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三菱商事系コンソ ラウンド1事業の実施体制固まる

三菱商事を中心とするコンソーシアム(三菱商事系コンソ)が秋田県沖と千葉県沖の3海域で計画している洋上風力発電事業の実施体制の大枠が固まった。国内外の大手企業が風車製造や設置工事などの主要事業を手がける一方で、秋田県では部品の組み立てや製造分野で地元企業の参入を促す方針。千葉県では、地元の市や漁協などが新会社を設立し、発電設備の保守や運転管理業務の受託を目指している。

洋上風車の建設 
蘭大手企業と鹿島に一括発注

三菱商事系コンソが、洋上風力発電事業を計画しているのは、秋田県の「能代市・三種町・男鹿市沖」「由利本荘市沖」と千葉県の「銚子市沖」の3海域。去年12月、圧倒的な低価格を提示した三菱商事系コンソが事業者に選定された。秋田県沖の2海域では26年に着工し、「能代市・三種町・男鹿市沖」は28年12月に運転開始、「由利本荘市沖」は30年12月に運転開始する予定。千葉県の「銚子市沖」は、25年に着工し、28年9月に運転開始する計画だ。

洋上風車の製造・納入は、米国の大手風車メーカー、ゼネラルエレクトリック(GE)が担う。GEと協力関係にある東芝子会社の東芝エネルギーシステムズ(東芝ES)が風車の支柱に据え付けるナセルを組み立てる。洋上風車の設置工事は、欧州で40件以上の洋上風力プロジェクトを手がけた実績があるバン・オード(オランダ)の日本法人と、ゼネコン大手の鹿島が担当する。両社は共同企業体を結成し、具体的な設計・施工について検討を進めていく。自己昇降式作業台船(SEP船)はバン・オードと日本郵船の合弁会社が保有・運航する。

三菱商事系コンソは、秋田県沖と千葉県沖の3海域で1.26万kWの大型風車計134基を設置する。同一機種を大量に導入すれば、調達コストや保守運営コストを大幅に圧縮できる。そのうえで同一事業体に工事を一括して発注すれば、建設コストの削減も期待できる。ただ、日本国内でこれほど大型の風車を一斉に施工するのは、過去に例がない。

バン・オードのSEP船イメージ(提供:Van Oord社)

三菱商事系コンソは、風車の基礎として、「モノパイル」と呼ばれる大口径鋼管杭を海底に打設する。着床式洋上風力発電では、本場の欧州をはじめとして世界的に主流となっている施工方法だ。鹿島は、秋田県沖の別の着床式洋上風力発電事業で、モノパイル形式の基礎を施工した実績がある。丸紅や大林組など県内外13社が設立した秋田洋上風力発電(秋田市)が、年内の稼働を目指す国内初の大型商用プロジェクトだ。港湾法に基づく事業で、秋田港と能代港の2つの港湾区域に着床式の風車(出力4200kW)計33基を設置する。鹿島は住友電気工業と共同企業体を組織し、基礎や海底ケーブルなどの工事を担当している。

モノパイル形式の基礎を施工した秋田港湾区域の洋上風車=9月18日

東芝ES
秋田県内で部品供給網を構築へ

東芝ESと秋田県が連携協定を締結=9月30日

稼働後の洋上風車の保守業務は、製造メーカーのGEのもとで、風車メンテナンス国内
最大手の北拓(北海道旭川市)が担当する。北拓は、1999年に風車メンテナンス事業
に参入し、全国各地で保守業務を手がけている。自社のトレーニングセンターを国内
に3か所保有していて、秋田県と千葉県でも地元企業と協力してメンテナンス人材の
育成を目指す。

稼働後の保守業務は、国内大手の北拓(北海道旭川市)が担当する。北拓は、1999年に風車メンテナンス事業に参入し、全国各地で陸上風車の保守業務を手がけている。福岡県北九州市では、三菱重工系列企業の風車を採用した洋上風力電事業に参画し、三菱グループとの信頼関係を深めている。

保守業務に必要な作業員輸送船(CTV)の保有、管理は日本郵船が担う。日本郵船は今年4月に秋田支店を開設した。今後は、秋田県内に保守点検や操船の人材育成を目的とした総合訓練センターを設置し、洋上風力春電事業を拡大する方針。これに先立って2月には秋田県と包括的連携協定を締結し、系列会社の大型クルーズ船を活用した観光振興にも取り組む考え。

実施体制の大枠が固まったことをうけて、秋田県内では風車の部品サプライチェーン(供給網)の構築を模索する動きが加速している。東芝ESは今年9月、秋田県と連携協定を締結し、秋田県内に部品供給網を早期に構築するため、佐竹敬久知事に協力を要請した。部品供給網の構築にあたっては、風車メーカーのGEの認証が必要になるなど、高い技術力が求められる。東芝ESは、秋田県と連携してマッチングの機会を増やし地元企業の参入を促す方針だ。

千葉県銚子沖 
市や漁協などが設備保守会社を設立

設備保守会社「銚子協同事業オフショアウインドサービス」を設立=2020年9月

千葉県銚子市では20年9月、市と市漁業協同組合、銚子商工会議所が操業後の設備保守などを担う新会社「銚子協同事業オフショアウインドサービス(C-COWS)」を設立した。資本金は500万円で、市漁協が60%、銚子商議所が30%、市が10%を出資。洋上風力発電設備の保守や運転管理業務の受託を目指している。

C-COWSは発電事業者の三菱商事系コンソに、漁業との共生や振興のため総額118億円におよぶ基金への拠出を求めている。118億円の内訳は、漁業との協調・共生・振興の取り組みとして銚子、旭両市の基金に計100億円、県漁協振興基金に15億円、漁場実態調査のための銚子市の基金に3億円となっている。

三菱商事系コンソは、漁業振興の基金を生かして設置を予定している「漁業共生センター」と連携した新漁場づくりや漁業への情報技術活用を具体案として提示している。同じグループのローソンや、洋上風力開発に協力企業として参加する米アマゾン・ドット・コムなどを通じた特産品の販路開拓、1次産業の活性化や観光振興を主導する人材育成なども検討している。洋上風力発電施設の建設や運転に際しては、C-COWSをはじめとする地元企業を最大限活用する方針。市が出資する新電力会社、銚子電力とも連携し、発電した電気を災害時などに地域電源の確保に役立てる考えも明らかにしている。


取材・文/高橋健一

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