【商船三井】洋上風力バリューチェーンへの貢献目指す
2022/01/19
アジア初のSOVが
2022年就航
アジア初のSOV事業
――近くスタートする洋上風力プロジェクトは。
世界最大の洋上風力発電事業者、デンマークのオーステッド社が台湾彰化沖で開発している台湾彰洋上風力発電所向けに、当社と台湾の大統海運の合弁会社が保有するアジア初のSOVが22年前半に就航します。乗組員数は50人以上で、離岸距離の遠い洋上風車を泊りがけでメンテナンスする船です。SOVに関しては、台湾だけでなく、韓国やヨーロッパなどでも事業を本格化すべく取り組んでいるところです。
――日本でSOVを展開する計画は。
日本は港湾での洋上風力が先行しているため、現状はCTV事業が中心ですが、今後はSOV関連事業を進めていきたいと考えています。
――2030年前後から洋上風力は「浮体式」が主流になるとの見方があります。
そうですね。当社はFPSO(浮体式石油・ガス生産・貯蔵・積出設備)事業をブラジルなどの地域で展開するとともに、FSRU事業にもかなり先進的に取り組んでいます。このような、海運会社として培ったノウハウや知見に基づくフローティング関連事業の強みを生かし、浮体式洋上風力に積極的に関わっていきたいと考えています。
出資先SEP船が秋田港・能代港で工事
国内初の商業ベースの大型洋上風力
SEP船保有会社への出資
イギリスのシージャックス社が洋上の風車や基礎を設置するSEP船を保有・運航しており、当社は同社に間接出資して知見を培っています。シージャックス社の「シージャックス ザラタン号」が、秋田で洋上風力発電所の風車土台の設置作業を行っています。国内初の商業ベースの大型洋上風力発電(着床式)事業として、秋田港と能代港で進められているプロジェクトです。
ケーブル敷設船事業にも注力
北海道・東北から関東に送電も
当社グループは日本の外航海運会社としては唯一、ケーブル敷設船の船舶管理と運航に従事しています。現在、KDDIグループの国際ケーブル・シップが、敷設船を2隻保有しており、当社グループ会社がそれら2隻の運航管理を受託し、通信ケーブルを敷設しています。KDDIケーブルインフィニティは、通信ケーブルだけではなく、電力ケーブルも敷設できる船です。
この船の活用を起点として、将来的には北海道や東北など洋上風力適地から海底ケーブルで関東の消費地に長距離送電する電力ケーブル敷設事業に関わることも目指しています。これが実現すれば、ケーブル敷設船事業の拡大が期待できます。
FSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)
海底ケーブル敷設船の運航管理 写真提供:国際ケーブル・シップ株式会社
グループを挙げて
洋上風力サプライチェーンに貢献
――商船三井グループとしての今後の洋上風力発電関連事業への取り組みについて教えてください。
まず「海洋コンサルティングサービス」です。洋上風力発電の基地となる基地港・拠点港において、当社グループのMOLマリン&エンジニアリングや港湾オペレーションの実績がある宇徳が、船の航行や部材の陸揚げ、保管、港湾の整備などに関するコンサルティングを担当します。
次に「海陸一貫輸送・港湾サービス」です。商船三井ドライバルク、宇徳、商船三井ロジスティクス、商船三井内航のグループ各社が、風車や基礎重量物、洋上風力設備周辺の資材などを輸送し、曳船会社であるグリーンシッピングや日本栄船がCTVサービスを提供します。
さらに「メンテナンス人材」については、当社の船員育成において40年以上のパートナーであるフィリピンのマグサイサイ社と共同して、風力発電事業のメンテナンスの外国人人材を育成し供給します。
130年以上の海での事業経験を強みに洋上風力のサプライチェーン(供給網)構築に貢献し、各プレーヤーから選ばれる存在になることが目標です。
PROFILE
商船三井 常務執行役員
鍬田博文氏
・ドライバルク営業本部 副本部長
・エネルギー・海洋事業営業本部 副本部長
・電力カーボンプロジェクト部・風力エネルギー事業部 担当
・フェリー・関連事業部 担当補佐
問い合わせ
株式会社商船三井
〒105-8688 東京都港区虎ノ門2丁目1番1号
TEL:03-3587-7117
取材・文:山村敬一
WIND JOURNAL vol.1(2021年秋号)より転載
Sponsored by 株式会社商船三井