再エネの便益と課題。ニッポンの針路は?
2026/08/27
洋上風力発電をめぐるビジネスは、日本国内だけでなく、海外でもさまざまな動きがあり、必ずしも順風満帆とはいえない。洋上風力発電が直面する課題とどう向き合うべきかについて、WFOアジア地域共同代表の渡辺さゆり氏と、英国取材から帰国した本誌ライターの山下幸恵が語り合った。
メイン画像:洋上風力第1ラウンド「秋田県由利本荘市沖」
ビジネスの成立が大前提
政策の優先順位の議論を
山下 足元では、日本国内の洋上風力発電ビジネスはコスト高に苦しんでいます。その一方で、洋上風力発電は再エネ主力電源化の切り札としてCO2削減、エネルギー安全保障、地域における産業振興への貢献などが期待されています。渡辺さんは、グローバルなお立場で、いまの日本における再エネの便益と課題をどのようにとらえていますか。
渡辺 洋上風力発電は「発電事業」ですから、まずはビジネスとして成立させることが大切だと考えます。日本政府は脱炭素とエネルギーの安定供給を重視し、再エネの主力電源化・最大限の導入拡大を進めています。再エネは確かに脱炭素やエネルギーの安定供給に寄与することが期待されますが、こうした便益を持つのは再エネだけではありません。国民負担をどう抑制するのかという問題もあります。こうした状況の中で、足元ではコストが上昇している洋上風力発電を推進するにあたり、どの政策手段を優先的に講じるのかを、議論のテーマにのせることが重要だと考えています。
山下 国民負担の問題に関して、需要家が直接支払う電気料金を引き下げる重要性に異論はありません。しかし、電気料金の値上がりについては、電気料金の構成要素の1つである燃料費調整額の影響を認識する必要があります。燃料費調整額は世界の燃料価格の動向を反映しており、日本は一次エネルギーの多くを化石燃料の輸入に頼っているからです。国民負担のあり方をめぐっては、「国民負担=再エネ賦課金」という認識をあらためて、議論をもっと深堀りするべきではないかと考えています。
渡辺 昨年10月、洋上風力促進について議論する国の合同会議で、エネルギー政策における洋上風力発電の位置づけが明確にされました。日本が一次エネルギーの8割以上を化石燃料に依存し、その輸入が国富流出という形で貿易収支にも影響を与えていることを、エネルギー政策の文脈で明示するようになったことに変化を感じています。そうした中で、昨年10月に高市政権が発足し、洋上風力発電が他の戦略分野の中で政策的にどのように位置づけられるのかについても業界の注目度が高まっています。政府による根本的かつ具体的な事業環境整備の動向に注目しています。

未熟な産業を支える
政府のサポートに期待
山下 私は昨年秋、英国の洋上風力発電関連企業を取材しました。そこで最も強く感じたのは、エネルギー産業の1つとしての洋上風力発電ビジネスでした。北海に面するスコットランドのニグ港は、欧州で最大規模の洋上風力開発拠点港を目指しています。昨年7月、三井物産と商船三井がニグ港を共同で買収し、さらなる港湾整備を計画しています。ニグ港では、住友電気工業の海底電力ケーブル工場の新設も進んでいます。イングランドのニューカッスルでは、ケーブル保護ツールや電気防食ソリューションなどの英国スタートアップ企業が急成長していました。エネルギー産業のマーケットでは、その時々の国際政治や経済の流れを受けてさまざまな変化が起きています。変動要素が多い中で、日本の洋上風力発電がビジネスとして成り立つには、何が重要だと考えていますか?
渡辺 日本の洋上風力発電は産業として未熟で、コストやサプライチェーンなどの課題も抱えています。一方で、再エネ主力電源化の「切り札」と位置づけられ、脱炭素やエネルギー自給率向上といった期待も背負っています。だからこそ、初期段階では政府がしっかり関与し、持続可能な産業として成長させることが重要です。日本政府が洋上風力発電を国のエネルギー政策として後押しするのであれば、新しい洋上風力発電産業がビジネスとして自立・成長できるよう、産業全体を俯瞰した明確な方針と具体的なサポートに期待しています。
PROFILE
一般社団法人世界洋上風力フォーラム
アジア地域共同代表兼日本代表
渡辺さゆり氏

office SOTO
山下幸恵
取材・文/山下幸恵(office SOTO)
WIND JOURNAL vol.10(2026年春号)より転載













