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【洋上風力第1ラウンド】中東情勢が暗い影、3海域の再公募開始は今年の夏以降に

洋上風力第1ラウンドの3海域は、再公募の見通しが立たない状態が続いている。新たな上限価格案や公募占用指針案を策定後に、パブリックコメントをそれぞれ実施する必要があり、再公募の開始は早くても今年の夏以降になりそうだ。

メイン画像:洋上風力第1ラウンド「秋田県由利本荘市沖」

<目次>
1.新たな公募制度で 事業性評価の配点を見直し
2.供給価格幅が未定 事業者に投資判断に影響
3.中東情勢で価格算定が困難に 再公募開始は今夏以降に
4.長期脱炭素電源オークション 上限価格と募集枠も未定

新たな公募制度で
事業性評価の配点を見直し


事業実現性の評価点(出典 経済産業省)

今年1月に意見集約した新たな公募制度では、事業性評価の配点を見直した。具体的にはサプライチェーン構築が十分でない現状では施工遅れのリスクがあるため、迅速性評価点を20点から10点に変更。また事業者が撤退しないよう、事業完遂を重視するために計画実行面の評価を20点から25点に引き上げた。さらにサプライチェーン形成の評価も同様に25点に引き上げた。


事業実現性評価点の基準内容(出典 経済産業省)

一方、事業実現性評価についてはこれまで点差が付きにくい評価区分だったが、見直し後はより精緻な採点を行うため、評価区分を廃止して数百におよぶチェック項目ごとの積み上げ方式とした。事業を完遂するうえで検討が必要な項目を海域占用計画に記載し、その記載があるかどうか(基礎的な基準)と、記載内容が詳細・具体的で適切であるか(高度な基準)を設け、2つの基準を同じ割合で配点し評価点を決めていく。

また迅速性評価については6年での運転開始を基準日として半年早いものを満点(20点)とし、半年伸びるごとに2点減点する形とした。
 

 

供給価格幅が未定
事業者に投資判断に影響


供給価格幅の評価点(出典 経済産業省)

供給価格点をめぐっては、第2・第3ラウンドですべての事業者がゼロプレミアムに張り付いたことの反省から、事業実現性評価の点数によっては準ゼロプレミアム水準で入札した事業者が落札可能となるよう、第2ラウンドにおける選定事業者と次点事業者の事業実現性評価点の点差の平均値である約16点を120点から引いた104点を価格点とした。

また、建設コストが高騰しているなかで、「事業完遂のために必要な水準を前提とし、事業者が現実的な創意工夫を講じることを想定した価格」と「供給価格上限額」のあいだの価格幅として、新たに想定供給価格幅」を設定することとした。

想定供給価格幅では、各公募で設定された供給価格上限を100点、価格幅の最低価格を120点として、上限を超えた場合は失格とする。当初、価格幅を下回った場合も失格としていたが、その後下回った場合でも満点とすることに変更した。このため価格幅を大きく下回る入札も考えられるが、その点は事業実現性評価でカバーすることが可能と見ている。

ただ問題は、この供給価格幅が現時点で決まっていないこと。調達価格等算定委員会は2026年度の上限価格案をまだ決定しておらず、しかも非公表とすることを決めている。事業者は、公募の条件が未確定であるため、投資判断を下せない状況が続いている。
 

中東情勢で価格算定が困難に
再公募開始は今夏以降に

上限価格案が決定されなければ第1ラウンド3海域の公募占用指針案が策定できない。現時点では算定価格調達委員会の開催時期も公表されていない。さらに中東情勢の緊迫で原油やナフサの供給が滞っている。ナフサが不足すれば風車ブレードの製造にも影響が出る。また各方面で需給が逼迫している潤滑油も風車の運転には欠かせない。潤滑油の不足が続けば、既存の風力発電所の運転にも支障をきたす。

しかもこの状況がいつまで続くか見通しが立たない。こうしたなかで、適切な調達価格を算定するというのも極めて困難な作業といえる。仮に新たな上限価格案と公募占用指針案が策定されても、パブリックコメントをそれぞれ実施する必要がある。さらにその後、国から気象・海象・海底の調査データの提供を受けるための申請手続きを経て、再公募が行われることになるため、洋上風力第1ラウンドの3海域は、早くても今年の夏以降に再公募が開始される見通しだ。
 

長期脱炭素電源オークション
上限価格と募集枠も未定


洋上風力第1ラウンド「千葉県銚子市沖」

また第2・第3ラウンドの事業者にとって大きな関心事は、長期脱炭素電源オークションの入札上限価格および募集枠の設定である。この上限価格と募集枠が事業継続の焦点となっているが、これも決定に時間がかかっており、事業の進捗を妨げている。

政府は洋上風力を再生可能エネルギーの主力電源化の切り札と位置付け、公募制度の見直しを進めてきたが、肝心の供給価格設定が遅れている。2040年までに30〜45GWの案件形成を進める目標の達成は難しい状況となってきた。
 

 

DATA

調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」について
経産省/国土交通省合同委員会(第42回)


取材・文:宗 敦司

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