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【商船三井】洋上風力バリューチェーンへの貢献目指す

国内海運大手として初めて2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにする目標を打ち出した商船三井の鍬田博文常務執行役員に、「商船三井グループ 環境ビジョン2.1」や洋上風力プロジェクトなどへの戦略について聞いた。

低・脱炭素事業の拡大へ総力
自社・社会のGHG排出量を削減

――GHG排出量削減の取り組みを教えてください。
当社は創業以来130年以上、海運業を営んでいます。化石燃料の油を焚いて世界の海で船を走らせていますが、GHG削減は国際的な大命題です。代替燃料を主体とした自社のGHG削減と、社会のGHG削減への貢献を同時並行で推進しなければなりません。

洋上風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの社会的ニーズが高まる中、エネルギーを輸送する会社として、水素やアンモニアといった新しいエネルギーの輸送や貯蔵というエリアにおいても、本業の海運業で培った強みを発揮していきたいと考えています。

水素やアンモニアを代替燃料として使用し、自社のGHG削減を進めるとともに、商船三井グループを挙げて低・脱炭素社会の実現に貢献すべく、洋上風力発電関連事業に取り組んでいく方針です。

経営計画で、21年度から23年度までの3年間で、低・脱炭素分野に約2000億円を投じる方針を打ち出しています。そして「商船三井グループ 環境ビジョン2.1」では、「2050年ネットゼロ・エミッション」の実現に向けて、①クリーン代替燃料の導入、②さらなる省エネ技術の導入、③効率運航の深度化、④ネットゼロを可能にするビジネスモデルの構築、⑤グループ総力を挙げた低・脱炭素事業拡大――という五つの戦略を掲げており、その戦略に合致する取り組みとして、洋上風力発電事業やアンモニア、水素といった次世代燃料領域における事業開発を推進していきます。

――洋上風力発電関連事業の取り組みについて教えてください。
すでにCTV(Crew Transfer Vessel、作業員輸送船)、SEP船(Self Elevating Platform、洋上風力発電設備設置船)、SOV(Service Operation Vessel、洋上風力メンテナンス支援船)事業には取り組んでおり、今後さらに事業領域を拡げ、競争力を高めていくことが重要です。

また海運会社である当社の強みを生かし、洋上風力の周辺事業における知名度を上げていきたいと考えています。そのためには、周辺事業での実績を積むことも重要ですが、洋上風力発電事業自体への参画を進め、事業自体の構造をより深く理解していくことも必要です。周辺事業と発電事業自体への参画は、まさに「車の両輪」の関係として、それぞれに注力していきます。

日本では「着床式」の洋上風力発電施設の適地が少なく、「浮体式」が早く広まっていくとの予測もあり、そうなれば海洋構造物の保守・メンテナンスなど、海運会社が強みを発揮できると考えています。当社は海洋事業にも注力し、特にFSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)の分野では、当社が日本唯一の保有・操業会社だと自認しています。そこで得られた知見を生かし、洋上風力バリューチェーンに貢献していきたいと考えています。

また、国内の洋上風力の基地港湾に関しては最適仕様、配置、整備、そして運用において課題が多いと認識しており、港湾に関わりの深い海運企業として、洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会との連携も含めて、課題解決に取り組んで行きたいと考えています。

中期経営計画

低・脱炭素分野に約2000億円を投資

2023年までの3年間で……
自社のGHG排出削減 910億円
社会のGHG排出削減への貢献 1140億円

商船三井グループ 環境ビジョン2.1

<中長期目標>
1.2020年代にネットゼロ・エミッション外航船の運航開始
2.2035年までに輸送のGHG排出原単位約45%削減(2019年比)
3.2050年までにネットゼロ・エミッション達成を目指す

<目標達成に向けた5つの戦略>
1.クリーン代替燃料の導入
2.さらなる省エネ技術の導入
3.効率運航の深度化
4.ネットゼロを可能にするビジネスモデル構築
5.総力を挙げた低・脱炭素事業拡大

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