風力発電協会、出力抑制のオンライン化に伴うコストや回収年数などとりまとめ
2022/08/23
日本風力発電協会(JWPA)はこのほど、風力発電の出力制御について、オンライン化による投資回収期間などをとりまとめた。FIT期間内に回収できる可能性などについて説明し、オンライン化のメリットについて周知を図る。
風力発電にもオンライン化の要請
投資回収期間や留意事項など整理
日本風力発電協会(JWPA)は7月、風力発電の出力制御に関して、オンライン化の投資回収期間や留意事項などをとりまとめた資料を同協会のWEBサイトに掲載した。JWPAは、出力制御による逸失電力量を低減する観点などから、出力制御のオンライン化を推奨している。今回の資料は、JWPAがオンライン化を実施・計画した発電事業者に対して行ったアンケートをもとに作成された。
まず、オンライン化に必要な費用は、大きく「出力制御情報送受信装置(CDT)・盤内回線等の追加改造費」「一般送配電事業者側設備(CDT・通信回線等)の追加改造費 (負担金工事)」「風車制御装置改造費」の3つに分けられる。アンケートによると、特別高圧での連系でCDTを必要とする場合、これらの費用の合計が1,200〜3,300万円程度であったという。
続いて、オンライン化によるメリットとして、制御時間の短縮によって出力抑制量が削減された分の売電収入と、出力制御に対応するための現地操作などにかかる費用の減少の2点が挙げられた。 アンケート結果によると、これらのメリットを金額に換算すると年額で1MWあたり43万円だという。
JWPAは、想定メリットを30万円/MW・年と仮定した場合の、オンライン化の費用と投資回収年数も示している。下図の通り、発電所の規模が大きいほど投資回収年数が短くなる。20MWの発電所では、オンライン化費用に応じて、3〜5年程度で投資回収ができると想定されている。
(出典:日本風力発電協会)
FIT期間で回収可能なケースも
オンライン化に対する理解求める
さらに、JWPAは、出力制御によるオンライン化の投資回収年数の調査結果と、アンケートでオンライン化未対応と回答した発電所の出力とFIT残存期間を比較した。下図では、オンライン化による想定メリット30万円/MW・年が継続すると仮定したうえで、曲線より上側の発電所は投資回収できる可能性が高いとしている。
(出典:日本風力発電協会)
出力制御のオンライン化については、経済産業省が2019年にまとめた再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の第2次中間整理において、拡大する方向が示されていた。
これを受け、JWPAでは、2020年度末までにオンライン化を完了するという目標を掲げて、セミナーの開催などを通してオンライン化を促進してきた。しかし、オンライン化の割合は、まだ100%には至っていないという。JWPAは、整理したオンライン化の費用とメリットを風力発電事業者へ周知・説明するなど、今後も継続的に対応していくとしている。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)