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洋上風力の人材育成が急務。作業員の安全を守るには専門の訓練機関が欠かせない

日本で洋上風力発電が大きな産業として育つには、人材の育成が欠かせない。洋上での作業には危険が伴い、実証事業では事故も発生している。長崎海洋産業クラスター形成推進協議会の松尾博志氏へ、洋上風力の課題である人材育成について話を伺った。

20年先行する欧州の洋上風力
先例に学びリードタイム短縮を

――今後の課題の1つである、洋上風力発電事業の人材育成についてお聞かせください。

欧州は、20年以上前から洋上風力発電事業に取り組んできました。今では、洋上風力の発電単価が石炭火力より安いといわれるまでに価格低減が進んでいます。当然ですが、欧州でも当初から洋上風力の発電コストは低かったわけではありません。さまざまな努力の結果、ようやくここまで下がったのです。

欧州委員会や各国政府の方針によるところも大きいと思いますが、欧州は未来への投資を続け、洋上風力が経済的に自立できるまでに20年かかりました。このプロセスは日本でも同様であり、相当の時間はかかるでしょう。

しかし、日本も欧州と同じく事業化に20年かかるのかというと、そうではないと考えています。欧州の先行事例から学ぶことができるので、より短い期間で洋上風力をコスト競争力のある電源に育てることができるでしょう。昨年末の再エネ海域利用法に基づく促進区域の第1回公募を三菱商事グループが圧倒的に低い発電コストで落札したことも、このことを象徴しています(参考『第1回洋上風力公募、3海域すべて三菱商事系が落札。圧倒的な低価格の理由は?』)。

例えば、作業船や利用可能な港湾の数が増えれば、競争原理が働きコストが下がります。こうしてコストが下がると発電単価に反映されますが、港湾などのインフラ整備には時間がかかります。そのため、日本でも発電単価が十分に下がるまでに10年程度はかかるかもしれません。ただし、欧州がたどってきた20年よりは短い期間になるだろうと考えています。

新規作業員の大幅な増員が急務
2040年45GWならさらなる増員も

長崎海洋産業クラスター形成推進協議会では、海外のレポートをもとに洋上風力の建設や運営に必要な作業員などの人数を推計しました。この推計によると、2030年に8,951人、2040年に16,283人の人員が必要になると考えられます。これには建設作業員や運転保守人員、作業船の運行などに携わるスタッフも含まれます。


洋上風力発電の建設・運営に必要な作業員数の推計(出典:長崎海洋産業クラスター形成推進協議会)

2030年に約9,000人ということは、今後、毎年1,000人規模の作業員を新規に増やしていかなければなりません。さらに、資源エネルギー庁が昨年12月に発表した「洋上風力産業ビジョン」では、2040年に45GWの案件形成を目指すとされました。このペースで導入を進めると、2040年に必要な人員数はさらに増えるかもしれません。

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