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東京都、伊豆諸島沖で海底地盤の本格調査を開始 世界最大規模の浮体式開発を目指す

東京都は伊豆諸島沖への浮体式洋上風力発電の導入に向けて、今年度から海底地盤や風況などの本格調査に着手する。NEDOの次世代浮体式実証研究や、経済産業省の大水深実証を視野に入れた事業で、2040年頃をめどに世界最大規模の浮体式開発を目指している。

メイン画像:東京都大島町沖

<目次>
1.大水深実証を視野に 提案書作成の事業者を公募
2.大水深の浮体式実現に向けて NEDOや民間企業が技術開発

大水深実証を視野に
提案書作成の事業者を公募


伊豆大島沖で潮流観測を実施(写真提供 東京都大島町)

東京都の小池百合子知事は、2024年11月にアゼルバイジャンで開催された国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)のイベントで、伊豆諸島沖に100万kW規模の浮体式洋上風力発電設備の導入を目指す考えを明らかにした。その後、伊豆諸島の大島町沖、新島村沖、神津島村沖、三宅村沖、八丈町沖で、浮体式洋上風力の導入可能性の検討を進めている。

昨年6月には、伊豆諸島沖の5海域が再エネ海域利用法に基づく準備区域に整理され、それと併せて、新島村沖と神津島村沖の2海域が「セントラル方式」の調査対象区域に選定された。また大島町沖では、民間事業者による共同調査が進められている。

ただ、伊豆諸島の沖合は水深が500m以深のいわゆる「過酷環境」である。これまでに経済産業省は、秋田県南部沖と愛知県田原市・豊橋市沖の2海域を大規模浮体式洋上風力の実証区域に選定しているが、秋田県南部沖は水深400m程度、愛知県沖は水深80~130mで、「過酷環境」の実証ではない。

一方で日本は、将来的に排他的経済水域(EEZ)などの水深が深く、急深、高波高といった「過酷環境」で浮体式洋上風力の開発を進める必要があるため、経産省は昨年7月に、「大水深などの過酷な環境に対応するための技術開発・実証」の追加的施策を取りまとめている。グリーンイノベーション(GI)基金の活用対象に、大水深の過酷環境での浮体式洋上風力実証事業を追加し、都道府県からの提案をもとに、関係者の同意が得られた海域を選定したうえで、事業者を公募する方針だ。東京都は、経産省の大水深実証への提案を視野に入れて、今年度から海底地盤と風況などの本格調査に乗り出す。

これに先立って東京都は今年3月、「2026年度過酷環境下における浮体式洋上風力実証に係る提案書作成等支援業務委託」の事業者を公募し、株式会社リブリッジを選定した。今後は、船舶航行・漁業操業・航空機の飛行経路などの海域利用状況を踏まえ、実証海域を3ヶ所程度選定し、海域の所在地・海域の面積・想定出力・主な自然条件、実証実施の条件、想定する港湾などを整理する。それと併せて、発電事業者や浮体式関連メーカーなどへのヒアリングを実施して、大水深実証の提案書を作成する考えだ。
 

 

大水深の浮体式実現に向けて
NEDOや民間企業が技術開発


GI基金事業「浮体式洋上風力における共通基盤開発」(出典 経済産業省)

東京都が今年度から実施する海底地盤調査は、送電ケーブル敷設ルートの確保が最大の目的となる。現在、伊豆諸島には本土につながる送電ケーブルがないため、東京電力の系統から独立している。このため、都では2026~27年度に約90億円を投じて伊豆諸島沖でボーリング調査を実施する。これにより事業者負担を軽減し、浮体式事業への参入を促すのが狙いだ。送電ケーブルは本土まで総延長100㎞以上となるもので、調査により敷設案を作成し、事業参画を検討する企業に提供する。

東京都は、伊豆諸島沖の浮体式洋上風力については2040年頃をめどに具体化する目標を掲げているが、その実現にはNEDOの浮体式洋上風力実証の成果を反映していく考えだ。NEDOの技術開発ロードマップでは、アジア太平洋地域に適した次世代型大型風車の国産化のほか、離岸距離が遠く大水深海域に設置可能な浮体および係留システム、高圧ダイナミックケーブル、次世代洋上変換所、高度運転保守技術などの開発を2040年の案件形成を目指してGI基金で開発を進めていく。

NEDOの技術開発ロードマップでは、浮体・係留システムについてはFLOWRAが進めている浮体の量産・高速施工技術の実海域での実証とともに、大水深対応の次世代浮体・係留技術開発を進める。高圧ダイナミックケーブルは、まず500m程度までの水深に対応した設計・施工技術を検証し、2031年以降に大水深への対応を進めるとともに、次世代洋上変換所の設計・施工技術開発を並行して進めていく。いずれも2040年に商用水準の技術とすることを目指している。


2040年に想定される海洋ロボティクスを活用した点検システムの将来像(出典 東洋エンジニアリング)

また浮体については、海底に係留する必要があり、海底工事が不可欠だが、大水深ではこれを機械化する必要がある。海底ケーブルも通常、土や砂で被覆して外部からの影響を防いでいる。しかし潮流などで覆土がはがされる場合があり、それを修復しなければならない。

こうした大水深での施工時やメンテナンスでは、遠隔操作型無人潜水機(ROV)、自律型海洋無人機(ASV)、自立型無人探査機(AUV)などの設備とその運用技術が不可欠だ。今年3月、東洋エンジニアリングなど4社が、「洋上風力発電設備の水中点検作業を無人化するシステムの社会実装に向けたロードマップ」を国に提案した。このような民間企業による研究成果も、伊豆諸島沖のような大水深の浮体式洋上風力の実現を支えることになる。

大水深における浮体式洋上風力の実現まではまだ時間がかかり、多くの技術的課題があるものの、世界では総延長1200㎞、最大水深3000mの海底送電線を敷設した事例もある。各方面での研究成果が反映されることで、伊豆諸島沖浮体式洋上風力を実現に近づけられる。
 

 

DATA

経済産業省 再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定に向けた準備区域の整理及びセントラル方式による調査対象区域について

東京都・島しょ地域の再生可能エネルギー利用拡大

NEDO グリーンイノベーション基金事業で新たに「浮体式洋上風力における共通基盤開発」に着手します

東洋エンジニアリング 内閣府総合海洋政策推進事務局委託事業 「自律型無人探査機(AUV)利用実証事業」


取材・文/宗 敦司

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