日本風力発電協会、情報開示と評価比重の見直しを提言。洋上風力ラウンド1を受けて
2022/04/08
洋上風力ラウンド1の選定結果が発表されたことを受けて、日本風力発電協会(JWPA)はこのほど「今後の占用公募制度がより効果的・効率的な仕組みとなるように」との考えから提言を取りまとめ、経済産業省資源エネルギー庁、国土交通省港湾局、および経済産業省製造産業局に提出した。
JWPA提言の要旨(同提言から抜粋、一部文体を修正)
洋上風力発電事業者の選定結果を踏まえた今後の公募に向けて
この提言の趣旨
ラウンド1の結果は洋上風力発電の秘めた実力が現れたものであり、官民共通した目標であるコスト低減の達成に向けて大きく前進できたと受け止めております。洋上風力発電の導入拡大に伴う新たな産業の創出や地域活性化等が、国民負担の抑制に寄与するコスト低減目標の達成とともに、洋上風力発電に期待されている経済・産業政策であるとの認識のもと、今後の公募がこれら目標等を実現させるための、より効果的、効率的な仕組みとなるようにとの考えから、当協会の見解を下記の通り申し述べさせていただきます。
業界内の疑問・懸念
● 発表されたのは評価結果の点数だけであり、評価がどのように行われたのか不明。今後の公募の参考となるように評価内容詳細の公表・開示を求めたい。
● 事前Q&Aからは、運転開始予定時期は早い方が高く評価されるように理解していたが、運転開始予定時期の遅い案件が選定されたようである。運転開始予定時期は評価の対象になっていたのか。
● 今回の公募では、評価の配点は価格点と非価格点を1:1 とするとの説明であったが、結果を見ると実質的に価格点が圧倒的な比重を占める実態が明らかとなった。これでは地元との協調・共生という発電事業の実施に重要な点を軽視する結果になりかねないことを懸念する。さらにこの結果は、価格さえ安ければ落札できると言った誤ったメッセージを関係者や業界に与える結果となっている。
● 選定事業者の価格は圧倒的に低い価格であった。最初からこの価格レベルとなると、日本には基盤が整っていない関連産業の採用・育成やサプライチェーン構築に支障を来たすことが懸念される。
今後の公募に向けて
1)適切な情報開示
ラウンド1の評価の経緯やポイントなどについて、可能な限り詳しく公表・開示して各事業者や関係者の理解を深めさせ、今後のより透明性の高い公募の実現を目指すのが適切と考える。
● 具体的には、今後の公募の参考となるように、事業の実現性に関する「確認の視点と確認方法に基づいた講評」を開示いただくべき。
● また、ラウンド1の結果を総括いただき、当初の目的であった1:1 の評価点配分を実現するために、評価点の配分や項目の重要度・優先度などの見直しを行っていただきたい。
● 加えて、ラウンド1の結果を洋上風力関連事業者(発電事業者、風車および機器・基礎・ケーブル製造業者、建設工事業者、O&M事業者)および地元地域の利害関係者がどのように受け止めているのかをつぶさに把握し、今後の公募の遂行や新たな案件の形成に役立てるべき。内外の例を参考に、ラウンド1に係る関係各方面に向けて理解度調査および広報を行うのが良いと考える。
2)供給価格と事業実現性の評価点の配分
● ラウンド1における評価基準の基本的方針は、供給価格120点+事業実現性120点=合計240点の配分とされていたが、今回の結果からは、供給価格の評価が選定事業者の決定要因になったものと受け止めている。
● 現行の評価方法は、入札価格の最も低い応募事業者が120点満点を獲得できる評価となっている一方で、事業実現性に関する評価項目については項目ごとに5段階の階層を設けて採点し、応募した計画が相対的に評価される方式となっており、価格と事業実現性の配点は1:1とすることとされていたものの、実質的には価格に重点が置かれた評価により事業者が選定される結果になった。
● 今後、例えば下記のようなアイディアも踏まえ具体的かつ建設的な協議をさせていただけるとありがたい。
【案①】「最低入札価格」を「評価後最低価格」に
提出された価格が適正な価格なのか、事業の実施能力と整合した評価(各応募事業者のレベリング)が必要。これにより、各応募事業者が入札した表面価格ではなく実質的に正当に評価された価格の比較が可能になる。例えば、入札価格に対し、事業実現性に関する評価における重要な要素(例:運転開始予定時期等)を反映した価格(評価後最低価格)で評価を行うこと等が考えられる。
【案②】価格120点、事業実現性120点の配点
価格と事業実現性の配点については、当初の目論見通りセントラル方式が公募に適用されるまでは実質的に1:1 を確保することが肝要。例えば、事業実現性に関する得点は各項目の総和とせず、各項目の総和の最多得点者が満点:120点を獲得できることとし、次点以降の得点は「提案者の総和/最多得点者の総和)×120点」に見直す等(価格点と同じ方式の採用)。この場合には両分野ともトップが120点を獲得することになり、1:1 の原則が守られることになる。
【案③】事業実現性についての評価の手順
地元利害関係者が協調・共生の観点から複数の者(3~4応募者)を選び(ショートリスト)、その選ばれた者の応募計画における事業実現性の評価・採点を行い、価格点と合算する方法が考えられる。
3)セントラル方式の早期実現
● 各応募事業者にとって精度の高い競争力ある見積が可能となるよう、公募に際しては、国等が調査を実施し管理するデータ(風況、気象・海象、海底地盤、環境アセスメントに必要な情報、漁業の実態等)、および国による確保済の系統(系統容量、各応募事業者にとって経済合理性ある連系点)を提供いただくセントラル方式の適用をできるだけ早期に実現いただきたい。これが実現すれば、各応募事業者の入札価格に重点を置いた評価方式、配点見直し等の検討が可能になることはご既承の通り。具体的な適用開始時期と、数年先までの具体的な公募案件の計画を公表していただきたい。
● なお、今後の公募対象となる海域については、既に発電事業者は独自調査を始めているところがあることはご既承の通り。セントラル方式への移行に当たっては、適切な経過期間を設定して必要な経過措置を講じていただきたい。
出典:日本風力発電協会 2022年3月3日発表 洋上風力発電事業者の選定結果を踏まえた今後の公募に向けて(提言)
WIND JOURNAL vol.2(2022年春号)より転載