洋上風力発電の落札制限 現時点では第2ラウンドのみ
2022/11/17
経済産業省と国土交通省は、洋上風力発電公募基準の見直しの修正案を公表した。複数の区域で同時に事業者の公募を実施する際に、一例として100万キロワットを上限とする落札制限を設ける方針があらためて示された。そのうえで、落札制限の対象とする公募は、現時点では今年度に公募を予定している4海域のみとする案を提示した。
メイン画像:今年度に公募を予定している秋田県の「八峰町・能代市沖」
公募見直しの修正案を公表
再エネ海域利用法に基づき洋上風力発電事業に適した「促進区域」に指定された海域では、経産省と国交省が入札により事業者を選定する。両省は6月に公募基準の見直し案を示し、一般から意見を公募していた。洋上風力発電公募の第1ラウンドでは、三菱商事を中心とするコンソーシアムが他を圧倒する安い価格を提示して3海域すべてを落札し、各方面に波紋を広げている。
6月に示された公募基準の見直し案では、複数の区域で同時に事業者公募を実施する場合、特定の事業体が大半の海域を落札するのを防ぐ仕組みが新たに設けられた、一例として、1事業体あたり合計100万キロワットまで発電、送電できる規制を設け、これを超えた場合は新たな落札をできなくする案を示した。さらに運転開始時期が早い提案への評価も高める。実現性の確認も厳しくする。多くの企業が参入しやすい仕組みにして、洋上風力発電が日本国内に普及する環境を整えるのが目的としていた。
落札制限の導入をめぐっては、企業や識者のあいだで意見が分かれている。両省の見直し案を検討した6月の会合では、委員から疑問の声が相次いだ。「落札制限をするのなら、とりあえず2年間を黎明期と定めるなど、いつまで実施するのか、はっきりとした時期を明記するべきだ」「落札制限ありきで話が進んでいるのはおかしい。1回目のラウンドで、価格点で差を付けた事業者が3カ所を落札したことをもって制度を導入するのは反対だ」「今後どのような案件が出てくるか予見しにくい。各ラウンドが大規模で選択肢が多いわけではないなかで、制限を設けるのが望ましいのか疑問の余地がある」―――。
両省は10月14日、これまでの議論をふまえて公募基準の見直しの修正案を公表した。落札制限の対象とする公募は、現時点では今年度に公募を予定している「秋田県八峰町・能代市沖」「秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖」「新潟県村上市・胎内市沖」「長崎県西海市江島沖」4海域のみとする。23年度の公募においては、区域の合計系統容量が100万キロワットを大きく超える場合は、今年度の公募の結果も踏まえ落札制限の適用を検討するとした。
意見公募でも賛否が分かれる
今後も紆余曲折が予想される国の洋上風力発電事業
経産省と国交省が一般から公募した意見でも賛否が分かれていた。落札制限への主な賛成意見は、「黎明期に寡占化が進むと、参入事業者が限定され、コスト低減に向けた取り組みがとまる。事業者数が多いほど低コストが促進され、洋上風力の産業育成が進む」「落札する事業者が限られると、その事業者、施工業者、風車メーカー等に予測できない問題が生じた場合に、日本の洋上風力事業がとまってしまうリスクがある」。一方、落札制限への主な反対意見は、「規模のメリットが失われるため、供給価格を上昇させてしまう」「規模のメリットが失われるため、風車メーカー等の日本への投資意欲が減衰する」「1位と2位の点差が開いている場合、評価の低い事業者が不当に繰り上がるリスクがある」―――。
落札制限の対象を4海域のみとする修正案は、さまざまな意見をくみ取った「妥協案」と受けとめられている。経産省と国交省は新たな公募基準を正式に決めたうえで、早ければ年内に4海域の事業者の公募を始める見通しだが、国の洋上風力発電事業は、今後も紆余曲折が予想される。
取材・文/高橋健一