風車国産化を緊急提言 着床式中型風車と浮体式大型風車の開発を
2026/06/10
足利大学特任教授の永尾徹氏が昨年11月、「国産風車の再興」をテーマに講演した。着床式のリプレースと山岳地向けの中型風車と、浮体式大型風車の開発を段階的に進めるべきと提言した。
メイン画像:講演する足利大学総合研究センター特任教授 永尾徹氏
1.2019年までにすべての製造企業が撤退
2.風車の国産化はエネルギー安全保障に貢献
3.A計画 リプレースと山岳地向けの中型風車を開発
4.B計画 日本の浮体式に最適化した大型風車を開発
5.資金調達と財務リスクが大きな課題
2019年までに
すべての製造企業が撤退

出典 永尾氏の講演資料
日本国内では1979年から石川島播磨重工業(現IHI)や三菱重工業が風車の開発に取り組んだ。その後、日本製鋼所、日立製作所、富士重工業などが参入したが、2019年までにすべての企業が撤退している。これまでに日本企業が製造してきた風車の総容量は5.4GW。一方、24年末の時点で日本の風車の総容量は5.8GWである。「日本のメーカーが製造した風車の総容量は、国内で稼働している風車の総容量にほぼ等しい実績を積み上げてきた」と永尾氏は述懐する。
永尾氏は、1972年から2007年まで富士重工業(現SUBARU)に勤務し、航空機と風力発電設備の研究・開発に取り組んだ。富士重工業は、1996年から社内の若手技術者の自主的活動を契機として、風車の研究を始めた。永尾氏は風車の研究グループのリーダーをつとめ、その後、風力発電機事業を立ち上げた。
永尾氏は昨年11月、第47回風力エネルギー利用シンポジウムで講演した。永尾氏は日本風力エネルギー学会の会長をつとめているが、この日は足利大学総合研究センター特任教授としての立場で、風車の開発・製造のあるべき姿について熱い思いを訴えた。

風車の国産化は
エネルギー安全保障に貢献
本日の講演では、国内に風車メーカーがないとどのようなことが起きるのかを説明します。国内メーカーが風車を設計することで、国土・国情に合致した風車を製造することができるうえ、ブラックボックスになるおそれがありません。非常事態が発生しても迅速かつ的確に対応することができるので、部品調達の自由度が確保されます。
これと似ているのが防衛装備品です。海外からも購入できるのに、国内で製造するのは日本の国土・国情に合致した機能性能、技術力・製造力の維持、そして技術の独立性を保持し発展させることが目的です。これはエネルギー安全保障と同じなのです。
風力発電の導入拡大に向けて、国産風車メーカーの復活を期待する声が高まっています。現在10を超える企業や団体で、国産風車の開発・製造の検討が行われています。具体的な事例を個別に紹介します。
資源エネルギー庁は、欧米の風車メーカーとの協力関係の確立を図っています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「浮体式洋上風力に関する技術開発ロードマップ」を作成しています。そのなかで、40年にアジア太平洋地域に適した次世代大型風車、浮体搭載用風車の供給と国産化を目標に掲げています。30年に向けて仕様設定、設計開発を進め、同時に国際競争力がある部品に関しては設計製造ができる独自技術の開発を支援する方針です。NEDOの取り組みが、国産化の中心的な役割を果たすことを期待しています。
続いてご紹介するのは、アルバトロス・テクノロジーの浮遊軸型風車(FAWT)です。これは垂直軸風車で浮体ごと回転し、発電機は固定して止められているという非常にユニークなものです。NEDO事業で今年3月まで実行可能性調査(FS)を実施しており、この春には海上に設置して実証を行う予定です。
駒井ハルテックは、出力300kWの中型風力発電機「KWT300」を製造・販売していますが、現在は1000kW風車の開発を進めています。1000kW風車は25年に部品の調達・製造を行い、26年にはプロトタイプをつくって型式試験を実施し、27年に生産開始する予定です。
風力エネルギー研究所は、国産化率100%の大型風車の開発を目指しています。いまは出力2000kW級の風車でリプレース需要を狙っており、開発協力者と参加者を募集しています。
海洋産業タスクフォースは、海事産業の民間企業を主体とした会員企業・団体の、技術情報交流の場として18年に発足した任意団体です。27の企業・団体が参画し、「風力発電事業サプライチェーンに関する課題と提言」というテーマで風車の国産化を検討しています。「陸上用の5000kW風車」と「浮体式の大型風車」の2つにターゲットを絞って複数シナリオを策定し、持続可能な風車ビジネスモデルをとりまとめる予定です。
浮体式洋上風力の国産化推進会議には、戸田建設、コスモエコパワーなど約20社が参加しています。国や政府に対して、浮体式洋上風力の社会実装や国産化の提言を行っています。
A計画
リプレースと山岳地向けの
中型風車を開発
新エネルギー財団(NEF)は昨年4月に「日本発風車あり方研究会」を立ち上げました。この研究会は、民間企業、行政、産業育成機関で中心的な立場として風力発電に携わってきた人たちがメンバーで、資源エネルギー庁とNEDOがオブザーバーとして参加しています。私もメンバーのひとりとして25年4月から月に1回のペースで議論を重ねています。
研究会では、市場から開発、販売、資金調達まで幅広いテーマで議論を進めています。そのなかで日本が取り組むべきアプローチとして2つの案を提示しています。そのうち「A計画」は、リプレースと山岳地向けの風車です。特にリプレースは年間200MWの市場が期待できます。山岳地向けの風車は急激な風向変動への最適化が必要で、こちらも大きな需要が見込めます。
風力発電市場については、陸上平坦地と着床式洋上風力はレッドオーシャンで国産風車が入り込む余地がありません。一方、着床式のリプレースと山岳地向けの風車は、市場としてのリスクが少ないうえ、直近で需要が動き出すと見ており、最初にこれを「A計画」としてスタートすることを提案します。
B計画
日本の浮体式に最適化した
大型風車を開発
「A計画」に続く「B計画」は、浮体式の大型風車をターゲットにしています。いま国内では浮体の研究開発が幅広く、大きな組織で進んでいます。ところが、風車は着床式とほぼ同じものを搭載することを想定しているようです。浮体式に使用する風車は、着床式の延長ではなく、浮体式向けに最適化することが望ましいと考えます。しかし、欧米の風車メーカーは、浮体式風車の研究開発に積極的ではなく、海外メーカーから浮体式の大型風車を購入することに不安があると言わざるを得ません。そのため、わが国主導で日本の気象条件や浮体に適合した風車を開発しなければ、30年以降の浮体式の本格導入に間に合わなくなることを懸念しています。研究会では、市場が確実で技術的にも商業運転レベルに達している「A計画」で中型風車の開発・製造に着手して事業環境を整えたあと、大規模な「B計画」を展開することを提案しています。
資金調達と財務リスクが
大きな課題
風車の国産化を進めるにあたっては、資金調達や財務、技術・製造・販売などの分野で多くの課題があります。山積する課題を解決するには、国家的な取り組みが必要であり、政府がサプライチェーンを含めた風力発電産業を、10年、20年をかけて強化するための明確なビジョンを打ち出すべきと考えています。風車国産化の取り組みを前に進めるためには、さまざまな企業・団体の活動を集約することが望ましく、その受け皿となる組織の設立が必要な時期に来ていると考えています。

取材・文/宗敦司
写真/金子怜史
WIND JOURNAL vol.10(2026年春号)より転載
取材・文/ウインドジャーナル編集部








