【スペシャル対談】MOPA・IACOWの産学連携で目指す人材育成
2025/03/12

室蘭洋上風力関連事業推進協議会(MOPA)と産学連携洋上風力人材育成コンソーシアム(IACOW)は今年2月、洋上風力産業分野での人材育成について包括連携協定を締結した。北海道の地方都市・室蘭を拠点とするMOPAと、全国7大学が加盟するIACOWが連携してどのような人材育成を目指すのかについて対談した。
メイン画像 : MOPA調査研究グループリーダーの吉田昌弘氏(左)、IACOW代表の山本郁夫氏(右)
洋上風力発電の
第一線の会員企業と連携を強化
(連携の目的について話すMOPA調査研究グループリーダーの吉田昌弘氏(左)と、IACOW代表の山本郁夫氏(右))
ーー連携の目的は?
山本 洋上風力発電はこれまで日本になかった産業なので、洋上風力発電についての専門教育は、国内ではほとんど行われていません。しかし、洋上風力発電産業がこれから大きく発展する上で、専門知識を持った人材は欠かせません。そこで、洋上風力発電が立地する地域の7つの大学と10の発電事業者が設立したIACOWは、高度な知識やスキルを有する人材の育成に全国規模で取り組んでいます。
IACOWが拠点を置く長崎市と、MOPAの室蘭市には、造船・機械といった産業構造などの共通点が多くあります。そのため、IACOWの各大学で学んだ学生が、社会で経験を積む際のステージとして、よいコラボレーションになると考えています。
吉田 産業界が中心となって立ち上げたMOPAは、室蘭市が洋上風力産業の一大拠点を目指す中で、人材育成が不可欠だと考え、新たな取り組みを模索していました。山本先生とは以前から知遇を得ていて、IACOWが学生の専門教育に力を入れていることを知っていました。MOPAが新たに人材育成の活動を始めるにあたって、先行するIACOWの協力を得てよりスピーディに取り組みを実行に移したいと考えて連携に至りました。
MOPAには120社を超える企業が参画しています。いずれも、洋上風力発電の第一線で活躍する企業です。われわれは、こうした企業が学生を受け入れることで、さまざまな体験を提供し、人材育成に貢献したいと考えています。
洋上風力発電の認知度を高め
就職先の選択肢に
MOPAとIACOWが包括連携協定を締結 2025年2月21日
ーー地方における洋上風力発電の人材確保の現状は?
吉田 学生の皆さんにとって、洋上風力発電産業はまだメジャーな業界ではないと思います。だから、就職の選択肢に入りにくい。そこにフックをかけるには、大学生はもちろんのこと、場合によっては高校生や中学生にも興味を持ってもらえる産業にならないといけないと思っています。MOPAでは、今年から日本工学院北海道専門学校(MOPA会員・登別市)が進める人材育成プログラムの導入支援も行う予定です。若い人が活躍する舞台の1つに洋上風力発電産業があるという認識をもっと浸透させることが、何より大切だと考えています。
山本 人材不足の前に、学生が洋上風力発電業界そのものを知らないというのが現状だと思います。これまでの大学の仕組みでは、電気、機械、化学、建設といった要素ごとの学問を学びますが、風力発電はそれらを統合した総合技術です。学生にとっては、それぞれの要素技術が入り口になっているわけですから、彼らの就職先もそうした要素技術を専攻した学生を受け入れるケースが多いのではないでしょうか。
インターンシップの受け入れや
社会人講師の派遣も
今年2月の洋上風力人材育成フォーラムで講演するMOPA 吉田昌弘氏
ーー連携協定の締結による次のアクションは?
吉田 MOPAの会員企業は、実際に洋上風力発電のビジネスを実際に行っています。まずは、こうした企業で学生のインターンシップを受け入れたいと考えています。私が取締役専務執行役員を務めるDENZAIでは、2023年から学生のインターンシップを受け入れています。また、第一線で働く社会人を講師として派遣することも考えています。実際の現場で専門的なキャリアを積んでいる人は多くいますし、学生に生の声を届けられると思います。
山本 IACOWはアカデミアの立場で専門知識を持っています。産業界のMOPAと交流することで、新しい付加価値を生み出していきたいと考えています。産業界にはどのような課題があるのか、どのような人材を求めているのかを詳しく知りたいと思います。お互いの条件が合えば、共同研究などの可能性もあるでしょう。そこで得た知見を教育に反映し、学生により深い学びを提供して、産業界に輩出していきたいと考えています。
充実した学びの場を提供し
洋上風力発電産業に人材を輩出
(若い学生への期待を力強く語るIACOW代表の山本郁夫氏(右)と、MOPA調査研究グループリーダーの吉田昌弘氏(左))
ーー未来を担う学生にメッセージをお願いします。
吉田 洋上風力発電産業は、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、カーボンニュートラルに貢献することができます。この先も綿々と続く産業になると考えています。その一方で、日本では黎明期の産業であり、良くも悪くも先人が少ない状況です。その意味で、新しいことにチャレンジしやすい舞台だと考えています。
また、新しい産業であるため、産業界とアカデミアの距離が近いと感じています。その分、洋上風力発電について学んだ学生の就職先はさまざまあるのではないでしょうか。私を含む産業界は、洋上風力発電を学んだ学生の皆さんが飛び込んでくるのを大歓迎します。学生の皆さんには、二度と訪れない学生時代を思いきり楽しんでほしいと思いますし、将来、一緒に仕事ができるのを楽しみにしています。
山本 IACOWは、連携先の英国のエジンバラ大学を参考に、学生が企業で働きながら博士号を取得できる仕組み「日本版IDCORE」の構築に取り組んでいます。こうした仕組みによって、より学びやすい環境を整えていきたいと考えています。洋上風力発電産業には活躍できるステージが多くあり、これから成長する分野だと思います。学生の皆さんには、MOPAとの連携による実習やインターンシップで充実した学びや経験を得て、社会で大いに活躍してほしいと考えています。
DATA
取材・文/山下幸恵(office SOTO)
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