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ハブ、ナセルからタワーまで風車1基の定期点検に密着!

GWOのトレーニングを受講した編集部員が、風車1基の定期点検に密着取材した。実際の風車に登って感じた緊張感やリアルな点検作業をリポートする!

「点検が済んで回る風車を見ると、何とも言えない達成感を感じる」という言葉が印象的だった。

<目次>
1.天候を見ながら作業を遂行 常にメンバーと安全を確認
2.ハシゴを登ってハブの中へ GWOトレーニングを即実践

 

天候を見ながら作業を遂行
常にメンバーと安全を確認

地上約90m。風車のナセルの上。ヤードに停めている作業車が、ミニチュアのように小さく見える。展望台と違って手すりやフェンスがないので、1人で宙に浮いているようで心細い。GWOのトレーニングを受けたものの、実際の定期点検ではどのような作業を行うのか、現場のスタッフはどのように作業に取り組んでいるのかを知りたくて、密着取材に協力していただいた。ここは、西日本の山あいにある陸上風車だ。

今朝は風が穏やかで快晴。1日ぶりに定期点検の作業を再開する。昨日は風が強くて風車に登れなかったので、事務所に全員が集まって、作業時の安全についてディスカッションした。たとえペン1本でも、高所から落としたら下で作業している人に極めて危険なことや、夏場は風車の中の温度が上がるため、熱中症対策が重要なこと、チームのメンバーそれぞれがどの風車でどのような作業をするか、何時に風車から降りるかなど、細かなスケジュールを共有することの重要性を改めて皆で確認した。メンバーからは、ナセルの床には通気のための隙間があるため、作業中にモノを落とさないように対策が必要だといった声が挙がった。


ハシゴを登ると、タワー全体に足音が響き渡る。登るときは、途中で下を見ないことがコツだと教わった。

ハシゴを登ってハブの中へ
GWOトレーニングを即実践

8時30分に事務所で朝礼をした後、全員で危険予知(KY)を行った。今日の作業で考えられるリスクと対策を出し合い、「足元ヨシ」の掛け声を合図に作業をスタートする。今回の定期点検では、ハブやナセル内の機器の点検と清掃、タワー各階にあるフランジ箇所のボルトのトルク確認、1階にある電気設備の点検と清掃、地下の変電設備の清掃といった工程を1基あたり約2.5日かけて行う。

今日はハブとナセルの点検を行うので、ハーネスに「クライムアシスト」という道具をつけ、タワー内のハシゴを登って最上階を目指す。タワーには約20mごとに床が設けられており、各階ではハッチを閉めて休むこともできる。上部からの落下物のリスクを避けるため、登る前に必ず階上のハッチが閉じていることを確かめ、1人ずつ登る。筆者は休みながら登ったのに、ナセルにたどり着いたときには、心臓がバクバクして息が切れ、話すのもままならなかった。他のメンバーは一度も休むことなく登りきり、すでに作業にとりかかっている。

そんな姿に背中を押されるように呼吸を整え、ナセルの屋上に出た。点検時には、ブレードを「Y」のようなポジションでロックしているので、ブレードの間を通ることができる。人ひとりがやっと通れるくらいの幅だ。アンカーポイントにランヤード(命綱)をつけ、ハブに続く短いハシゴを降りるとき、GWOのトレーニングで学んだ「常に左右どちらかのランヤードを掛けた状態にしておく」というアドバイスを思い出した。こうした場面を想定していたのか、と納得しながら慎重に降りる。


GWOトレーニングで習った通り、屋上のアンカーポイントにランヤードをつけて、ナセルの外に出る。

ハブの中は、大人2人が入ると狭いくらいのスペースだ。中腰の姿勢で、歯車についたグリースを持ってきたウエスで黙々と拭く。グリースが安全靴につくと汚れが広がってしまうので、靴の裏も拭きながらの作業だ。汚れたウエスをごみ袋にまとめると、ちょうど正午を回って休憩時間になった。


ハブにはどの角度からでも内部にアクセスできるように入り口が3つあり、そこから地上の木々が見える。

ナセルの中に戻って、朝コンビニで買った昼食を皆と食べているとき、急に黒い雲が出てきた。他の風車にいるメンバーと連絡を取り合って天気予報を確認し、雷の恐れはなさそうなので作業を継続することにした。風車の中にはトイレがないので、休憩時間に風車を降りるメンバーもいるが、中にはそのまま作業を続ける人もいるそうだ。

風車の定期点検と一口にいっても点検項目は多岐にわたり、天候と相談しながら安全かつ迅速に進めなければならない。風車が複数基ある発電所では、全基の点検を終えるのに数週間かかることもあるという。最前線で風車のO&Mに携わる仕事の緊迫感や責任感を垣間見ることができた。

ハブ内


ハブの内部からは、ブレードが接続されている様子が見え、グリースのタンクやブレードのピッチを制御するための非常用バッテリーなどがある。清掃の他、グリースの補充などを行う。風車の機種によっては、ナセルから直接ハブにアクセスできるものもあるという。

ナセル内


ナセルの内部には、発電機や増速機、制御盤など多くの機器が設置されている。それぞれの機器の回転軸を合わせる「アライメント調整」という作業では、最終的には人の手で細かな調整を行なっていく。薄暗くて段差が多く、点検の際には床板を上げて下部に潜り込んで作業をすることもあるので、移動するには注意が必要だ。

風が強い日は、ナセル全体が船のように揺れるので、酔い止めを持参した。機器の黄色く塗られた部分は、ランヤードをかけるためのアンカーポイントだ。

タワー地下


大きな変圧器があるタワー地下に降りるのは、一連の作業行程の最後だ。ボルトのトルクチェックを行い、箒や掃除機を使ってホコリをきれいに清掃する。気がついたら作業服がクモの巣だらけになっていた。

電気設備関係


タワー1階にある電気設備関係の点検を行う前に、風車の電源をオフにする。電源を切る際に大きな音がするので、あらかじめ耳栓を着用しておく。設備を点検した後は、盤の扉を開けて隅々まで掃除する。

タワーフランジ


タワーの各階にあるフランジのボルトのトルクチェックを2人一組で行う。20kg近くある油圧トルクレンチを肩の高さから持ち上げてセッティングする。高い圧力をかけるので、油圧ホースの向きにも気を配る必要がある。油圧トルクレンチは、筆者の力ではびくともしなかった。


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

WIND JOURNAL vol.6(2024年春号)より転載

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