青森県がGXでしごとづくりを推進、風力発電をテーマに新たなプロジェクト
2025/07/22

青森県は、グリーン・トランスフォーメーション(GX)を進めることによって、産業振興と雇用拡大を目指す「GX 青森」に取り組む方針だ。その手始めとして6月23日に、風力発電関連の企業誘致などを推進する新たなプロジェクトを立ち上げた。
県内での雇用創出で
GX分野に期待
GX青森の施策内容を説明する宮下宗一郎知事(出典 青森県)
青森県の宮下宗一郎知事は今年2月、定例県議会の提案説明で、政策テーマの第一を「しごと」と位置づけ、その目玉となる施策を『GX青森』の推進とする意向を表明した。「世界の潮流として、カーボンニュートラルと経済成長の両立を目指すグリーン・トランスフォーメーションは、新たな生産拠点の整備に向けた投資の進展、経済波及効果や良質な雇用の創出と人材定着などが見込める大きな可能性を持った分野だ」と強調した。青森県は、今年度の当初予算に、GX青森の推進による「しごとづくり」の関連予算として3億1900万円を計上している。
宮下知事は『GX青森』の推進について、「各地域に存在するエネルギーの特性や優位性を生かしていくことが重要だ。青森港や津軽港および西海岸における洋上風力関連産業、八戸港における水素・アンモニア関連産業、上北地域や下北地域における原子力関連産業、むつ小川原地域におけるフュージョンエネルギー関連産業など、各地域の特性や優位性を生かした企業誘致や産業集積に戦略的に取り組んでいく」と述べ、県内への企業誘致などにより、仕事づくりや人材育成を目指す考えを明らかにした。
青森県日本海南側
地域経済効果は7000億円
青森県鰺ヶ沢町沖
洋上風力発電に関しては、昨年12月に第3ラウンド「青森県日本海南側」の選定事業者が公表された。「青森県日本海南側」は、つがる市と鰺ヶ沢町の沖合が促進区域になっている。選定事業者となったJERA、グリーンパワーインベストメント、東北電力の3社による「つがるオフショアエナジー共同体」が地域経済への波及効果を試算した。
計画によると、青森県日本海南側の発電設備は着床式。発電出力は61万5000kW(1万5000kW×41基、Siemens Gamesa Renewable Energy製)。運転開始は2030年6月を予定している。建設から撤去までの波及効果は地域経済だけで7000億円、国内全体では1兆6000億円と見込んでおり、地域でのしごとづくりには大きな効果が期待されている。
地元企業との
ビジネスマッチングを開催
青森県は6月23日、風力発電関連の企業誘致などを推進する新たなプロジェクトを立ち上げた。このなかで、宮下知事は「青森県の雇用情勢や若者定着・還流が大きく変わった、と思われるきっかけになるよう取り組んでいきたい」と述べた。青森県沖日本海南側洋上風力促進協議会の会長をつとめるつがる市の倉光弘昭市長は「千載一遇のチャンスと受けとめて、県のリーダーシップのもと、大きな産業クラスターをつくっていきたい」と力を込めて語った。
キックオフミーティングには、NPO法人青森風力エネルギー促進協議会の本田明弘理事長や、グリーンパワーインベストメントの坂木満社長、青森みちのく銀行や県商工会議所の代表が出席して、風力発電を通し、企業誘致や新産業創出へ向け連携していくことを確認した。
青森県では、今年3月末と年度末に進出を検討している企業と地元企業の「ビジネスマッチング」を開催する予定だ。さらに企業誘致に向けて企業訪問やトップセールスなどの取り組みを進めていく方針だ。
青森県のホームページに
再エネ振興ポータルサイト
青森県の再エネ産業振興ポータルサイト(出典 青森県)
青森県は、県のホームページのなかに「再生可能エネルギー 地域振興ポータルサイト」を開設している。このサイトでは、再エネ・脱炭素関連のイベントやセミナー情報、助成金・公募情報などの最新情報や、青森県の再エネ産業振興の取り組みや事例紹介、関係法令情報などを掲載している。
再エネ共生条例を
今年7月に施行
青森県では今年3月、「自然・地域と再エネとの共生に関する条例」(共生条例)と「自然・地域と再エネとの共生税条例」(税条例)が県議会で可決された。都道府県レベルでゾーニングと課税を組み合わせた条例は全国初となる。ゾーニングと課税を一体で進めることで、再エネと自然環境保護の両立を目指す。
地域と共生した再エネの推進について、青森県環境政策課は「共生条例では、本県の再生可能エネルギーに対する保護・保全の地域区分(ゾーン)を明示するとともに、再エネ事業者に対し、設置計画立案段階のできる限り早期から地域住民などと対話する機会を設けるよう求めています。これらの合意形成手続を適切に行うことで、地域のメリット・デメリットを明確にしながら、地域の視点から守るべき自然環境等に配慮して事業を計画することにより、自然・地域と共生する再エネ事業の円滑な導入につなげたいと考えています」と話している。
共生条例では、出力500kW以上の陸上風力と同2000kW以上の太陽光の青森県内での立地を区域分け(ゾーニング)して規制する。税条例では、同規模の新規陸上風力と太陽光に課税する。ゾーニングでは、再エネ事業を認めない「保護地域」と「保全地域」、事業ができる「調整地域」の3つに分類している。保護地域と保全地域で新規事業を実施した場合、1kWあたり陸上風力に1990円、太陽光には410円の高い金額を課税し、ゾーニングの実効性を担保する。調整地域では1kWあたり陸上風力に300円、太陽光には110円を課税する。保全地域・調整地域のうち、再エネ推進の地元合意が得られたエリアは非課税の「共生区域」とする。
このうち、共生条例は今年7月1日に施行された。課税については、総務相の同意を得て2025年度中の導入を目指している。共生条例としごとづくりの両立について、青森県エネルギー・脱炭素政策課は「共生条例の施行により、地域との合意形成プロセスが明確化され、事業予見性が高まったことで、県内でも今後さらに風力発電を中心とした再エネ事業が推進されるものと考えています。そこで、県では、地域企業とのビジネスマッチングや企業訪問、体験型研修による人材育成などを通じて、県内の雇用創出、しごとづくりに取り組んでいく所存です」と話している。
DATA
青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例について
取材・文/宗 敦司