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全漁連が国に要望書を提出「EEZ内への洋上風車設置で漁業とのすみ分けを」

全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長と大日本水産会の枝元真徹会長は6月13日、経済産業省を訪問し、排他的経済水域(EEZ)への洋上風車設置の全体像の提示と漁業とのすみ分けを求める要望書を提出した。

メイン画像:武藤経済産業大臣への要望(出典 全漁連)

<目次>
1.EEZ内設置に向け改正法が成立
2.EEZ内への設置の全体像提示と漁業とのすみ分けを要望
3.事業者が出資する基金の設置を要望

 

EEZ内設置に向け
改正法が成立

日本の領海等概念図(出典 海上保安庁海洋情報部)

日本の排他的経済水域(EEZ)内に洋上風力発電設備の設置を可能にする改正法が6月3日の衆院本会議で、与党と立憲民主党などの賛成多数で可決、成立した。これにより、設置海域を領海内に限っていた洋上風力発電の導入拡大が可能になる。日本の領海面積は約43万㎢だが、EEZを含めると約447万㎢と、設置可能なエリアが最大10倍に増える。

要望書では、漁業団体としても、2050 年のカーボンニュートラルという目標を達成し、持続可能な社会・経済を実現するために、洋上風力発電の導入が重要であると認識しており、今回の再エネ法改正に異を唱えるものではないが、多くの漁業者が発電施設の設置により漁業操業に支障が生じるのではないかとの不安を感じているところである。排他的経済水域を含む沖合域においては、まき網、底曳き、はえ縄、いか釣りなど、さまざまな漁業が営まれている。これらの漁業にとって、風力発電施設の設置は、操業に対する直接的な障害となり、空間的に共存することはできないことから、発電施設と漁場をすみ分ける必要がある。また、空間的にすみ分けがなされても、沖合での施設設置により沖合漁業への影響だけでなく沿岸への魚類の回遊変化に加え、発電施設による洋上での無線通信用電波障害が発生するおそれもあり、海底送電線の整備や陸揚げなど、沿岸域での工事も想定されるなか、沿岸漁業や内水面漁業に影響が及ぶ可能性があるとしている。

EEZ内への設置の全体像提示と
漁業とのすみ分けを要望


坂井内閣府特命担当大臣への要望(出典 全漁連)

そのうえで、「風力発電施設設置の全体像の提示と漁業とのすみ分け」、「事前調査とモニタリングの実施」、「不測の事態への対応」を求める要望書を武藤経済産業大臣と坂井内閣府特命担当大臣に提出した。このなかで「風力発電施設設置の全体像の提示と漁業とのすみ分け」については、洋上風力発電施設と漁業操業は空間的に共存できないことから、あらかじめ漁業の操業実態などを調査し、「漁業に明白な支障が及ぶ」と認められる区域を募集区域から除外することにより、風力発電事業と漁業をすみ分けることが重要である。経産省においても、洋上風力発電事業の実施に関する気象、海象データ等風力発電施設設置の指標となるような情報を公表のうえ、政府主導で漁業と発電事業のすみ分けのための調整を図ることを要望している。

事業者が出資する
基金の設置を要望

領海・排他的経済水域等模式図(出典 海上保安庁海洋情報部)

さらに、排他的経済水域で操業している沖合漁業のなかには広域で操業する漁業や海域を大きく移動し、複数の漁場で操業している漁業もあることから、漁業者との調整においては、洋上風力発電事業の全体像(施設設置の規模、設置の可能性のある海域等)を提示していただくことが必須であり、早急に全体像を示していただくことを併せて要望している。

また、「不測の事態への対応」として全漁連では、漁業に悪影響が生じたと見込まれる場合に関係漁業者を救済・支援するため、漁業協調策とは別に、事業者が出資する基金の設置などの仕組みを創設することを要望している。

DATA

再エネ海域利用法の改正に係る要請について


取材・文/高橋健一

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