【長崎海洋産業クラスター形成推進協議会】GWO基本技能訓練が今年5月にスタート 国内初の洋上タワーで操船訓練も提供へ
2026/02/20
長崎海洋産業クラスター形成推進協議会は、洋上風力発電の技術者・技能者を育成する国内最大の訓練施設だ。今年5月からGWOの基本技能訓練を開始し、2027年度には国内初の洋上タワーで作業員輸送船を用いた訓練を提供する。
1.海に囲まれた長崎県で 洋上風力の専門人材を育成
2.日本語と英語に対応 GWO基本技能訓練の提供を開始
3.国内初の洋上タワーで CTVを用いた訓練開始へ
4.2026年夏の開講 洋上風力漁業共生コース
5.実証実験をサポートする 実海域フィールドセンター
海に囲まれた長崎県で
洋上風力の専門人材を育成
長崎海洋産業クラスター形成推進協議会は、新たな海洋産業への参入を目指す企業によって2014年に設立された。海に囲まれた長崎県で、洋上風力発電をはじめとする海洋エネルギー産業のサプライチェーンの形成や人材育成、共同研究・開発支援など、数多くの事業に取り組んでいる。注力している事業の1つが長崎海洋アカデミー(以下「NOA」)で行っている人材育成事業だ。
協議会の松尾博志副理事長は、「NOAは2020年に開講し、主に社会人を対象に、技術者(エンジニア)と技能者(テクニシャン)の両輪で専門人材の育成に取り組んでいます。風力発電所の設計や施工管理などを行うエンジニアと、実際の現場で施工や運用・保守などを担当するテクニシャンの育成を通じて、日本の海洋産業の創出と振興を目指しています」と話す。
日本語と英語に対応
GWO基本技能訓練の提供を開始
テクニシャンを育成する「NOAトレーニング」は、日本財団の助成を受け、長崎県や長崎市と連携して2024年11月に設立された。長崎駅から車で40分ほどの伊王島(長崎市)で、風力業界の国際標準訓練であるGWO 認証トレーニングを提供している。「シーサバイバル」を含む基本安全訓練(BST)の5モジュール、アドバンスト・レスキュー・トレーニング(ART)など12種類のトレーニングを日本語と英語で提供しており、今年5月から追加するGWO訓練を含めるとカリキュラム数・施設規模ともに国内最大のGWO訓練施設だ。「施設内に温水プールを備え、年間を通じて受講できる環境を整えています。さまざまなトレーニングをワンストップで提供できる点が強みです」と松尾氏は強調する。
今年5月からは、GWOの基本技能訓練(BTT)の提供を始める。BTTは、「電気」、「油圧」、「機械」、「ボルト締め」、「据付」の5モジュールで構成される。風力発電所の建設や運転・維持に従事する作業員が手順に従って安全に作業するための基礎知識を学ぶ。風力発電所の建設や運転に求められる基礎知識は、国や地域によってレベルが異なる。実質的にはGWO訓練が基礎知識の国際的なスタンダードになっていると松尾氏は説明する。BTTでは、風車内にある設備を模したツールを用いて、電気回路や油圧システムの安全な取り扱い方法を学ぶとともに、ブレーキ、ヨー機構といった風車の構造や部品を理解し、基本的な機械作業を安全に行うための知識を身につける。
2026年5月からGWO基本技能訓練(BTT)を提供

BTTの機械・電気・油圧・ボルト締め・据付作業のトレーニングを行うための設備。
NOAトレーニングは、今年5月から基本技能訓練(BTT)を提供する。風力発電の現場で安全に各種作業を行うための基礎的な技能を学ぶ。
NOAトレーニングが提供するGWO認証訓練コース
● 基本安全訓練(BST)5日間
「ファーストエイド」、「ファイヤーアウェアネス」、「マニュアルハンドリング」、「ワーキングアットハイト」、「シーサバイバル」の5モジュールで構成される基本安全訓練
● アドバンスト・レスキュー・トレーニング(ART)3日間
業界標準の救助装置・技術を用いて救助活動を学ぶ上級訓練
● エンハンスト・ファーストエイド・トレーニング(EFA)3日間
救助隊が来るまでの間、傷病者に継続的な手当てを行うための上級訓練
● 基本技能訓練(BTT)5〜10日間
風力発電の現場で安全に機械・電気・油圧・ボルト締め・据付作業を行うための訓練
● スリンガー・シグナラー(SLS)2日間
風力発電業界で重量物の吊り上げ作業に必要な玉掛けや手合図を習得する訓練
● ウインド・リミテッド・アクセス(WLA)0.5〜1日間
視察などの作業以外の目的での風力発電設備の訪問者を対象とした、必要最低限の安全訓練
国内初の洋上タワーで
CTVを用いた訓練開始へ
2027年には長崎市高島沖に、国内初となる訓練用の洋上タワーが完成する予定だ。そのタワーで、作業員輸送船(CTV)から風車への移乗訓練やCTVの操船訓練を提供する。洋上タワーは今年の春から建設に取りかかり、CTVは、長崎県佐世保市の造船会社・沖新船舶工業が建造する。
「CTVから風車に移乗する際は事故のリスクが高く、国内でも作業員がCTVと風車の間に足を挟まれて骨折するという痛ましい事故が起きています。そうした事故を防ぐため、波や風がある実際の海でトレーニングを積むことは極めて重要だと考えています。すでに全国のさまざまな事業者から問い合わせをいただいています」(松尾氏)。
■2027年中に洋上での移乗・操船訓練を開始

実海域でのCTVの操船訓練のイメージ図。
長崎市高島沖に洋上タワーを設置し、2027年中にCTVからの移乗訓練やCTVの操船訓練を開始する。洋上の風車に乗り移る方法や、CTVをトランジションピースに押し当てる特殊な操縦方法などを学ぶ。高島は外海に面しており、実際の洋上風力発電所に極めて近い環境でトレーニングを実施する。
2026年夏の開講
洋上風力漁業共生コース
講義を中心とした研修を提供するNOAでは、エンジニア向けに、洋上風力発電の基礎知識から事業開発まで、さまざまな講座を開講している。2026年夏の開講を目指しているのが、「洋上風力発電 漁業共生コース」だ。このコースでは、洋上風力発電事業の初期計画段階で、漁業関係者と良好な関係を構築するために必要な知識と事例を幅広く学ぶ。水産業に関連する海洋気象や水中生物の生態をはじめとして、法令や仕組み、地域の取り組み事例のほか、参加者同士で水産振興に関するアイデアを創出するワークショップを行いながら学びを深めていく。オプションで、五島市沖の洋上風力発電設備の視察や、漁業関係者、メンテナンス事業者との意見交換を含む「五島オンサイトプログラム」を追加することもできる。

NOAトレーニングの2階には、深さ3.5mの温水プールがあり、1年を通してBSTシーサバイバルの訓練を受講できる。
実証実験をサポートする
実海域フィールドセンター
長崎海洋産業クラスター形成推進協議会は、民間企業や大学などが新しい技術を実証するための実海域フィールドセンターを設けている。地元の西彼南部漁業協同組合の協力のもと、実際の海で実証を行うことができ、観測用機器などの貸し出しも行っている。「海洋国家である日本には、海を舞台とする産業のポテンシャルがたくさん埋もれていると考えています。このセンターを舞台に洋上風力の最先端テクノロジーを次々に開発して、海洋・環境関連産業の拠点が形成され、地域の雇用確保はもちろん、日本の国全体の活力につなげていきたいと思います」と松尾氏は未来を見据えている。
PROFILE
特定非営利活動法人
長崎海洋産業クラスター形成推進協議会
副理事長
NOA TRAINING訓練施設長
松尾 博志氏

問い合わせ

〒850-0862
長崎市出島町1-43 D-FLAG105
TEL:095-893-8251
Mail:info@namicpa.com
WIND EXPO【春】 に出展!
ブース番号:W23-56c
取材・文/山下幸恵(office SOTO)
写真/福永庸一
WIND JOURNAL vol.10(2026年春号)より転載
Sponsored by NPO法人 長崎海洋産業クラスター形成推進協議会








