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洋上風力「促進区域」の8市町が協議会、「漁業との共生」や雇用・地域経済発展に期待

――三菱商事が秋田県沖の2海域と千葉県銚子沖で計画されている洋上風力発電の入札で3件を落札したことの受け止めは?

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
非常に低廉な価格だったため、今後ちょっと事業者の皆さんの中で、そういう資本力、資金力のあるところはああいう値段でも手を挙げられ(入札でき)るかもしれない。そうではなくて昔から洋上風力を手掛けていきたいということで長年ずっと頑張ってきた事業者が、あの価格だったら、ちょっと手を挙げられ(入札でき)ないかもしれない。私は、地域として、いろいろな事業者に入ってきていただいて、いろいろな地域貢献策をしっかりと打ち出すことが大変大事だと思っている。だから、あまりに低廉な価格、要するに資金力あるから、どんどん安くして、それで取って(落札)しまおうということだ。取った後、何が起こるかというと、じゃあ、これから10年、20年先にその値段でやるのかというと、競争相手がいなくなったら変わってしまうということでも困る。今回は思ったよりも安い値段で取ら(落札さ)れたことで、おそらく、今まで手を挙げたいと思った事業者の中には「少し大変だな」と思っている人もいるのではないか。

――先ほどの質問に関連することだが、具体的に、どういう発電事業者が落札するのが望ましいと考えるのか?

秋田県八峰町・森田市長:
基本的に、今まで私のところに説明に来た(風力発電事)業者は全てクリアしているが、地域と漁業のことを思って「地域漁業者や町も含めて末永く良好な関係で付き合っていきたい」という思いがにじみ出ているので、そういう方々と共に地域振興に努めてきたい。

秋田県男鹿市・菅原広二市長:
地球環境のことを考えながら、地域といかに共生していくかを考えてくれる会社を望む。今のところ、みなそういう会社だ。特に男鹿は観光地なので、景観を重視しながら、観光事業を促進できるような、それからメンテナンスにも関わっていく事業者を期待している。

秋田県由利本荘市・湊貴信市長:
どこの事業者ということは特にないが、印象として大変、金額が想定以上に安かったという思いがあった。今回、国も少し考えていたのか、今後、採点評価の点数が、金額のところよりは、より短いスパンでやれるところ、というところに少し重きを置くというような報道もある。実は、私どもも、2030年からの稼働ということで、もう少し早くならないものかなと思っていたところだ。金額もそうだが、期間もぜひ考えてほしいと思う。稼働まで少し時間があって、稼働してからというよりも、稼働までの間に、業者に地域貢献を少し進めていただけないものかと思っている。例えば連携協定みたいなものを稼働前にやることも少し協議をさせていただいており、今からやっていけるようなものを考えていただいているところだ。

長崎県五島市・野口市太郎市長:
五島市が再生可能エネルギー、海洋エネルギーに取り組んでいることの一つは、なかなか農林水産以外に産業がない中、新たな産業、新たな雇用の場を作りたいという思いがあり、開始した。したがって、事業者に望むことは、単に風車を設置して、発電して、どこかに持っていかれるというように、単なる海洋の提供ということではなく、風力発電施設の製造、設置、そしてメンテナンスなど全般について、しっかりと地域の企業、産業として貢献していただきたい。そして稼働期間中も、やはり水産業にしっかり目配りをしていただくことを協議会の中でお願いしてきた。これからもその姿勢を堅持していきたい。

千葉県銚子市・越川信一市長:
千葉県銚子市沖、旭市沖の洋上風力発電については、法定協議会の中で一定の取り決めをしている。銚子市と旭市とそれから県の漁業振興基金に合計118億円を支出いただく取り決めをしている。これを水産振興、漁業振興にまず充てていくことが、第1の地域貢献になる。それ以外の観光振興、地域振興については、今、事業会社といろいろな協議をする中で、それについても積極的に絡んでいただくことに期待している。

千葉県旭市・米本弥一郎市長:
本日ここにいる市長・町長の皆が同じ思いだと思う。本協議会の設立の目的も、愛するふるさと・郷土を発展させたいという思いで設立した。地元貢献策あるいは地元産業振興さらに漁業の発展を考えてくれる事業者と一緒に歩んでいきたい。

秋田県三種町・田川政幸市長:
今回、場所的には大変、風況がよいということで、いろいろな事業者が挨拶に来ている。今後、地元企業も含め、地域貢献への思いの強い事業体とやっていければいいと思っている。われわれの海域も決まった(指定された)ので、今の事業者とどうやって良い関係を保つかをこれから協議していかなければならない。やはり、おいしところだけを持っていかれるのではなく、しっかり地元に利が残るよう、これからしっかり協議していかなければならないと感じている。

――「能代市はエネルギーの町」という説明があったが、現在、洋上風力を展開している中で、石炭火力についてどのようにお考えか?また、洋上風力がどれだけ地域経済の発展に貢献するのか?

秋田県能代市の齊藤滋宣市長:
東北電力は確かに今、石炭火力をやっているが、やはり今の世論からすれば、CO2(二酸化炭素)をいつまでも排出する火力発電は国民に受け入れられないということが分かっている。だから、アンモニアや水素、そういった発電の仕方の検討が始まった。今、自分たちで作った植物を使って燃料にするとか、どうやってCO2を削減できるかということで今検討が始まっている。われわれ(能代市)の海域では洋上風力のメンバーの中に東北電力にも入っていただき、一員として努力をしていただくことになっている。さらなる努力を期待したいと思う。

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
2050年カーボンニュートラルと言っているわけだから、その時には完全にCO2排出をゼロにしなければならない。そのために2030年までに(温室効果ガスを2013年度比)46%まで削減することになっているので、その間にいろいろな手法が検討、研究されると思う。そういう中で石炭量、CO2量が大幅に減ることを期待している。

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
よく市民から言われるが、洋上風力発電への反対する立場の方は「景観が悪くなる」とまず言われる。それから「地元に迷惑施設を建てて、その利益を全部大都会に持っていかれるのではないか」という言い方をされる。そういう心配をされる方がいることは承知しているが、今、既にトレーニングセンターを作り、バスケットで有名な秋田県立能代工業高校の生徒さん10名がそういうところに就職を決めている。海外に視察したり、勉強して風力発電事業者のところで働く準備をしている。さらに、例えば事業者が営業所を作って地元の人たちの採用もしていただいている。非常に地元に対して協力的にしていただいている。今、港に新しい施設がけっこう建っており、これからさらに規模が拡大されていくと思っている。

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
今、能代市は有効求人倍率が2倍を超えている。そこへ今、中国木材株式会社が出てきて、従業員250名を使うことになっている。そこに今度は風力発電ということで、「そんなに人が集まるかな」と大変心配してるが、今までの経過を見れば、何とか近隣の市町村からもご協力いただきながらカバーできるかなと思っている。

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
今できる限り可能性の高い、そしてまた他の地域にない資源を活用して、能代らしい町作りをしていくためにはどうしてもこの洋上風力発電が港湾区域にも一般海域も必要だろうと思っている。ぜひとも、市民の皆さんの不安に対して、少しでも解決できるように説明しながら、強力に進めていきたい。

千葉県銚子市・越川市長:
雇用効果で地域経済への波及効果を引き出すために、銚子市としては今回のプロジェクトの中で、市、漁協、商工会議所の三者で、いわゆるメンテナンス、それから受け皿となる会社を先に作り、できるだけ地元企業に仕事を回していただく、注文していただくというような取り組みをしている。また千葉県も、企業と今回のプロジェクトのマッチングということで公募をしていただいている。

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
能代では、秋田県の県北地域全部、鹿角市までの市町村で、議員、議会、それぞれの自治体、さらには商工会議所といった団体が全部参加して洋上風力を進めていくための委員会を作っている。だから今のところ洋上風力に対する不安を持つ方もいるが、表だった反対の動きは出てきていないのが現状だ。地域の多くの皆さんに理解していただけるようさらに努力すると同時に、できれば、地域全体でそういう組織ができれば、洋上風力を進める上での非常に推進力になるのではないかと思っている。

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