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JFEエンジの笠岡モノパイル製作所が稼働開始。 国内初、洋上風車基礎の量産に特化

洋上風車のモノパイル基礎を量産する国内初の工場が岡山県笠岡市で竣工し、4月1日から稼働を開始した。JFEエンジニアリングの笠岡モノパイル製作所だ。同社にとって約50年ぶりの新たな製造拠点で、総工費約400億円を投じて建設された。

(笠岡モノパイル製作所の竣工式の様子。筆者撮影)

モノパイル基礎を国産化
20MW規模の超大型風車に対応


(2024年3月19日に竣工した笠岡モノパイル製作所。画像提供:JFEエンジニアリング株式会社)

「日本の洋上風力発電に国産のものを組み込みたいという思いで、モノパイル基礎の量産工場を新設することを決断しました」。JFEエンジニアリングの大下元社長は、笠岡モノパイル製作所の竣工にあたって、洋上風力発電事業への国産部材の活用に向けた熱い思いを語った。

2024年3月、​​JFEスチールの⻄⽇本製鉄所福⼭地区内に新設された「笠岡モノパイル製作所」が、約2年間にわたる建設を経て竣工した。モノパイル基礎を量産することに特化した国内初の製造拠点だ。全長270mの素管工場では、最大で直径12mの風車モノパイル基礎を製造できる。出力20MW規模の超大型風車にも対応できるという。


(直径9.7mのテストモノパイル。筆者撮影)

生産能力は年間約10万トン。モノパイル基礎1基あたり約4ヶ月で製造する見通しで、1週間に1基を完成させる量産体制を構築する。現在、洋上風力第1ラウンドの案件の受注に向けて営業活動を進めている。笠岡モノパイル製作所は4月1日から稼働を開始した。

鋼板の調達から一気通貫
欧州の最新鋭溶接機器を導入


(竣工式で行われた厚さ74mmの鋼板曲げの実演。筆者撮影)

笠岡モノパイル製作所では、隣接するJFEスチール西日本製鉄所から調達した「大単重鋼板」という分厚い鋼板の板継ぎ、鋼板曲げ、溶接、検査、塗装といった製作工程を一貫して行う。塗装まで完了したモノパイル基礎は、西日本製鉄所構内の出荷バースで台船に載せられ、JFEエンジニアリング津製作所へ運ばれる。そこでハシゴなどのアクセサリを取り付け、出荷するという。

分厚い鋼板を加工する機器には、欧州の最新鋭のものが多く導入された。竣工式では、厚さ74mmの鋼板曲げの実演が行われた。平らな鋼板がわずか1分程度でぐるりと筒状に加工される様子に、竣工式の参加者や集まった報道陣から驚きの声が上がった。


(出荷バースまで運ぶための多軸台車。複数台を連ねてモノパイルを運ぶ。筆者撮影)

モノパイル基礎の製造では、完全な円を実現するため「真円度」の測定が重要になる。特に重要な溶接作業においては、鋼構造物の建造のノウハウに基づいて「サブマージアーク自動溶接」という高品質で効率の高い溶接方法を採用した。溶接機には、ペマメック社(フィンランド)の最新機器を導入したという。


(溶接を行うための移動建屋。分厚い鋼板を内側と外側から何重にも溶接する。筆者撮影)

将来は400名の雇用創出
製鉄の脱炭素化にも取り組む


(鋼板曲げの機器前でのテープカット。筆者撮影)

JFEエンジニアリングは、モノパイル・ジャケットなどの着床式基礎の製造の他、洋上風車O&M事業への参入などによって、洋上風力発電事業全体で年間700億円の売上を目指す。笠岡モノパイル製作所では、将来的に300〜400名の新規雇用を見込んでいる。

竣工式には、岡山県の伊原木隆太知事、笠岡市の小林嘉文市長も駆けつけた。伊原木知事は「カーボンニュートラルの切り札である洋上風力発電に岡山県が携わることができて嬉しく思います。地域雇用の観点でも期待しており、しっかりとタッグを組んでいきます」と力を込めた。

JFEホールディングスの柿木厚司社長は「今後は鉄そのものの脱炭素化と電気の再エネ化が重要になるため、その両方に力を入れていきます」と、モノパイル基礎のライフサイクル全体におけるCO2排出量削減に取り組む考えを強調した。
 

DATA

日本初の洋上風力着床式基礎(モノパイル)製造拠点竣工


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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