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風力発電分野で資格取得者が急増!産業用ロープアクセスの国際資格「IRATA」とは?

IRATAは、風車のブレード点検などの高所作業に欠かせない産業用ロープアクセスの国際資格だ。神奈川県大和市にあるGRABのトレーニングセンターでは、風力発電分野でIRATAの資格取得を目指す人が急増している。

トップ画像:GRABのトレーニングセンター(神奈川県大和市)

 

<目次>
1.英国発のロープアクセス資格 IRATA 第三者が厳格に審査
2.首都圏に近いのがメリット 年間約100名が受講
3.秋田市のブレード落下事故で高所作業への関心が高まる

 

英国発のロープアクセス資格 IRATA
第三者が厳格に審査


IRATAトレーニングでは、講義と実技の両方を通じて、ロープアクセスについての技術と知識を高める

ビルの窓ガラスの清掃をはじめ、建物の外壁や橋梁、鉄塔の点検、補修などの高所作業で活用されるのが「産業用ロープアクセス」という技術だ。日本では「ロープ高所作業」として法令に位置付けられている。こうした産業用ロープアクセスを安全に行うための知識や技術を審査し、資格を認定しているのが、国際団体の「国際産業用ロープアクセス協会(IRATA、アイラタ)」である。


IRATAに認定されたトレーニングセンターには個別の会員番号が付与され、IRATA本部が定期的にトレーニング内容の監査などを行う

GRAB合同会社代表の苅谷健太氏は、神奈川県大和市でIRATA認定のトレーニングセンターを運営している。「IRATAはもともと、北海の海洋オイル&ガス産業において、ロープアクセスを安全に行うことを目指して、1997年に英国で設立されました。洋上の基地などでは、万が一の事故が起こっても救助が来るまでに時間がかかるケースもあります。そのため、IRATAのレベル1では自分の命を守ること、レベル2・レベル3では仲間を助けることを想定したトレーニングを行います。こうした知識や技術は、今後日本で拡大が見込まれる洋上風力発電や、陸上風力発電でも必要になると考えています」と苅谷氏は説明する。

国内にはIRATAが認定するトレーニングセンターが数社あり、GRABはそのうちの1社だ。IRATAの資格について苅谷氏は、「第三者がトレーニング受講者の資格審査を行う点が特徴です。客観的にロープアクセスの技術や知識を評価する公平性などから、IRATAは世界で主流の産業用ロープアクセスの資格になっています」と話す。

 

 

首都圏に近いのがメリット
年間約100名が受講


GRABのトレーニングセンターでは、IRATAレベル1からレベル3のトレーニングが受講できる

GRABのトレーニングセンターは、横浜から電車で約20分の大和駅が最寄り駅だ。首都圏に近く、ビルの窓ガラスの清掃事業者など、さまざまな分野から年間約100名が受講に訪れている。近年は、風力発電分野からの受講者が増えているという。苅谷氏は、「海外では、IRATAの資格を持っていなければ、風車での高所作業を認めないケースもあります。日本でもこの先、IRATAのような海外のスタンダードを適用する場面が増えていくと考えています」と、今後の風力発電産業におけるIRATAの重要性を強調する。


苅谷氏はIRATAレベル3を保有し、インストラクターを務めている

日本では2022年に労働安全衛生法が改正され、高所作業を行う際には、原則としてフルハーネス型の墜落抑止用器具を装着すること、作業前に約6時間の安全衛生特別教育を受講することが義務化された。しかし、日本の建設現場では、10年以上にわたって墜落が死亡事故の原因の約4割を占めており、苅谷氏はさらなる安全の追求が必要だと訴える。

「日本ではこれまで、高所作業は現場で働きながら学ぶものという認識が一般的だったと感じています。その理由は産業用ロープアクセスの技術が、ビルの窓の清掃や外壁の点検、風車のブレードの補修といった目的を遂行するための手段の1つにすぎないと、とらえられているからではないでしょうか。しかし、こうした作業を安全に行うには、特別に意識をしなくても適切なロープアクセスができるようなトレーニングが大切です。IRATAではレベルアップ試験の受験資格として1000時間の実務経験を求めていますが、その背景にはこうした考え方があります」と説く。

秋田市のブレード落下事故で
高所作業への関心が高まる


ロープアクセスツールの名前や使い方を学んだ上で、ロープを登る実技トレーニングを体験した

とっさの時に現場で適切な判断ができるように、GRABではトレーニング中、受講生に「なぜその判断をしたのか」を問いかけるようにしている。苅谷氏は、「もちろん反復した訓練も重要ですが、現場では予想外のことが起こります。どんなときにも適切な対応ができるように、自分がなぜそのような判断をしたのかという理由を考えてもらうように心がけています。このセンターで受講した方が、数年後にレベルアップ試験を受講に来られると、安全に経験を重ねているのだと感じ、とても嬉しくなります」と笑顔を見せた。

苅谷氏は、IRATAトレーニングを提供する他、ビルの窓ガラスを清掃する事業者協会の理事を務め、産業用ロープアクセスの安全性の向上に力を注いでいる「今年5月に秋田市で発生したブレード落下事故を受けて、風力発電分野ではブレード点検などの高所作業への関心が高まっています。IRATAトレーニングは、産業用ロープアクセスの技術や知識を体系的に習得できる国際スタンダードであり、安全のための必要な投資だと考えています。当社のIRATAトレーニングセンターを、ぜひ活用していただきたいと思います」と苅谷氏は力を込める。

問い合わせ先

GRAB合同会社
代表

苅谷健太氏

GRAB合同会社
オフィス:神奈川県横浜市緑区霧が丘霧が丘4-1-1
トレーニングセンター:神奈川県大和市深見西4-10-14
TEL:045-459-6903
E-mail:info@grab-2016.jp


写真:金子怜史
取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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