「総合拠点化」目指す北九州・響灘地区。佳境迎える「グリーンエネルギーポートひびき事業」
2022/02/21

九州の最北端にある北九州港は、古くから海・陸交通の要衝として栄えてきた。北九州・響灘地区では洋上風力を柱とする「グリーンエネルギーポートひびき事業」が進められている。北九州市港湾空港局の光武裕次理事(エネルギー産業拠点化推進担当)に聞いた。
メイン画像:響灘地区航空写真
「グリーンエネルギーポートひびき事業」
――事業について教えてください。
2011年に立ち上げ、約10年が経過しています。北九州港は、国内第5位の貨物取扱量を誇り、年間約1億トンの貨物を取り扱う港です。官営の製鉄所ができて約120年、開港から約130年を迎えます。その強みを生かして、洋上風力のあらゆるサービスを提供する総合的な拠点を作るべく、キックオフしました。
――総合拠点の機能は?
一つ目は「風車積出機能」です。風車を組み付けて、洋上のサイトに積み出すという機能です。二つ目の機能は「輸出入/移出入機能」です。国内外から部材を持ってきたり、港湾エリアで製造した超大型かつ超重量で陸送が困難な関連部材を国内外に搬出するのに適しているからです。三つ目は「O&M(オペレーション&メンテナンス)機能」、四つ目は「産業機能」です。いろいろな産業を集積させることでシナジーを生むことができます。
――風力事業に取り組むメリットは?
北九州港の特長は、単に「物を積み出す港」ということのみならず、臨海部に広大な産業用地を備えていることです。そして長い「ものづくり」や「海陸物流」産業の歴史の中で、技術やノウハウを蓄積した数多くの企業の存在も大きな強みであり、これらを生かせることがメリットです。
――課題はありますか?
時系列に並べると、まず陸上風力、次に洋上風力へと舞台は移ります。洋上風力においては、ヨーロッパで実績のある「着床式」から始まり、その先は、いまだ技術開発の段階にある「浮体式」へと進むこととなります。国内には、現時点で洋上風力ファームと言えるものがありませんので、「着床式」、「浮体式」ともに課題は少ないとは言えません。
――「洋上風力産業ビジョン」は、洋上風力の推進に向けた「日本版セントラル方式」導入を求めています。
ヨーロッパではいわゆる「セントラル方式」が当然のように行われていますが、日本では仕組みを構築中の段階にあり、その差が出ていると理解しています。北九州港内の海域では、22年度に洋上ウインドファームが着工予定ですが、この方式がないため、調査から環境アセスメント、電力の系統の確保、地元の漁業者との調整など、一つ一つ事業者と地元の行政が一緒にクリアしていったというのが実情です。
島国であるわが国の場合は、実際に地元で経済活動されている漁業者の方々との調整が、最も大変なのかもしれません。その調整には「一緒にやりましょう」というスタンスが大事だったように思います。
――導入促進のポイントは?
環境アセスは、今もクリアには解決されていません。とんでもない時間とコストがかかります。4年程度かけて環境アセスを行った後、公募で選定されなければ、その全てが無駄になる可能性もあるのです。
ゴールは「総合拠点化」
「あと4~5年」で軌道に
総合拠点イメージ図
――事業のゴール地点と、その時期は?
最終目的地は、洋上風力のあらゆるサービスを提供し得る総合拠点を作ることです。10年経過しているので、そろそろゴールが近付いてこなければなりませんが、佳境に入ってきたという気はしています。しかし、うまく軌道に乗せるには、恐らくあと4~5年かかるのではないでしょうか。
――事業のメリットは?
地方行政、そして港湾管理者としてのメリットは、一緒になって北九州港を支えていただいている事業者の皆さまが利益を享受することに他なりません。
「陸上風力」と「洋上風力」は
全くの別物
――国内で、陸上ではなく、洋上が積極的に進められている理由は?
ビジネスをしている方々が異口同音に、「陸上と洋上は、同じ風を使うという共通点はあるけれども、全くの別物で、違うビジネスだ」とおっしゃいます。陸上には、まだ土地があるように見えて、相対的なことかもしれませんが、私の理解では、もう、かなり手狭になっています。それに比べ、島国であるわが国は、海が限りなく広がっています。そこで、「海に出ていくしかないな」という感じになっているのだと思います。