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洋上風力発電のFIP価格調整スキーム案 40%を上限にウクライナ危機と同様な変動にも対応

経済産業省の調達価格等算定委員会が11月26日に開かれ、洋上風力発電の事業期間に起こるインフレや為替変動のリスクについて、40%を上限にウクライナ危機と同様な物価変動にも対応可能な水準を参考に設定する案が示された。

<目次>
1.米国などの海外で撤退事例が相次ぐ
2.価格調整スキームの具体的な方策を議論
3.ウクライナ危機と同様な物価変動に対応
4.選定から12ヶ月以内に高額な第3次保証金を設定

 

米国などの海外で
撤退事例が相次ぐ

経済産業省

政府全体のGX実現に向けた議論では、2050年カーボンニュートラルの実現、GXの加速に向けて、投資回収の予見性が立てづらい脱炭素電源投資を促進することの重要性が指摘されている。特に、今年8月に開催された第12回GX実行会議では、洋上風力発電などの大型電源については投資額が大きく、総事業期間も⾧期間となるため、収入・費用の変動リスクが大きくなるなかで、事業者の予見可能性を高めるには、このようなリスクに対応するための事業環境整備を進める必要がある点が指摘された。

9月に開催された第68回再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会では、大規模な再エネ電源投資を確実に完遂するための制度のあり方を検討した。このなかでは、洋上風力発電は投資規模が数千億円単位になる点で他の再エネ電源よりも非常に投資額が大きく、総事業期間も⾧期間(約40年間)となること、米国などの海外では、コロナ禍、ウクライナ戦争を受けたサプライチェーンの混乱、インフレによる開発費用の増大などにより、大規模な洋上風力プロジェクトからの撤退事例が複数生じていること、洋上風力発電は、我が国の電力供給の一定割合を占めることが見込まれるとともに、国民負担が生じないゼロプレミアム入札が現に発生するなど、安価なエネルギー供給に資する電源であることから、再エネ主力電源に向けた「切り札」であると評価できるとして、大規模な洋上風力発電への電源投資が確実に完遂されるようにするため、収入・費用の変動に対して強靱な事業組成を促進することを通じて、事業実施の確実性を高めていく方向性が示されている。

価格調整スキームの
具体的な方策を議論

洋上風力発電の規模と投資イメージ(出典 経済産業省)
洋上風力発電の規模と投資イメージ(出典 経済産業省)

11月26日の調達価格等算定委員会では、FIPの基準価格を物価変動率に連動させる「価格調整スキーム」の具体的な方策について議論した。このなかで、再エネ海域利用法に基づく着床式洋上風力発電については、資材価格などの変動による事業撤退リスクが大きいことを踏まえ、電源投資を確実に完遂させる観点から、FIP制度における基準価格を物価変動に連動させ、民間事業者のみでは取り切れないリスクの一部を制度側で、国民負担には中立的な形で引き受ける価格調整スキームを導入することが考えられる。

現在、主要国で採用されている、物価変動に伴う価格調整スキームとしては、①消費者物価指数といった風力発電事業に限定されない、物価全体に係る指標を用いて毎年の物価変動に対する価格調整を行う方式と、②労務費や資材価格といった風力発電コストに関係する複数の指標を用いて、落札後1度のみ価格調整を行う方式の2つに大別される。関係審議会における議論を受けて、リスク分担のあり方や国民負担の抑制といった観点を踏まえ、価格調整スキームによる調整の対象や、価格調整スキームを適用する物価変動率の上下限、事業者が必要なリスクプレミアムの低下に応じたIRRの設定について、どう考えるかが議論のポイントになった。

ウクライナ危機と
同様な物価変動に対応

物価変動率(出典 経済産業省)
物価変動率(出典 経済産業省)

会議では、洋上風力発電は事業費の大半を資本費が占めており、資材価格等の変動は事業撤退リスクに直結し得る。こうした点を踏まえ、日本においては「落札後1度のみ調整を行う方式(1回調整方式)」を採用し、建設期間における資材価格等の変動を基準価格に連動させることとしてはどうか。その際、米国ニューヨーク州やニュージャージー州の計算式を参考にしつつ、NEDO着床式洋上風力発電コスト調査をもとに資本費への影響が大きい費目を特定し、基準価格に連動させる物価指標の選定や係数の設定等について検討することとしてはどうかなどの意見が出された。

そのうえで、価格調整スキームについては、物価変動率の上限を設定し、上限以上の物価変動が生じた場合も、基準価格に連動させるのは当該上限の割合までとすること。民間事業者による適切なリスク評価・リスク分担、契約や調達などにおける再エネ発電事業者自身の創意工夫を促す観点から、民間事業者のみで対応可能な物価変動リスクとして物価変動率の下限を設定すること。物価変動率が、設定した上限から下限の間である場合、基準価格に連動させる調整変動率は、変動前物価指数と変動後物価指数の比により算出した物価変動率から、下限の割合を減じた割合とすること。物価変動リスクを制度側で引き受ける価格調整スキームの導入により、事業者が必要なリスクプレミアムが低下することから、IRRの設定を見直すこととして、上限については、ウクライナ危機による物価上昇と同様な変動にも対応可能な水準を参考に設定する案が示された。また、価格調整スキームを導入している他国においては、40%より相当低い水準で上限を設定している例も確認されていることから、全ての公募対象事業に対して、上限価格の水準にかかわらず、一律に上限40%を適用する案も示された。

選定から12ヶ月以内に
高額な第3次保証金を設定

11月26日の調達価格等算定委員会では、適正な入札実施を担保するための保証金についても議論された。FIT制度の入札では、適正な入札実施を担保するために第1次保証金(入札時に500円/kW)を求め、落札者の確実な事業実施を担保するために第2次保証金(落札時に5,000円/kW)を求めている。日本の再エネ海域利用法と類似のルールを運用するオランダとデンマークの例を見ると、選定時の保証金は日本のFIT制
度とほぼ同等であるものの、落札後の一定の検討期間(12ヶ月)後に、更に高額な保証金(約13,000円/kW)を設定している。これは、最終的な投資判断を行う一定の検討期間を設けた上で、その期間の経過後については、海域調査など事業の一部を国が負担していることも踏まえ、より厳格な対応が必要であるためである。

会議では、日本においても、①区域指定のため海域調査などを国が負担しており、太陽光その他電源に比べてより厳格に対応する必要があること、②一方で、公募時点では詳細な海域調査が完了していないなど、最終的な投資判断には一定の期間が必要であること踏まえ、選定から12ヶ月以内に第3次保証金(13,000円/kW)を求めることとしてはどうかという意見が出された。そのうえで、諸外国(デンマーク、オランダ、ドイツ)における最新の保証金額の平均を日本の第3次保証金額として設定し、第2次保証金額も併せて変更する。また、迅速性評価の点数が下がる半年毎に順次保証金を没収し、2年以上の遅延で全額没収する案が示された。

DATA

第99回 調達価格等算定委員会


取材・文/高橋 健一

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