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アイルエンジニアリング、Tekmarの日本法人を年内に設立へ

国内の洋上風力発電産業は、欧州から約20年遅れているといわれる。今、日本に必要なものとは何か。海外の最新技術を国内へ導入するアイルエンジニアリングの事業戦略について、代表取締役の玄馬淳氏と、本誌記者で省エネ・脱炭素エキスパートの山下幸恵氏が語り合った。

メイン画像:テクマールグループは、サブシーシステムに関する多様なソリューションを有している。(画像提供:アイルエンジニアリング)

<目次>
1.調査から敷設まで一括で提供 国内拠点でサービスを強化へ
2.「建設会社の枠を超える」エンジニアリングで付加価値を

 

調査から敷設まで一括で提供
国内拠点でサービスを強化へ

山下 アイルエンジニアリングは、海外の洋上風力発電産業の最先端技術を国内へ導入しています。海中ケーブルを保護するケーブル・プロテクション・システム(CPS)では、英国のTekmar(テクマール)グループと業務提携していますね。

玄馬 洋上風力発電設備において、海底の基礎構造物から海中にケーブルが露出する部分であるフリースパン部ではケーブルが潮流にさらされ、埋設部までのタッチダウンポイントでは絶えず海底面との摩擦が生じるなど、ケーブル破損リスクが極めて高い場所であるため、CPSのようなケーブルの保護が不可欠です。日本にはこれまで、こうした技術がなかったため、世界で初めてCPSを開発したテクマールグループと提携し、国内で安全かつ効率的に洋上風力発電事業を進められるように取り組んでいます。


海底の基礎構造物から海中にケーブルが露出するフリースパン部や、タッチダウンポイントは、極めてケーブルの破損リスクが高く高度な設計力が要求される。(画像提供:アイルエンジニアリング)

テクマールグループは、CPSで世界有数の実績とシェアを誇る。最大の強みは、初期の海底地盤調査から、各種リスクアセスメント、挙動解析、ケーブルルートの選定、海底ケーブルの敷設プランの策定までワンストップでサービスを提供できることだ。同グループには、ケーブルの敷設に関するリスク評価や設計を行う専門企業や、洗掘を防ぐコンクリート構造物のメーカーなどがあり、こうした総合力を結集して、ワンストップでソリューションを提供している。

山下 国内では、洗掘防止策や海底ケーブルの安定化として、石を詰めたフィルターユニットという袋をケーブル周囲に沈めるのが一般的ですが、テクマールグループにはどのようなソリューションがあるのですか?

玄馬 欧州ではフィルターユニットだけでなく、バラ石、コンクリートマットレス、バラストモジュールなどを組み合わせて使用しています。テクマールグループでは世界の150以上の洋上発電プロジェクトに、延べ1万本以上のCPSを納入した経験から、それぞれの海域や環境に適した設計・解析を自社で完結し提案することができます。国内でも数多くの海域で解析を行い、すべての大規模洋上風力発電所に納入した実績から、日本の環境に適した設計を提案することができます。これこそがテクマールグループの強みであり、国内では同社と提携している弊社だけが提供できるソリューションです。

当社は、設計・解析などのエンジニアリング、コンサルティングサービスに加え、国内大手メーカーと共同で、これらの海中構造物を国内各地で製造することを検討しています。コンクリート構造物は非常に重く、輸送が難しいため、できるだけ発電所の近くで製造し、地域の産業振興にも貢献したいと考えています。


海底の状況などに応じて、ブリッジやマットレスタイプなどさまざまなバリエーションがある。( 画像提供:アイルエンジニアリング)

テクマールは、一連のソリューションをより強化するため、早ければ今秋にも日本法人を設立する。日本語を話すスタッフが常駐するので、問い合わせにスムーズに対応できる。アイルエンジニアリングも共同出資し、エンジニアリング分野をさらに強化する考えだ。



英国のテクマールは、ケーブル・プロテクション・システム(CPS)で世界トップクラスのシェアを誇る。秋田県能代港、北海道石狩湾新港、富山県入善町沖といった着床式洋上風力発電プロジェクトでは、同社のCPSが採用され、日本海事協会(Class NK)の認証に必要な解析も行った。(画像提供:アイルエンジニアリング)

 


 

「建設会社の枠を超える」
エンジニアリングで付加価値を

山下 新規事業である洋上風力発電分野において積極的なサービス展開を図っていますが、今後の展望を教えてください。

玄馬 当社は岡山県倉敷市で建設会社として創業し、主に太陽光発電事業を展開してきました。この先、再生可能エネルギーが主力電源となる中で、成長が見込まれる洋上風力発電事業を次なる事業の柱にしたいと考え、約5年前、本格的に洋上風力発電事業に参入しました。

私は日頃から、「建設会社の枠を超えた仕事をしましょう」と社員に呼びかけています。顧客のニーズは1つではないので、さまざまな角度から見ると、地方の中小企業である当社にも十分ビジネスチャンスがあると考えています。洋上風力発電事業で日本に先行する欧州の最先端ソリューションに、当社ならではのエンジニアリングをプラスすることで、付加価値を高めることを心がけています。 

アイルエンジニアリングは、テクマールグループの他にも、アラミドなどの合成繊維を使って、浮体の係留索を独自製法で製造するファイバーマックス(オランダ)と独占販売契約を結んでいる。アラミドケーブルは、重量が鉄の8分の1で強度と耐久性が高く、柔軟で施工しやすいメリットから、スチールワイヤーに代わる新製品として注目されている。世界で主流になりつつある数々のソリューションを通じて、日本の洋上風力発電事業への貢献を目指す。


ファイバーマックス(オランダ)の合成繊維製ケーブルは、洋上風力発電のエンジニアリング会社である英国のマリン・パワー・システムによって、緊張係留(TLP)方式の浮体式洋上風力発電に世界で初めて採用された。(画像提供:アイルエンジニアリング)



ファイバーマックスの合成繊維ケーブルは、浮体の係留索だけではなく敷設船のクレーンなどにも採用されている。アイルエンジニアリングは、ファイバーマックスと独占販売契約を結んでいる。(画像提供:アイルエンジニアリング)

 


 

PROFILE

アイルエンジニアリング株式会社
代表取締役

玄馬淳氏


省エネ・脱炭素エキスパート

山下幸恵氏(office SOTO)

問い合わせ


アイルエンジニアリング株式会社
〒712-8061 岡山県倉敷市神田3丁目15-2
TEL:086-441-6400
FAX:086-441-6401
Mail:info@airu-eng.jp

WIND EXPO【秋】 に出展!
ブース番号: E14‐20


WIND JOURNAL vol.7(2024年秋号)より転載

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