不動技研工業 景観のシミュレーションやO&Mの効率化に産学連携でソリューションを新開発
2025/02/04
![](https://windjournal.jp/wp-content/uploads/2025/02/WJ_fudogiken_250203_1.jpg)
不動技研工業(長崎県長崎市)は、風力発電所の開発や安定操業に役立つソリューションを開発している。産学連携で新たなイノベーションを創出する、ものづくりのエンジニアリング企業を取材した。
メイン画像:バーチャルウインドファームで作成した画像(写真提供 不動技研工業)
簡易フォトモンタージュを
わずか数分で作成
不動技研工業は60年以上にわたって、発電所や工場などにさまざまなエンジニアリングを提供している。機械や配管、土木建築などの設計技術をもとに、自動車の電装部品の開発、ドローンの空撮による3D計測、アプリケーションの開発といった新たなソリューションを次々に生み出している。
同社は今年1月、拡張現実(AR)技術を用いて景観をシミュレーションできるiOSアプリ「Virtual Wind Farm(バーチャルウインドファーム)」をリリースした。バーチャルウインドファームでは、地図や写真にバーチャルの風車を簡単に合成することができる。陸上だけでなく洋上にも対応し、風車のローターの直径、ハブまでの高さ、基数、設置位置の座標などを任意に設定できる。複数の眺望点から見た写真や風車が回る映像を作成し、記録することも可能だ。あらかじめ読み込んだ3D地図上に風車を配置する「VRモード」と、任意の眺望点から撮影した写真に風車を合成する「ARモード」の2種類があるという。
不動技研工業の松本穂積氏は、「バーチャルウインドファームは、従来のフォトモンタージュと比べて、景観イメージの作成スピードが圧倒的に早い点が強みです」と話す。「アプリ上でいくつかの操作をするだけでよいので、慣れれば数分で風車の合成画像を作成できます。単純に風車の画像を合成するのではなく、地形や建物といった遮蔽物との位置関係、視野角を考慮してリアリティを追求しました」と説明する。
大規模風力発電所の開発の初期段階で必要な環境アセスメントでは、景観への影響を調査・予測・評価する。近年は、風車が景観に与える影響を懸念して、開発計画が撤回されるケースもある。「バーチャルウインドファームは、住民説明会でも活用が期待されます。景観に関する心配や不安を取り除いて、風力発電の開発に貢献したいと考えています」と松本氏は力を込める。
風切り音を解析して異常検知
遠隔監視システムもリリース
必要な作業は、稼働中の風車の風切り音をスマートフォン端末とマイクで録音するだけ
(写真提供 不動技研工業)
不動技研工業は17年から、長崎総合科学大学の本田巌教授や長崎海洋産業クラスター形成推進協議会とともに、風車ブレードの異常検知システムの開発に取り組んできた。20年からはENEOSリニューアブル・エナジーも共同研究に加わった。約6年間をかけて開発したのが、風車ブレードの異常を音響システムで検出する「Chokai」だ。Chokaiは、稼働中の風車の風切り音をスマートフォンで60秒ほど録音し、約30秒の解析で、アプリ上に異常の有無が表示される仕組み。風車の運転を止めずに診断し、事前に特別な準備も不要だ。
ブレードの状態は作業員の目視や聴覚によって確認することが多いが、熟練した作業員でなければ、異常の早期発見が難しい場合もあるという。国は、30年度の導入目標として陸上風力で17・9GW、洋上風力で5・7GWを掲げている。
今年度中に策定する第7次エネルギー基本計画では、これらの目標がさらに引き上げられる。全国に風車が増えることによって、点検を行う作業員の不足が予測される。風車の点検を行った経験が少ない作業員でも、熟練した作業員と同等の技能やレベルが求められる場面も増えてくるだろう。「風車の点検作業員の人材不足という課題を想定して、ベテラン作業員の技能だけに頼らず、誰でも簡単にブレードの異常検知ができるシステムを開発しました」と事業推進本部の中村博史氏は明かす。
共同研究のメンバーである長崎総合科学大学の本田教授は、構造音響や動力学解析を専門としている。客船のエンジン音などから船体の異常を早期発見する研究に早くから取り組んできた。「Chokaiの開発にあたっては、風車のブレード異常の予兆をいかに早期に発見できるかを重視しました。異常の程度が小さいうちに対処できれば、発生するダウンタイムやコストも最小で済みます」と力を込める。
ChokaiはAndroid用アプリで提供しており、スマートフォン・三脚・マイクの一式をレンタルするサービスを展開している。この先、洋上風力発電が全国で拡大し、遠隔監視のニーズが高まることから、岸から離れた海上の風車から音響データを通信で送る遠隔でのモニタリングシステムも開発中だという。中村氏は「遠隔システムは今年度中にもリリースする予定です。ぜひ多くの事業者やメンテナンス事業者に利用していただきたいと思います」と前を向く。
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不動技研工業株式会社
事業推進本部
松本穂積氏
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取材・文/山下幸恵(office SOTO)
WIND JOURNAL vol.8(2025年春号)より転載
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