの海域で、高さ約250メートルの大型風車31基を1キロ間隔で建設する計画。最大発電出力は約39万キロワットで、約28万世帯分の電力需要に相当する。
建設拠点は鹿島港、
運転保守は名洗港
千葉県銚子市沖 設備概要(出典 千葉銚子オフショアウィンド合同会社)
千葉県銚子市沖では、陸上工事が25年1月から、洋上工事は27年2月から開始する計画。運転開始は28年9月の予定。発生した電気は約50キロ離れた東京電力新佐原変電所(千葉県香取市)を経て首都圏などに送られる。洋上風車の建設拠点は鹿島港(茨城県鹿嶋市)、操業・保守の拠点は名洗港(銚子市)とする。鹿島港は、洋上風力発電設備の設置などの基地港湾として国土交通省が整備を進める。名洗港は、千葉県が23年度から5年間で整備する方針。防波堤の建設や海底のしゅんせつ、岸壁の補修などに総額約48億円がかかる見通しで、千葉県は23年度予算案に初年度の調査や工事の費用を盛り込むことにしている。
送電設備は
住友電工、古河電工
千葉県銚子市沖 建設期間の事業実施体制(出典 千葉銚子オフショアウィンド合同会社)
洋上風車の製造・納入は、米国の大手風車メーカー、ゼネラルエレクトリック(GE)が担う。GEと協力関係にある東芝子会社の東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)が風車の支柱に据え付けるナセルを組み立てる。陸上工事はシーテックが主体となり、送電設備の製造・納入は住友電工と古河電工、変電設備の製造・納入は東芝ESSと三菱電機が担当する。
洋上風車の操業・保守は
地元企業と連携
千葉県銚子市沖 運転期間の実施体制(出典 千葉銚子オフショアウィンド合同会社)
稼働後の洋上風車の維持管理は製造メーカーのGE、操業・保守は風車メンテナンス国内最大手の北拓が担う。北拓は、1999年に風車メンテナンス事業に参入し、全国各地で風車の保守業務を手がけている。操業・保守業務に必要な作業員輸送船の保有・管理は日本郵船、陸上系統の操業・保守はシーテックが担当する。
銚子市では20年9月、市と市漁業協同組合、銚子商工会議所が稼働後の設備保守などを担う新会社「銚子協同事業オフショアウインドサービス(C-COWS)」を設立した。資本金は500万円で、市漁協が60%、銚子商議所が30%、市が10%を出資している。発電事業者の千葉銚子オフショアウィンド合同会社は、洋上風車の操業・保守においてはC-COWSとの連携を念頭においた体制整備を検討する考えを明らかにしている。
グループ企業、
協力企業のリソースを最大限活用
地域活性化につながる共生策(出典 千葉銚子オフショアウィンド合同会社)
C-COWSは千葉銚子オフショアウィンド合同会社に、漁業との共生や振興のため総額118億円におよぶ基金への拠出を求めている。118億円の内訳は、漁業との協調・共生・振興の取り組みとして銚子、旭両市の基金に計100億円、県漁協振興基金に15億円、漁場実態調査のための銚子市の基金に3億円となっている。
千葉銚子オフショアウィンド合同会社は、地域活性化につながる共生策を実施する考えを明らかにしている。具体的には、「持続可能な漁業支援体制の構築」「地域産業の振興と雇用の創出」「住民生活の支援」の3つの施策を進める方針。同社は、地域住民全体のメリットにつながるような施策が実施できるよう、政府・自治体の助成制度や、グループ企業、協力企業のリソースを最大限活用していくと説明している。
DATA
取材・文/高橋健一