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洋上風力事業の実現性向上のために。豊通インシュアランスマネジメントのリスク管理

日本は欧州に比べて気象・海象条件が厳しく、サプライチェーンも脆弱なことから、一般的に保険コストが高くなるとされています。果たしてそれは本当なのか、そして、事業者としてどのような配慮が必要なのか、洋上風力発電事業の保険組成の仕組みをわかりやすく解説します。

<目次>
1.陸上風力発電と洋上風力発電の保険構成の違い
2.洋上風力発電事業 再保険の仕組み
3.彼らは日本をどのように見ているのか
4.公募入札においては事業実現性が評価ポイント
5.再エネ保有量ナンバーワン企業で培ったサービス

 

陸上風力発電と
洋上風力発電の保険構成の違い

陸上風力発電事業では、全風車の完工・引き渡し後に操業用の3種目をそれぞれ付保しますが、洋上風力発電事業では建設中から操業開始1年目までワンパッケージでシームレスに付保します。これは、海上保険が比較的自由度の高い保険種目であることと、欧州においては、完成した風力発電系統から順次商業運転を開始するため、組み立て保険の終わり目と操業保険の開始日を明確に区切ることが困難であるためです。

また、地震リスクに関しても付保の方法が異なります。陸上風力発電事業では地震危険は基本免責となっており、必要に応じて特約で復活担保するか、もしくは別途地震保険を付保する方法が一般的です。一方、洋上風力発電事業のWind CARやOARでは、英文約款かつグローバルな生い立ちの背景を持つため、地震リスクは基本免責としていません。

陸上風力発電事業と洋上風力発電事業の保険構成の違い

洋上風力発電事業
再保険の仕組み

メガ損保でも、1社で何千億円のアセットを保険契約で引き受けると大きなリスクを抱えることになるため、通常は共同保険と呼ばれる引き受け方式でリスクを分散し、再保険(保険会社のリスクを再保険会社に移転)の仕組みを活用しています。

再保険というとロイズマーケットを思い浮かべる方も多いですが、陸上風力発電事業のリスクは一般的に欧州大陸系・北欧系の再保険会社・保険会社へ転嫁されます。洋上風力発電事業でも再保険の仕組みは活用されますが、再保険リーダー(Leader)として引き受けを行うプレーヤーが限られており、またFollowerとして引き受けを行うプレーヤーも少ないため彼らのプライシングや引き受け方針に大きく左右されます。

再保険の仕組み

 


 

彼らは日本を
どのように見ているのか

一般的に事業において、日本は世界でも有数の地震国であり、毎年必ず台風が通過し、数年に一度の割合で巨額な損害を発生させていることは共通認識となっていますが、洋上風力発電事業は実績が少ないため、実際にどの程度のリスクとなり得るのか理解が進んでいません。

世界的な再保険会社であるミュンヘン再保険会社が作成した、欧州と日本列島の風災・地震のハザード(危険)分布データをもとに説明します。


欧州と日本列島の風災・地震のハザード分布(出典 Munich Re 2024)

ミュンヘン再保険会社のデータによると、右上に表記している「日本列島の風のハザード」は、広い範囲が濃い青色で表示されていることでわかるように、左上の「欧州の北海のハザード」と同等かそれ以上と評価されています。地震に至っては、右下の「日本列島のハザード」は濃い茶色、濃い赤色で表示されていることでわかるように、左下の「欧州エリアのハザード」に比べて3段階から5段階高いと評価されています。このような厳しい条件下で行われるプロジェクトにおいて、事業者・施工者・メーカーは万全の対策を講じますが、最終的なリスクの質や量は、日ごろから事業者と接点を持たない再保険者には把握しにくい状況です。

競争力のある引き受け条件を引き出すためには、事業者側が持つリスク情報と再保険者が持つリスク情報の非対称性をいかに埋めるかが重要なプロセスとなります。

公募入札においては
事業実現性が評価ポイント

再エネ海域利用法に基づく一般海域の洋上風力発電事業は、公募占用指針において、「事業計画の実現性」に関しては、リスク特定・分析の内容を含めて評価すると示されています。また、これらのプロジェクトでは、プロジェクトファイナンスの活用も多く、事業者や金融機関においては、事業の安定性・継続性の観点から事業リスクを詳細に把握・分析することが求められます。

台風、落雷、地震および津波などの自然災害、変電設備や蓄電池施設の火災などに加え、ブレード損傷(洋上作業による交換)、海底ケーブル切断といった洋上風力発電事業固有の事故などのリスク評価を行い、その対策や保険も含めた財務インパクトを示すことは、事業計画の実現性を高めることにつながると考えています。

再エネ保有量ナンバーワン企業で
培ったサービス


洋上風力タスクフォースのメンバー

豊通インシュアランスマネジメントは、保険会社の委託を受けることなく独立した存在である保険ブローカー(保険仲立人)です。当社は、豊田通商グループの保険手配で培った実績とノウハウをもとに、さまざまな顧客ニーズに沿ったオーダーメイドの保険商品の設計が可能です。再生可能エネルギー事業においては、業界のプラクティスやプロジェクトファイナンス案件に精通したプロフェッショナルな人材を有し、日々お客様の困りごとに対応すべく活動しています。商社としての海外投資案件を通じたコネクションより、外資系保険会社や海外再保険マーケットへダイレクトにアプローチし、キャパシティの調達を行うことも可能です。近年、保険引き受け環境が厳しくなっている中、保険マーケットに正確なリスク情報を提供するべくリスクコンサルティング機能の充実を推進しています。

豊通インシュアランスマネジメントの小峠智志さんは、日本の洋上風力事業の実現性向上に貢献したいと話しています。

 


 

問い合わせ


豊通インシュアランスマネジメント株式会社
東京営業所
東京都港区港南二丁目3番13号 品川フロントビル11階
TEL:03-4306-8245


WIND JOURNAL vol.7(2024年秋号)より転載

Sponsored by 豊通インシュアランスマネジメント株式会社

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