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洋上風力の人材育成が急務。作業員の安全を守るには専門の訓練機関が欠かせない

洋上の安全な作業には訓練が必須
専門の訓練機関の必要性が高い

――人材育成に関して、欧州と日本とではどのような違いがあるのでしょうか。

欧州では、グローバル・ウインド・オーガニゼーション(GWO)という非営利組織が風力発電の訓練標準などを定めています。GWOは、洋上風力発電で働くスタッフが安全に作業できるように、ライセンスを発行する機関です。欧州では、GWOのベーシック・セーフティ・トレーニング(BST)と呼ばれる訓練を受けたスタッフしか洋上での作業を行うことができないのです。

一方で、日本の洋上風力では、こうしたライセンスや訓練の仕組みがまだ整っていません。洋上風力の建設では沖合で船を接岸するような操船テクニックが求められますが、これまでこうした操船方法が必要とされるシーンはほとんどありませんでした。実際に、洋上風力の実証事業でも操船ミスによるケガや事故が発生しています。日本でも洋上風力に携わるスタッフが安全に作業できるように、GWOが定める基準を満たす訓練機関が必要だといえます。

求められる研修や人材育成の充実
洋上風力は地方経済の活性化にも

国土交通省が2021年3月に「洋上風力発電設備等の建設工事等の作業員教育訓練ガイドライン」を発行しましたが、十分に安全性の高い内容だとは言い切れません。

例えば、ガイドラインのシラバス案では、研修期間は2日程度とされていますが、欧州では5〜6日間の研修が定められています。当協議会が主催する長崎海洋アカデミーでは、ガイドラインで定める水準よりも厳しいレベルの訓練を提供できる施設の検討を進めています。


洋上作業員、船長・船員の訓練に必要な設備のイメージ(出典:長崎海洋産業クラスター形成推進協議会)

一方で、人材育成に関していうと、作業員だけでなく風況から発電量を予測する技術者を増やし、また技術者と対等に議論できるだけの知識を備えたビジネスパーソンも増やさなければなりません。発電量のシミュレーションは、洋上風力発電事業の成否を決める重要なものですが、実際にシミュレーションできる人員の数も少ない状況です。

洋上風力は、地域の雇用にも大きな影響をもたらすものです。当協議会では、1GWクラスの大規模な洋上風力発電所の場合で、メンテナンス人員は陸上で100人、洋上で100人の合計200人と見積もっています。発電所は地方に建設されることが多いため、地域経済へのインパクトは大きいでしょう。私自身も長崎県の出身ですが、Uターンして当協議会に参加しました。洋上風力が大きく成長することで、日本の地域振興にも貢献すると考えています。

話を聞いた人

NPO法人 長崎海洋産業クラスター形成推進協議会
エグゼクティブ コーディネーター 兼 長崎海洋アカデミー講師
松尾博志氏

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