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山形県酒田市沖 有望な区域目指して国へ情報提供

山形県酒田市沖への洋上風力発電の導入可能性を検討する酒田沿岸域検討部会は3月2日、同市沖の南北約22キロのエリアを想定海域にして、再エネ海域利用法に基づく「有望な区域」に選定されることを目指し、国に情報提供を行う方針を決めた。

南北約22キロを
想定海域に


酒田市沖の想定海域(出典 山形県)

山形県は、地元の漁業関係者や商工関係者などで構成される酒田沿岸域検討部会を立ち上げ、事業化した場合に洋上風車を設置する想定海域について、船舶通航量や酒田港の港湾区域、庄内空港の航空制限区域などとともに、海域を利用している漁業者の意見を聞いて検討を重ねてきた。3月2日の第4回検討部会では、今年1月に示された想定海域案を了承した。酒田市沖の想定海域は、2021年9月に「有望な区域」に選定されている遊佐町沖の想定海域と北側が接続し、南側は酒田と鶴岡の市境までの南北約22キロ、沖合は水深40~49メートルまでの4~5キロのエリア。大型の船の航行もある港湾エリアの防波堤内を除いた海共第2号共同漁業権漁場の海域と重なっている。

2日の検討部会では、再エネ海域利用法に基づく「有望な区域」に選定されることを目指し、国へ情報提供する内容を▽年間の平均風速がおおむね 7.5メートル以上あり、風況が良好である▽海底地盤は水深 45メートル未満が約 97パーセント、最も深い箇所の水深は約 49メートルで、岩盤が露出している箇所は確認されておらず、堆積土性状は、細粒分層と砂質土層の互層である▽最大の利害関係者である山形県漁業協同組合から提示のあった海域であり、検討を行うことについて理解が得られている▽地元の酒田市から、再エネ海域利用法に基づく一般海域の「促進区域」の早期指定に向けた取り組み促進の要望が出されているなどとすることを確認した。

5月上旬までに
国へ情報提供

検討部会を存続させて議論を重ねる方針

これまでの議論で、地元の漁協の代表からは「当漁協は、漁業者の生業の場である漁場や、伝統的に漁獲してきた魚は大切に守っていく必要があると考える一方で、海は国有財産であり、みんなのものであるため、漁業者は常に風が吹く海の環境を活用した国や県の施策と向き合うことも、漁業や漁村地域との協調や共生のうえで重要と認識している」「資源量や漁師、漁業従事者が減少するなかで、これまで地域で行われてきた漁業を持続可能なものとし成長産業とする可能性があるのであれば、共生の道を探りたい」「漁業者が了承する内容であれば前に進み、異を唱えたならば一旦止まり検討するというのが当漁協理事会の意思である」といった意見が出された。学識経験者からは「庄内の海岸線は可視範囲が広いため、洋上風車がどこに建ってもどこからでも見えることから影響は大きいと言える」「早い段階から景観の議論ができるのかどうかを危惧している」といった指摘もあった。住民の代表からは「漁業者がどうなるのか、渡り鳥や電波障害、地下水脈、景観への影響などについて、ひとつひとつ丁寧な説明があれば、不安が払しょくされるのではないか」「専門家の話も聞きながら、もう少し丁寧に進めてもらえればよかった」といった要望が出された。

山形県では、3月27日に開催される山形県地域協調型洋上風力発電研究・検討会議に、これまでの検討結果と今後のスケジュールを報告し、5月上旬までに国へ情報提供する方針。酒田市沖が「有望な区域」に選定されると、「促進区域」への指定に向けて法定協議会が設置されるが、2日の検討部会では遊佐と同様に酒田の部会も継続して開催し、地元の意見を法定協議会での議論に反映させていくことを申し合わせた。

DATA

山形県ホームページ


取材・文/高橋健一

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