脱炭素化の鍵は浮体式洋上風力? 日揮や戸田建設など6社が、懇談会を発足
2022/02/03
日揮や戸田建設など6社が、日本で浮体式洋上風力市場の発展を促そうと「浮体式洋上風力発電推進懇談会」を立ち上げた。同懇談会によると、浮体式は日本の脱炭素化を実現する「鍵」だという。その理由を、同懇談会の提言を元に解説する。
浮体式を推進する懇談会が発足
市場発展に向けた提言も
洋上風力発電には、大きく分けて、海底に固定した基礎に風車を設置する「着床式」と、海上に浮かぶ浮体構造物に風車を設置する「浮体式」の2種類がある。この浮体式を日本でも推進しようと、日揮、戸田建設(※)、住友商事グローバルメタルズ、シェルジャパン、エクイノール(ノルウェー)、OW Ocean Winds(スペイン)の6社が2021年9月、「浮体式洋上風力発電推進懇談会」を発足した。
実用化が進んでいるのは着床式だが、同懇談会は「(着床式とともに)浮体式も並行して開発を進めることで、2050年カーボンニュートラルの早期達成に大きく貢献することができる」と訴える。
浮体式の技術は、主に欧州の洋上石油・ガス産業を基盤として確立されている。日本で浮体式産業を形成することは、国内の建築業や造船業、鋼鉄業などの発展、さらに地域の雇用創出につながり、グリーン成長を実現するものだという。
同懇談会では、以下の3つの提言を発表している。
浮体式市場の発展に向けた提言
1.浮体式の2030年2~3GWおよび中長期導入の設定
2.大規模かつ国内産業発展を実現する戦略的な開発計画の推進
3.魅力的な浮体式の事業環境整備に向けた議論の加速化
なぜ日本には浮体式が必要なのか?
日本海域の可能性を考える
一般的に、着床式の適地は水深60m未満の海域、つまり比較的岸に近い海域とされている。一方、水深60mを超える場合は、浮体式にコスト優位性があるとされている。
日本風力発電協会の推計をみると、日本の周辺海域は急峻な海底地形であるため、浮体式のポテンシャルが大きいという。加えて、浮体式を設置できる沖合は風が強いため、発電の面からみても浮体式に利点があることがわかる。
また、環境省が実施した調査によると、EEZ(排他的経済水域)を含む水深200m未満の海域におけるポテンシャルは、離岸距離30km以内に限定された場合のポテンシャルの3倍に拡大すると試算されている。
日本という地の利を活かせる発電、その一つが浮体式なのかもしれない。今後の動きに注目だ。
※戸田建設は、2016年に国内で初めて浮体式洋上風力発電を実用化し、2MW級の商用運転を続けている。
DATA
浮体式洋上風力発電推進懇談会「日本の浮体式洋上風力発電に対する期待と展望」