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北海道松前沖の法定協初会合「漁業と地域、発電事業者の共存共栄を」

北海道松前町で11月13日、同町沖の法定協議会初会合が開かれた。漁業関係者から不安の声も出されたが、漁業影響調査や地域振興策について納得のいくまで議論を尽くすことを申し合わせた。

納得のいくまで
議論を重ねる

案件形成から促進区域指定・事業者公募までの流れ(出典 経済産業省)

案件形成から促進区域指定・事業者公募までの流れ(出典 経済産業省)

松前沖の法定協議会は、経産省や国交省、北海道のほか、松前町、松前さくら漁協、学識経験者などで構成される。13日の初会合では、北海道の土屋俊亮副知事が「道内で初めて法定協が開催されたが、何よりも地元の方々の理解が大切だと考えている。結論ありきではなく、地域のみなさまが納得のいくまで議論を尽くしていただくことが重要だと考えている」とあいさつした。

会議では、最初に事務局が再エネ海域利用法の概要や促進区域の指定基準、ほかの区域の法定協の進捗などについて説明した。経産省によると、松前沖の風車設置検討範囲は折戸浜沖から原口沖までの約23㎢。海岸から2㎞以内の水深10m~50mのエリアを設置可能な海域としている。最大出力は31万5000kW。1万kWの風車が25基、1万5000kWの風車であれば21基を設置することが想定されている。

松前町の若狭智弘副町長は、「漁業や地域と共存共栄することが何よりも大切だと考えている。そのためにも、漁業影響調査を長期にわたって続けていただきたい。松前町は昨年8月に、地域と共生した持続可能な洋上風力発電の推進に関する決議を採択している。事業者においては、地域の理解促進に取り組むとともに、適切な影響調査や新たな漁場創出などによる漁業等の既存産業との共存に努めること。併せて、地域の景観や生態系、住民生活への影響にも配慮することを要望する。設置工事期間中は、町内に最大限の経済的な恩恵が生じるように配慮していただきたい。さらに、地元の松前港をメンテナンス拠点港として活用することについても検討していただきたい」と要望した。

ヤリイカ漁の期間は
工事中止を求める

北海道松前沖の風車設置検討範囲(出典 経済産業省)

北海道松前沖の風車設置検討範囲(出典 経済産業省)

松前さくら漁業協同組合の吉田直樹組合長は、「有望な区域に選定されたエリアには、漁場が点在している。なかでも水深30mより浅いエリアは、ヤリイカ漁が盛んで、コンブ養殖も行われている。また、有望な区域のなかには8つの漁港がある。漁船が安全に航行できる航路の確保をお願いしたい。風車建設箇所の選定にあたっては、漁業者の意向を十分に汲み入れて、漁業と地域、発電事業者が共存共栄できるようにご配慮をお願いしたい」と述べた。

松前さくら漁業協同組合の副組合長で漁業者の竹幸一さんは、「洋上風力によってリスクを抱えるのは、われわれ漁業者だ。洋上風車の風切り音や振動によって魚が寄りつかなくなるのではないか、風車の設置によって潮の流れが変わり、いままで通りの場所で漁ができるのか。魚種にとっては洋上風車のすぐ近くで漁を行うことも考えられる。その時、低周波音の健康被害はないのか。松前沖では、毎年3月から5月いっぱい、ヤリイカ漁が行われる。洋上風車と漁場が近いため、3月から5月までは工事を中止していただきたい」と話した。

この地域特有の
漁業影響調査の実施を

経済産業省風力対策室の石井孝裕室長は、「ヤリイカをはじめとするこの地域特有の魚種を踏まえた漁業影響調査を実施することが大事だと考えている。しっかりと議論をして、この地域にマッチした調査手法をまとめていく必要がある。そのためにも、洋上風車を設置してはいけないエリアや、工事を実施してはいけない期間を明確にしていきたい。低周波音と振動については、次回以降に環境省などの関係省庁から説明するようにしたい」と回答した。

座長をつとめる足利大学の牛山泉名誉教授は、「しっかりと議論を重ねて、松前モデルと呼ばれるような先進的な地域にできたらと考えている」と述べた。今後の協議会では、漁業影響調査の手法について議論する実務者会議の設置を検討する。風車設置後の景観についても、国と北海道、松前町が連携してどのような方法を導入すればイメージしやすいのかを検討していくことにしている。

DATA

北海道松前沖 第1回法定協議会


取材・文/高橋健一

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