北海道檜山沖、漁業影響調査や漁業振興策の案を次回以降の協議会で公表
2024/07/22
北海道檜山沖の第2回法定協議会が今月22日に開催された。地元の合意形成が課題となるなか、漁業影響調査の考え⽅や漁業振興策の案を、次回以降の協議会で公表する方針が事務局側から示された。
檜山沖
4事業体が計画公表
北海道檜山沖の風況(出典 経済産業省)
北海道檜山沖は、せたな町、八雲町、江差町、上ノ国町の4町の沖合の海域。檜山沖の第2回法定協議会が今月22日に江差町のホテルニューえさしで開かれた。法定協議会のメンバーは、経産省や国交省、北海道のほか、せたな町、八雲町、江差町、上ノ国町、漁協関係者などで構成される。
経産省によると、檜山沖の事業想定エリアは乙部町を除くせたな町から上ノ国町までの沿岸部で、出力規模は約91~114万kW。檜山沖では、これまでに電源開発が72万2000kW、東京電力リニューアブルパワーが135万kW、コスモエコパワーが100万kW、昨年11月には北海道洋上風力開発合同会社が150万kWの事業計画を公表し、環境アセスメントや海底地盤調査などを進めている。
近隣の4町長が
オブザーバーで協議会参加
22日の法定協議会では、近隣の厚沢部町、今金町、奥尻町、乙部町の4つの自治体の町長をオブザーバーとして参加を求めることが了承された。そのあと、専門家から「洋上⾵⼒発電による漁業影響と調査事例」、「⻑崎県五島市沖洋上⾵⼒発電事業漁業影響調査」、「⻑崎県五島市沖洋上⾵⼒発電事業漁業影響調査」、「気象庁の沿岸波浪観測」、「洋上⾵⼒発電による地域・漁業振興策事例」について報告があった。
防衛省からは、檜山沖のごく一部の区域が、航空自衛隊奥尻島分屯基地(奥尻町)と航空自衛隊大湊分屯基地(青森県むつ市)の通信に影響を及ぼす恐れがあるので、発電事業を計画する際は、洋上風車が自衛隊の活動に影響がないこと確実に担保していただく必要があると述べた。
漁業影響調査や漁業振興策の案を
次回以降の協議会で公表
北海道江差町沖
続いて、北海道経済部風力担当局長の西岡孝一郎氏が、今年1月に漁業関係者や地域住⺠向けの勉強会を開催したほか、7月には北海道檜⼭振興局が主催して管内の経済団体などに向けて勉強会を開催したことを報告した。
そのうえで、西岡氏は「漁業影響調査の考え⽅や漁業振興策の検討については、法定協議会とは別に、ひやま漁協を中⼼とした協議会の関係者から意⾒を聴取し、事務局で案を作成したい。地域が⽬指すべき将来像、地域振興策の検討においても、法定協議会とは別に、⾃治体中⼼の任意の会議体を設置して議論を進め、事務局で案を作成したい」と述べた。事務局では、次回以降の協議会で、それぞれの案を公表する考えだ。
江差町の照井町長
「北海道が調整役をつとめてほしい」
江差町の照井誉之介町長は、「設置海域の境界や固定資産税の配分のあり方については、北海道庁がイニシアチブを発揮して調整役をつとめてほしい」と要望した。
上ノ国町の工藤昇町長は、「発電事業者からの出捐金を、操業開始前に拠出していただくことはできるのか。われわれは発電事業者が進める地域振興策に期待して、事業を検討することに同意した。基金への拠出の時期をできるだけ早めてほしい」と述べた。
ひやま漁業協同組合の工藤幸博組合長は、「いろいろな問題があるが、発電事業者が決まらなければ、具体的なことが進まない。今年度中に法定協議会で意見集約して、発電事業者の公募手続きを開始してもらいたい」と訴えた。
せたな町の高橋貞光町長は、「影響が上回る大きな効果があると実感した。次回の協議会で課題が整理されることを期待している」と話した。
昨年12月に初会合を開いたあと、法定協議会がなかなか開催されないため、関係者のあいだでは不安の声があがっていた。第2回法定協議会は、初会合から7ヶ月以上を経過して開催された。事業の実施が確実となる促進区域への指定に向けて、地元の漁業者などの合意形成を、どのように進めていくのかが大きな課題となっている。
DATA
取材・文/高橋健一