風力発電を雷サージの被害から守るには? 電源用SPDで電気系統への侵入を防げ
2022/07/12
安全に風力発電事業を営むうえで欠かせないのが、雷サージへの対策だ。雷サージは、一瞬にして電気系統や通信線を破壊してしまう。雷サージ対策に役立つ「電源用SPD」の有効性を説く。
陸上風力発電でも雷対策は必須
電気系統を破壊する雷サージ
洋上風力発電はもちろん、山頂付近などに設置されることのある陸上風力発電でも、雷対策は不可欠だ。風力発電は、地面から上部のナセルに至るまで、上下方向にケーブルが敷設される。そのため、制御回路などに雷の被害を受けやすい構造だとされる。
特に、雷による一時的な過電流・過電圧である「雷サージ」は、電気系統に侵入し、設備を破壊する恐れがある。雷サージによる被害を防ぐには、電源線や通信線といった侵入ルートに応じた適切な対策を施す必要がある。
電源線から侵入する雷サージへの対策として挙げられるのが、電源用SPDだ。SPDとは「サージ防護デバイス(Surge Protective Device)」の略。雷サージを安全に放出することで、過電圧・過電流による被害を防ぐ。「避雷器」と呼ばれることもあり、発電設備はもとより、さまざまな建物や電柱などでも活用されている。
電源用SPDで雷サージ対策
万全の安全策で機会損失を回避
1965年に設立された電子機器メーカーである昭電は、風力発電向け電源用SPDを開発している。同社が2020年4月から販売している「AFD-Sシリーズ」は、電源用SPDの最上位モデルだ。
「AFD-Sシリーズ」は、電源用SPDの試験規格JIS C 5381-11に対応し、故障表示や警報接点出力機能を備えている。また、SPD分離器(電流ヒューズ)を内蔵したことで、省スペース化と施工性の向上を両立した。
さらに、同シリーズには、雷によって電源用SPDが故障しても、SPDを電源回路から安全に切り離すことができる「安全遮断技術SITS」が採用されている。これによって、SPDが故障した際の発火の危険性を排除することができたという。
風力発電設備でトラブルが発生すると、修理や交換のために多額のコストが必要になる。高所作業が必要なケースなどでは、なおさらだろう。発電を止めることによる機会損失を避けるためにも、電源用SPDなどの雷サージ対策は万全にしておくのが得策だ。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)