地域とともに風力発電事業を発展させ、脱炭素社会の実現へ[ユーラスエナジー]
2022/02/02
世界14ヶ国で風力発電・太陽光発電事業を展開するユーラスエナジーホールディングス。「2050年カーボンニュートラル」に対し、どのような展望を抱いているのか。同社の代表取締役社長・稲角秀幸氏に聞いた。
2050年カーボンニュートラルへ
洋上風力がドライバーとなる
日本政府が掲げた「2050年カーボンニュートラル宣言」が追い風となって、ようやく日本でも様々な産業でクリーンな電源を調達する動きが見え始めています。企業においても、かつて再エネ電源は他の電源に比べ価格が高いために使われない、という傾向にありましたが、時代の流れとともにカーボンニュートラルの流れが一気に加速して、今では再エネ電源の使用が求められるようになり、いろいろなところで大きな“うねり”がやってきていると感じています。
2050年カーボンニュートラルは非常に野心的な目標だと思いますが、この高い目標を達成するために、洋上風力産業ビジョンに「2030年までに10GW」という具体的な数値が導き出されたのだと理解しています。様々な再エネの導入が進んでいますが、その中でも洋上風力は再エネ主力電源化の切り札となってくるでしょう。日本の排他的経済水域の面積は世界第6位の大きさであり、その点から「2040年までに最大45GW」というビジョンも設定されたのではないかと思います。
この高い目標もアジアにおいて日本が主導的な立場の確立を目指すという業界からの後押しがあったと聞いており、日本政府が洋上風力をどこまでやるかを示すことで日本の洋上風力マーケットに対する世界の注目も集められるものだと思います。
風力発電事業のリーディングカンパニー
強みはパイオニアスピリッツと目利き力
当社は現在、世界14ヶ国で風力および太陽光発電所を運営しています。私どもユーラスエナジーグループの大きな強みは、優良案件を選別する“目利き力”にあると言えます。再生可能エネルギー分野のパイオニアとしての豊富な経験から、風況や日射量、各国での制度面をもとに「このマーケットは期待できる」という情報をいち早くキャッチし、事業を展開してまいりました。
当社は1987年にアメリカで風力発電事業を開始したのが始まりです。それから約10年後に、日本で初となるウインドファームを北海道の苫前で操業し、他社に先駆けていち早く大型案件を手掛けました。苫前での経験を活かしてその後も国内での開発を進め、現在、国内30ヶ所で風力発電所を操業しており、国内最大のシェアを誇っています。
このように、案件の実現性は十分か、地元との共生は図れるか、送電線の容量に空きはあるのか、重量物は運べるのかなど、プロジェクトを遂行する上で必要な条件を素早く整理し、事業を行う適地と判断すれば迅速にアプローチをする。そして、開発から建設の管理・監督、操業までのプロセスすべてに関与し、その一つひとつで競争力を求めていくこと、それも我々の強みとなっています。
また、当社は豊田通商と東京電力ホールディングスの共同出資会社であることから、商社の持つ世界的なネットワークと、電力会社ならではの電力や発電所の運営に関する知見を活かせることも、非常に大きな強みです。
日本産業を活性化し
地域とともにある発電事業者へ
カーボンニュートラル達成のためには洋上風力が大きなドライバーになると考えていますが、残念ながら日本には風車を製造するメーカーが現在ないこともあり、風車の技術については欧米勢に頼らざるをえません。産業育成という観点では見劣りしてしまうかもしれませんが、実は風車の部品点数は1基あたり1~2万点で、これは部品点数が多いと言われる自動車産業に匹敵する裾野の広さです。
また、洋上風力を国内で手掛けることでサプライチェーンが構築されるだけではなく、金融業界、保険業界の需要拡大や地域の方々や漁業の関係者などへの支援が図られ、日本の産業の活性化につながると考えています。風力発電事業は開発から運転期間まであわせると約30年近くにもなる息の長い事業であり、その間多くのステークホルダーの方々に支えられて成り立っています。
このような事業を推進するために、当社は「地域とともに発展し、社会から信頼される企業」をビジョンの1つに掲げています。
東京に本社を構える私たちが、地域の自然豊かなエネルギーを利用しながら利益だけを持ち帰る、というようなことがあってはなりません。地域とともに発展するという観点から当社では、風力事業の開発から建設、操業・保守を通じて、起用する資機材は地元企業から調達することを優先し、また地元の方を採用しています。加えて、当社の事業内容をより良く知っていただくために地元の方々への「風力発電施設見学受け入れ」、地元学校での「出前授業」なども実施しており、地元の方々により身近でより見える形での貢献に今後とも努めていきます。このように、地域の方々と共生し、地域の雇用に貢献し、サプライチェーンをもとに産業を育成・創出することが風力発電事業を行う上で重要であると思います。
また、再エネ事業者である我々がCO2を排出しているのはいかがなものかと考え、2019年にユーラスグリーンエナジーを設立して、電力の小売事業に参画し、グループ内で消費する電力のグリーン化も進めています。ユーラスエナジーグループは今後も風力や太陽光発電所の積極的な事業推進はもちろんのこと、自社の使用電力もグリーン化することによって、カーボンニュートラル実現に貢献したいと考えています。
話を聞いた人
株式会社ユーラスエナジーホールディングス
代表取締役社長
稲角 秀幸氏
1983年、株式会社トーメン(現豊田通商)に入社。インドネシアほか海外における勤務を経て、2015年4月に豊田通商執行役員ならびにユーラスエナジーホールディングス取締役に就任。2015年6月より現職。