洋上風力第2ラウンド 4海域の公募が30日締め切り
2023/06/29
経済産業省と国土交通省は、再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者の公募を6月30日に締め切る。秋田、新潟、長崎の4海域で、これまでに計21事業体が環境影響評価を実施しているが、すべての事業体が入札に参加するかは不透明な状況だ。
新たなルールで
事業者を公募
激戦の様相を呈している「新潟県村上市、胎内市沖」
洋上風力発電の事業者を公募しているのは、「秋田県八峰町、能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」、「新潟県村上市、胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の計4海域。このうち「秋田県八峰町、能代市沖」は2021年9月に洋上風力発電施設を優先的に整備する「促進区域」に指定された。事業者の公募は2021年12月にいったんスタートしたが、経産省と国交省が2022年3月、事業者公募の評価基準を見直す方針を示したことに伴い、公募が実質的に中断していた。そのほかの「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」、「新潟県村上市、胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の計3海域は、2022年9月に促進区域に指定されている。秋田、新潟、長崎の計4海域の事業者公募は、2022年12月28日に開始された。
洋上風力発電公募の第1ラウンドでは、三菱商事を中心とする企業連合が、秋田、千葉の計3海域をすべて落札し、各方面に波紋を広げている。これをうけて、国が評価基準を見直したことにより、評価点全体の240点のなかに「事業計画の迅速性」という項目が設けられ、20点が新たに配点された。このほか「売電単価」に120点、「電力安定供給」に20点、「運転開始までの事業計画」に15点、「事業実施体制・実績」「資金・収支計画」「周辺航路、漁業などとの協調・共生」「地域経済への波及効果」「国内経済への波及効果」「関係行政機関の長などとの調整能力」に各10点、「運転開始以降の事業計画」に5点が配分されている。
4海域で21事業体が
環境アセスを実施
「秋田県八峰町・能代市沖」は、青森県と接する八峰町南部から能代市北部にかけての海域。国が示した公募占用指針によると、促進区域の面積は3239.4ヘクタールで、最大出力は35.6万kW。同海域では、これまでに6つの事業体が環境影響評価を実施している。
「秋田県男鹿市、潟上市・秋田市沖」は、男鹿半島南端から秋田市北部にかけての海域。国が示した公募占用指針によると、促進区域の面積は5315.3ヘクタールで、最大出力は33万6000kW。同海域では、これまでに5つの事業体が環境影響評価を実施している。同海域で複数の事業者が撤退する方針を固めたと一部で報道されたが、秋田県環境管理課の担当者は、同海域で環境影響評価の事業者変更に関する届け出は6月28日までに出されていないとしている。
「新潟県村上市、胎内市沖」は、村上市の岩船港付近から胎内市と新発田市の境界にかけての海域。国が示した公募占用指針によると、促進区域の面積は9188.1ヘクタールで、最大出力は70kWと、第2ラウンドで公募する4海域のなかで海域面積、最大出力ともに最も大きい。同海域では、これまでに8つの事業体が環境影響評価を実施していて、激戦の様相を呈している。
「長崎県西海市江島沖」は、長崎県西彼杵半島の西方沖にある江島を囲む海域。促進区域の面積は3983.8ヘクタールで、最大出力は42万4000kW。同海域では、これまでに2つの事業体が環境影響評価を実施している。
「長崎県西海市江島沖」は離島を囲む海域で、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に近い。さらに地質構造上、海底に固定する基礎工法にモノパイル式の採用が困難で、コストが高いジャケット式を採用することが想定されている。こうしたことから、2事業体が事業計画を公表したあと、これまで4年近くにわたって新規参入の動きが表面化していない。
新潟県村上市、胎内市沖が
ラウンド全体に大きな影響
4海域の公募占用指針(出典 経済産業省)
洋上風力第2ラウンドの公募は、6月30日に締め切られ、国による審査や第三者委員会による評価などを経て、2024年3月までに4海域の発電事業者が決まる見通し。秋田、新潟、長崎の4海域で環境影響評価を実施している、すべての事業体が入札に参加するかは不透明な状況だ。
事業者の選定を進めるうえで大きなカギを握るとみられているのが、今回から新たに導入される「落札制限」。国は、ひとつの事業体が大半の海域を落札しないよう、1事業体あたりの発電・送電容量の上限を計100万kWとする方針。仮にある事業体が最大出力70万KWの「新潟県村上市、胎内市沖」を落札すれば、ほかの海域の選考対象から除外される仕組みだ。「新潟県村上市、胎内市沖」の動向は、第2ラウンド全体の行方に大きな影響を与えそうだ。
DATA
取材・文/高橋健一