環境省 脱炭素先行地域に9地域を追加選定。全国82地域に
2024/10/03
環境省は9月27日、二酸化炭素の排出削減をほかの地域にさきがけて進める「脱炭素先行地域」として8道県9地域を新たに選定した。過去4回の募集と合わせて38道府県82地域となった。次回の募集開始時期は未定。
過去4回の募集で
36道府県74地域を選定
地域脱炭素のロードマップ(出典 環境省)
政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。脱炭素先行地域は、政府目標を前倒しして2030年度までの脱炭素化実現を目指す。これまでに4回の募集を行い、全国36道府県95市町村の74 地域(第1回:26 地域、第2回:20 地域、第3回:16 地域、第4回:12 地域)を選定している。
環境省は、第3回の募集から主たる提案者が地方公共団体であることに加え、計画の実現性を高めるため民間事業者などとの共同提案が必須となった。その結果、エネルギー事業会社や送配電事業会社、施工業者、地域金融機関などと連携が強化され、提案の具体性、関係者との合意形成、事業性の熟度が高い計画提案が多くみられるようになっている。
第5回募集は
先進性やモデル性を重視
第5回の募集は、6月17日から6月28日まで行われた。第3回の募集から「重点選定モデル」が新設され、第4回では5つのモデルに沿った提案を優先的に選定した。第5回の募集では、重点選定モデルを取りやめ、脱炭素先行地域の選定要件として、(1)先進性、モデル性(2)地域経済循環への貢献、(3)事業性、(4)取り組みの規模・効果および電力需要における自家消費率・地産地消率、(5)再エネ設備の導入および、その確実性(6)需要家・供給事業者・関係者との合意形成、(7)地域の将来ビジョンとの整合性の7つの項目を掲げている。
過去4回の募集で、選定されていない都道府県は、東京都、山形県、石川県、三重県、和歌山県、広島県、徳島県、香川県、愛媛県、大分県、佐賀県の11都県。環境省では、選定されていない11都県に、積極的な応募を呼びかけてきた。
新たに8道県9地域が
脱炭素先行地域に
新たに脱炭素先行地域に選定された8道県の9地域(出典 環境省)
第5回の募集で脱炭素先行地域に選定されたのは、北海道厚沢部町、岩手県陸前高田市、釜石市と岩手県、三重県度会町など6町、兵庫県神戸市、広島県と東広島市、山口県下関市、福岡県福岡市、長崎県五島市の合わせて8道県、9地域。このうち、三重県と広島県では、初めて脱炭素先行地域が選定された。この結果、全国38道府県の82地域が冊炭素先行地域になった。次回の募集開始時期は未定。
北海道厚沢部町は、風で循環させる世界一素敵な過疎のまち厚沢部、国産中型風力発電×地域共生モデル事業を展開する。岩手県陸前高田市は、脱炭素と資源循環で実現する
農林水産業振興、復興の先の創造的産業振興モデルを目指している。三重県度会町など6町は、地域連携で人材や資金を呼び込む!中山間地域一体の脱炭素・資源循環プロジェクトを推進する。長崎県五島市は、系統混雑エリアへ再エネ導入をさらに進める「地域アグリゲータ」モデル、出力制御を地域全体でマネジメントを目標に掲げている。
これまでにない
先進性・モデル性がある提案を
脱炭素先行地域の選定状況(出典 環境省)
脱炭素先行地域に選ばれた地域には、1自治体あたり5年間で最大50億円が交付される。環境省は、2025年度までに少なくとも100地域を選び、再生エネやEVの導入などを集中的に支援する。環境省の脱炭素先行地域評価委員会は、「今後も2025 年度
までに少なくとも100 ヶ所の選定を念頭に、募集・選定が継続されるが、新規・再チャレンジを問わず、次の応募を検討している地方公共団体及びその共同提案者におかれては、これまでに選定された提案を参考にしていただきたい。過去5回の応募で、多様な 82提案が既に選定されていることから、すでに選定された計画を分析・とりまとめた『先進性・モデル性についての類型』や既選定の計画内容を吟味していただきい。併せて、重点対策加速化事業についても先進性・モデル性の観点で参考になる高い水準の取り組みが多くあることから、本取り組みについても参考にしていただきたい。そのうえで、これまでにない先進性・モデル性がある提案を期待したい」としている。
脱炭素先行地域評価委員会は、さらに「コンサルティング事業者を含む事業者などからの提案を地域脱炭素政策として精査せず、そのまま計画提案としたようなものも引き続き散見された。本委員会としては、地方公共団体が、自らの計画として強いオーナーシップを持ち、自覚と責任を持って主体的に取り組む提案を評価していきたい。今後選定される提案は事業実施期間が短くなることから、再エネ導入に際しては計画提案段階でFS 調査や系統連系協議、需要家や地域住民、関係者、議会等との合意形成などを確実に実施するとともに、事業性を含め実現可能性を深く追求したもの、さらには既に取り組みが動き出しているものをさらに評価していきたい。例えば、共同提案するステークホルダー(の一部)との、地域脱炭素に関連する取り組み実績に基づいた計画提案が望ましい。特に多種多様な再エネを導入する場合は、再エネの種別ごとにしっかりと実現可能性や事業性について検討することを求めたい。また、需要家については、計画提案段階で関係者との合意形成を一定程度以上確実に行っていただきたい」としている。
DATA
取材・文/高橋健一