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佐賀県唐津市沖、有望な区域に選定されず「県内外の利害関係者への丁寧な説明が必要」

佐賀県唐津市沖の洋上風力発電について、国は9月27日、「有望な区域」に整理しないことを公表した。県内だけでなく、県外の漁業団体など利害関係者にも丁寧な説明が必要であることなどを理由に挙げている。

<目次>
1.5つの離島の沖合を誘致候補区域に
2.「有望な区域としての要件を満たしていない」と回答
3.ラウンド事業が停滞傾向 国の強いリーダーシップを期待


5つの離島の沖合を
誘致候補区域に

佐賀県唐津市沖 誘致候補海域

佐賀県唐津市沖の誘致候補海域(出典 佐賀県)

佐賀県と唐津市は、唐津市の5つの離島の沖合約140k㎡を洋上風力発電の「誘致候補海域」に指定している。唐津市沖は、2021年度に「一定の準備段階に進んでいる区域」として整理された。佐賀県は今年5月までに国へ情報提供を行い、「有望な区域」への早期の格上げを目指していた。

佐賀県の山口祥義知事は今年7月19日の定例会見で、「みんなでいろいろな話し合いをしていたところ、小川島の漁業協同組合で法定協議会の参加を議決いただいたので、佐賀県が考える全ての利害関係者の同意が得られたという段階になり、国へ法定協議会の設置を要請することといたしました」と述べた。

そのうえで、山口知事は、「この洋上風力発電だけで、佐賀県内の家庭用電力8割ぐらいは賄えてしまうという、非常に巨大な発電ができるわけであります。ここから先は、国が法定協議会をつくって、協議が行われるということになっていくわけでありますが、引き続き丁寧に進めていきたいと考えています」と話した。

「有望な区域としての
要件を満たしていない」と回答

佐賀県唐津市沖

5つの離島の沖合が誘致候補海域(佐賀県唐津市)

経済産業省と国土交通省は9月27日、再エネ海域利用法に基づいて「秋田県秋田市沖」、「和歌山県沖(東側)」、「和歌山県沖(西側・浮体)」の3つの海域を新たに「準備区域」として整理したと発表した。「有望な区域」に新たに整理された海域はなかった。

佐賀県に対しては国から9月27日、ほかの関係省庁などに意見照会をした結果、「有望な区域としての要件を満たしていない」と連絡があったという。このなかで国は、県内だけでなく、県外の漁業団体などの利害関係者にも丁寧な説明が必要であること、離島などを行き交う船舶の安全性などへの配慮が十分にされていないようにみえることなどを指摘したという。

佐賀県産業グリーン化推進グループは「関係省庁に事実関係を確認して、課題の解決に努めたい。県や市のレベルでは解決が難しい問題もあるので、関係省庁などに相談して、引き続き、有望な区域への格上げを目指していきたい」と話している。

ラウンド事業が停滞傾向
国の強いリーダーシップを期待

佐賀県唐津市沖の洋上風力発電計画をめぐっては、2023年度に佐賀県が漁業協調型洋上風力発電事業のあり方を示した「漁業振興方針」を策定している。さらに、洋上風力発電を観光振興に活かすため、2022年10月に一般社団法人佐賀エナジーツーリズム推進協議会を設立し、「次世代エネルギーに触れる視察旅行」のモデルコースを設定などの独自の施策を展開している。

今年度は、洋上風力発電を優先的に整備する「促進区域」の指定が、北海道松前沖のわずか1海域にとどまる見通しだ。「有望な区域」に整理されながら、法定協議会の議論が進まない海域も複数ある。元水産庁長官の長谷成人氏は、諸課題の解決のために国や都道府県がこれまで以上にリーダーシップを発揮すべきと主張している。佐賀県唐津市沖では、県が主導して地域の合意形成に積極的に取り組んできた。国の強力なリーダーシップを期待している地方自治体は決して少なくない。

DATA

再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定に向け、新たに3区域を準備区域として整理しました

佐賀エナジーツーリズム推進協議会


取材・文/高橋健一

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