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国内事例

CTV(人員輸送船)で洋上風力を支える東京汽船

洋上風力発電所の建設・O&Mに不可欠な船舶、作業要員の輸送に特化したCTV(Crew Transfer Vessel/人員輸送船)が進化を続けている。CTVのアクセス性能は、発電設備の稼働率に影響を及ぼすという。日本で最初のCTV運航会社、東京汽船の齊藤宏之社長に洋上風力にかける想いを聞いた。

メイン画像:北九州での「PORTCAT ONE」

洋上風力で働く人の
安全輸送に特化した船舶

洋上風力発電所を建設し、運用・維持管理(O&M)していくためには、それぞれの業務に特化した各種船舶の存在が欠かせない。なかでも、洋上のサイトまで“人”を運ぶことを主要業務とするCTV(Crew Transfer Vessel/人員輸送船)は、すべての作業の根幹を支える船舶といって良い。CTVはアクセス船とも称され、サイトと基地港を頻繁に往復する。洋上風力の現場に携わる人たちにとって、なくてはならない交通船の役割を果たしている。

CTVは、厳しい気象海象条件のもとでも安全・確実に、人員を洋上の設備へ乗降させ得るものでなくてはならない。とくにメンテナンスや修繕のタイミングは、必ずしも静穏な海象条件とは限らないので、高い波高の下でも安全に洋上風車にアクセスする必要がある。今日、CTVのほとんどが双胴船型となっているのはそのためだ。

CTVの性能・出動可能率は、建設作業の進捗や風車の稼働率に大きく影響する。船そのものの性能とともに、それを運航する会社の能力や経験が問われるところでもある。

2013年、福島沖の
浮体式実証研究から始まった


福島浮体式洋上風力で初めて使われたCTV「JCAT ONE」

日本におけるCTVの使用は、2013年12月、福島浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業から始まった。ここでは、東京汽船が大型船舶型CTV「JCAT ONE(ジェーキャットワン)」を運航した。JCAT ONEは、福島県・小名浜港と福島県沖に設置された洋上風力発電設備(風力発電浮体およびサブステーション)との間で、同施設のO&M要員を送迎・乗降させる役割を担った。

JCAT ONEは、オランダで建造された新造船として導入されたアルミ製の双胴船で、当時の欧州の標準的CTVの仕様を持ち、洋上風力発電施設への接舷性能に優れ、高波浪状況下でも安全かつ速やかにO&M要員を乗降させた。

2016年1月からは、銚子沖着床式洋上風力発電実証事業において、日本国内で初めて開発・建造されたCTV「PORTCAT ONE(ポートキャットワン)」が使用された。PORTCAT ONEも東京汽船が運航する交通船で、小型船舶型(国内総トン20トン未満)のCTVとして、低コストでの運航が可能となっている。港湾あるいは岸壁から近い距離に建設される洋上風力発電施設へのアクセスに適している。現在は、北九州のバージ型浮体式洋上風力発電の実証事業で使われている。

東京汽船は、なぜ
CTVを始めたのか

東京汽船はCTVのトップランナーであり、上述の通り、洋上風力発電の実証研究段階から、これに関わってきた。現在、秋田港・能代港沖で建設が進む国内初となる商業ベースでの大規模洋上風力発電が建設中である。東京汽船のCTV4隻(4月から5隻)と同社と地元との合弁会社のCTV2隻が運航されている。日本の洋上風力発電の歩みには、つねに同社のCTVが重要な役割を果たしているようだ。

同社代表取締役社長の齊藤宏之氏は、洋上風力発電向けCTV事業への取り組みについて次のように話す。

「当社は1947年の設立以来、曳船(タグボート)事業を中心に、水先艇、交通船、観光船、カーフェリー運航など、海上での船舶の安全運航サポートと人の安全輸送を支援する様々な事業に取り組んでまいりました。洋上風力の現場で働くエンジニアや作業員の皆さんを安全に送迎することがミッションとなるCTV事業は、公共的で既存の事業とも親和性が高く、『海上安全のサポート』という社是にもピッタリです。

もちろん、脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大に貢献するというところも共感を持って行える事業です。

そして、船の種類自体も、サイズやエンジニアリング面において、これまで扱っていたものに近く、培ってきたノウハウを活かしていけると考えました。早くからヨーロッパの洋上風力関係者と交流し、調査を進めていたのですが、2013年に福島の浮体式洋上風力事業に関わって以来、日本各地で様々な経験を積ませていただき、今日ではCTVについて多くの知見を蓄積するに至っております。船の構造や性能はもちろん、海象条件との関係や運航ノウハウについても、この間の経験から得たものは大きいです。引き続き学習を重ね、日本の洋上風力発電の発展に貢献したいと考えます」。

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