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風の宝庫が本格始動!北海道沖5海域 事業化へ大きく前進

北海道西方沖に業界関係者の熱い視線が注がれている。異例の時期に5つの海域が一挙にまとめて「有望な区域」に追加選定されたのだ。総出力は385万5000kW。足踏みを続けていた北海道の一般海域の洋上風力発電事業がこれから一気に動き出す。

異例の時期に
5海域が有望な区域に

5月12日昼過ぎ、食後のコーヒーを飲みながら頭を休めていた記者の携帯電話が鳴り響いた。「経済産業省から重大な発表があるようだ」。電話の主は、本社の編集デスク。あわてて経産省のホームページを確認すると、「再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定に向け、新たに『有望な区域』の整理を行いました」という突然のニュースリリースが目に飛び込んできた。

再エネ海域利用法に基づく「促進区域」と「有望な区域」の選定は、毎年夏から秋にかけて行われる。「5月中旬になぜ北海道の5海域だけが選定されたのか」「昨年9月に指摘された多くの課題はクリアされたのか」取材を進めたところ、異例の選定の背景が少しずつ見えてきた。

「有望な区域」に追加選定されたのは、北海道西側の「石狩市沖」「岩宇・南後志地区沖」「島牧沖」「檜山沖」「松前沖」の5海域。これまで5海域は、「一定の準備段階に進んでいる区域」に整理されていたが、昨年9月の選定ではどの海域も「有望な区域」に格上げされず、関係者のあいだに焦燥感が広がっていた。このため、北海道は漁業者との調整を進めるとともに、本州と接続する送電網の整備を国に強くはたらきかけてきた。

異例の発表をうけて、北海道の鈴木直道知事は歓迎のコメントを発表した。「有望な区域への整理にあたっては、市町村や漁業協同組合など地元関係者のみなさまのご協力や、2030年度を目指した海底直流送電ケーブルの整備に係るご決断などが不可欠であったところであり、関係のみなさまに改めて感謝申し上げます。北海道は全国随一の洋上風力のポテンシャルを有しており、有望な区域への整理は発電事業の実現に向けた前進であり、道内港の基地港湾としての活用や半導体産業、データセンターといった再エネを利用する産業の集積にも弾みとなるものと受けとめています。道といたしましては、今後、地域と調和した洋上風力発電事業の実現と促進区域の指定に向けて関係するみなさまと連携して取り組むとともに、人材育成や関連産業の振興を図るなど、環境と経済が好循環する『ゼロカーボン北海道』の実現に向けて取り組んでまいります」として、引き続き、関係機関と連携して促進区域への格上げを目指す考えを強調した。

石狩市沖には
9事業体が参入

遠浅の海が広がる石狩市沖

経産省の試算によると、出力規模は最大で石狩市沖が114万kW、岩宇・南後志地区沖が70.5万kW、島牧沖が55.5万kW、檜山沖が114万kW、松前沖が31.5万kWとされる。いずれも、すべての風車を着床式で建設した場合の最大出力。このうち、石狩市沖の一般海域ではこれまでに9事業体が洋上風力発電計画を公表していて、島牧沖では3事業体、檜山沖では2事業体が計画を明らかにしている。

石狩市沖の洋上風力発電計画(2023年8月20日現在)

石狩市沖は、大消費地の札幌市に近く、石狩湾新港地域の工業団地への電力供給が期待されている。風況が良く遠浅であることから、大手商社や再エネ事業会社などが相次いで事業計画を公表している。石狩市沖の洋上風力発電事業のなかで出力規模が最も大きいのは、日本風力開発の事業計画。経産省の想定を上回る最大出力300万kWの事業を計画している。実現すれば、北海道電力泊原子力発電所(泊村)の207万kWを上回り、道内最大の発電施設となる。

関西電力は今年2月、最大出力178万5000kWの計画を明らかにした。1万2000~1万5000kWの風車を最大130基設置する。石狩湾洋上風力合同会社は、最大出力133万kWと103万2000kWの2つの計画を公表している。同社は、再エネ事業会社のINFLUXが100パーセント出資する特別目的会社。INFLUXは、青森県沖、佐賀県沖、長崎県沖、鹿児島県沖で洋上風力発電プロジェクトを進めている。

コスモエコパワーとシーアイ北海道合同会社、丸紅はいずれも最大出力100万kWの事業を別々に計画している。このうち、シーアイ北海道合同会社は、デンマークの大手ファンド運用会社「コペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズ(CIP)」の日本法人が設立した事業会社。2020年に三菱重工業が資本参画している。このほか、旧トーメン(現 豊田通商)の元社員が設立したグリーンパワーインベストメントが96万kW、JERAが52万kWの事業計画を公表している。

島牧沖と檜山沖に
5事業体が参入

島牧沖、檜山沖の洋上風力発電計画(2023年8月20日現在)

「島牧沖」は、北海道南西部にある島牧村の沖合の海域。これまでにコスモエコパワーが最大出力100万kWの計画を明らかにしている。1万~2万kWの風車を最大100基設置する。このほか、日本風力エネルギーが60万kW、シーアイ・スリー・ホッカイドウ・ピーエスと三菱重工業が設立した北海道洋上風力開発合同会社が58万5000kWの計画を公表している。

2事業体が参入している檜山沖(北海道せたな町)

「檜山沖」は、せたな町、八雲町、江差町、上ノ国町の4町の沖合の海域。これまでにコスモエコパワーが100万kW、電源開発が72万2000kWの計画を明らかにしている。
神恵内村、泊村、共和町、岩内町、蘭越町、寿都町の5町村の沖合を対象とする「岩宇・南後志地区沖」と松前町の沖合を対象とする「松前沖」の2海域には、これまでに着床式の計画を正式に公表している事業者はない。

石狩湾新港沖は
12月に運転開始へ

室蘭港を母港にするSEP船「BLUEWIND」(出典 清水建設)

再エネ海域利用法の対象外だが、石狩市の石狩湾新港の沖合では、最大出力11万2000kWの洋上風力発電設備が建設されている。グリーンパワーインベストメントが設立した合同会社グリーンパワー石狩が、昨年9月から洋上工事に着手している。計画では、石狩湾新港の沖合約1600メートルに8000キロワットの風車14基を設置する。

石狩湾新港の沖合では、清水建設が建造した大型SEP船「BLUE WIND」が今年7月から洋上風車を設置し、12月に商業運転を開始する予定。商船三井内航は、清水建設の作業員を輸送するCTV船2隻の運航を行う。

このほか北海道西方沖では、ノルウェーのエネルギー開発大手「エクイノール」が、岩宇・南後志地区沖、島牧沖、檜山沖、松前沖の4海域で、出力計400万kWの浮体式洋上風力発電事業を計画している。北海道沖で発電した大量の電気を有効に活用するには、首都圏と接続する海底送電線の整備が必要となる。

青森への送電容量を
約8倍に拡充

広域連系系統のマスタープラン(出典 電力広域的運営推進機関)

政府は、北海道と東北を結ぶ日本海側と太平洋側に計600万kWの海底送電線を新設する計画を明らかにしている。完成すれば、北海道と青森県を結ぶ現在の北本連系線(90万kW)と比べて約8倍に拡充される。北海道~東北~東京エリアの新設に2.5兆~3.4兆円、北海道内の増強に1.1兆円を投じる計画。このうち、日本海側を通る200万kWの送電線は2030年度までに完成する予定。しかし、太平洋側の建設スケジュールは定まっていない。経済産業省はこの計画をもとに今後、実際の整備の方針や費用負担のあり方などについて、関係機関や電力会社などと検討を進める。

洋上風力発電のポテンシャルが全国一と言われる北海道。「有望な区域」に選定されて事業化に道筋がついたことから、今後は石狩市沖以外の海域でも参入の動きが活発化しそうだ。スケソウダラをはじめとする漁場との調整や、本州への送電線整備の費用負担などの課題が残されているが、“風の宝庫”の5海域が「ゼロカーボン北海道」の実現をリードする日はそう遠くはない。


取材・文/高橋健一

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