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洋上風力市町村連絡協議会、国への要望事項を意見集約へ。第2回総会で決定

洋上風力発電が立地する自治体や立地予定の自治体などでつくる、全国洋上風力発電市町村連絡協議会の本年度総会が7月12日、長崎県五島市で開かれた。国への要望活動の実施に向け、「セントラル方式」の制度設計を早期に進めることなどについて意見集約を図ることを決めた。

全国から16自治体が参加
協力して洋上風力発電を推進

全国洋上風力発電市町村連絡協議会は、青森、秋田、山形、千葉、新潟、福岡、長崎各県の計11市5町で構成され、今年度新たに青森県深浦町、秋田県秋田市、千葉県九十九里町、新潟県村上市、胎内市の5市町が加わった。協議会は2022年7月、洋上風力発電が立地する自治体や立地予定の自治体が一致協力してさまざまなことに取り組むことを目的に設立されたが、事業の実施段階やそれぞれの自治体が直面する課題の違いなどによって、国への要望事項が多岐にわたっているのが現状だ。(参考:洋上風力「促進区域」の8市町が協議会、「漁業との共生」や雇用・地域経済発展に期待 2022年8月


(全国洋上風力発電市町村連絡協議会総会であいさつする秋田県能代市の齊藤滋宣市長。筆者撮影)

7月12日に長崎県五島市で開かれた第2回目の総会では、発起人で会長を務める秋田県能代市の齊藤滋宣市長が「2050年カーボンニュートラルの主役を担うのは洋上風力発電。我々にはその期待に応えていく責務がある。全国の自治体と力を合わせて進めていきたい」とあいさつした。


(今回の開催地である長崎県五島市の野口市太郎市長。協議会の副会長を務める。筆者撮影)

副会長を務める五島市の野口市太郎市長は「洋上風力発電事業は誰にとっても初めての取り組み。それぞれの段階において必ずわからないことが出てくる。この協議会をその相談の場として活用してほしい」と述べた。また、五島市で浮体式洋上風力発電の建造が進んでいることを受けて「今後、浮体式が沿岸から沖合、EEZに設置されることになれば、漁業者との調整などにおいて、県や市町村だけでなく国のさらなる協力が必要になる」と指摘した。

国への要望に向け意見集約
都道府県との連携の重要性も確認

総会では、事業計画が進む着床式の洋上風力発電に加え、沖合での浮体式も念頭に、国への要望活動の実施に向けて大きく2つの項目について意見集約を図っていくことを決めた。ひとつ目は、洋上風力発電を電源立地地域交付金制度の対象とすること。2つ目は、浮体式の導入拡大に向け、案件形成の初期段階から国が関与する「セントラル方式」の制度設計を早期に進め、海域を利用する利害関係者と良好な関係を構築することだ。なかでも、洋上風力発電を電源立地地域交付金制度の対象とすることについては、参加する自治体のなかでも意見が分かれている。今後はまず、担当者レベルで意見交換を進め、最終的な意見の集約を図っていく方針。


(新しく加入した新潟県胎内市の井畑明彦市長。筆者撮影)

総会の決議を受け、新たに協議会に加入した新潟県胎内市の井畑明彦市長は「浮体式の設置海域が複数の自治体にまたがる場合、漁業者を含むステークホルダーとの調整や出捐金の割り振りなど、都道府県に調整役を担ってもらいたい。国や県の責任あるコミットメントを求めていくことが重要」と述べた。


(翌日の13日は、海上タクシーで浮体式洋上風力発電『はえんかぜ』を見学した。筆者撮影)

さらに、総会では、協議会の活動に賛同する全国の自治体・団体に対して積極的な入会案内をするとともに、会員への情報発信に取り組むことも決めた。翌13日には、総会の出席者が海上タクシーで五島市の浮体式洋上風力発電設備「はえんかぜ」を視察した。

協議会の齊藤会長は「洋上風力発電事業は、今後の地域活性化において大きなウェイトを占める事業。各市町村が存分に洋上風力発電を活用しながら地域の発展を実現できるように、意見をしっかりとりまとめていきたい」と述べ、洋上風力発電を地域振興につなげるため、参加する自治体の意思統一を図っていく必要性を強調した。


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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